読み切り小説:偶然

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こちらでも、アップしておきます。

 

☆偶然

「偶然ですね・・・」
「ええ・・・」

 

町が、桜色に染まった春・・・
その並木道を、歩いていた・・・
公園では、花見客でにぎわっている・・・

この辺りはとても気候がいい・・・

 

僕も周りは、誰もいない・・・
周りが寄り付くこともなく、周りに寄り付くこともない・・・

僕は、この瞬間が好きだ・・・

 

空を見上げる・・・
陽がまぶしい・・・

 

近くには大きな川がある・・・
全国でも有名な川だ・・・

 

川岸では、何人かが釣りをしている・・・
河川敷では、子供たちが野球をしている・・・

 

生まれてくる時は、多くのものを持っていた・・・
しかし、大きくなるにつれ、それを少しずつ手放していく・・・
そして、最後にひとつだけが残る・・・
それが、糧となり、そして・・・宝となる・・・

 

この町には、小高い山がある。
高台に登れば、町を一望できる。


僕は、この風景が好きだ・・・
そして、この町が好きだ・・・
誰よりも・・・

 

「すいません」
突然声をかけられる。


そこには、この町の高校の制服を着た女子がいた。
僕とは、別の高校だ・・・

「今そこで、学生証を拾ったんですが、あなたのですか?」
そういって、学生証を見せる。
確かに僕のだった。

 

「ありがとうございます」
そういって、学生証を受け取った・・・
「すいません・・・今、失礼ながら、名前を見させてもらいましいた。
すると、幼稚園の頃にいた男の子と同じ名前でしたが、
もしかして、○○幼稚園でしたか?」

 

確かにそうだった。でも僕は・・・
「いいえ、違いますよ・・・」
そう嘘をついた・・・

 

「そうですか・・・私の初恋だったんですが、偶然ですね・・・」
「ええ・・・」


彼女が、悲しそうに去っていくのが見えた・・・