続きです。


父が42年前に購入した時、実家がある街の今の状況を想像できていたのでしょうか?
私は昨年実家の街の様子を見て愕然としました。


「発展しなかった街」


街がどうなってしまったと思いますか?


私の実家は父が45才の時に購入した分譲住宅。
分譲住宅は「〇〇台」「〇〇丘」と言った土地が多く、私は購入候補地の台や丘にたくさん連れて行かれ見せられました。

父は転勤が非常に多く、家を購入するまで会社の借り上げ社宅で一軒家、いつもなぜか坂の途中にあるような、街の中心から4〜50分程度離れた郊外の家を選ぶ人でした。

家の購入にあたっては数ある台や丘の分譲住宅地から神奈川とギリギリ県境の東京(町田は神奈川だと思っている人も多いよね)と本厚木のどちらがいいかと聞かれました。

当時17才の私の答えは、「駅まで25分で遠いけど歩けるから県境でも一応東京がいい」でした。

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その当時は新興住宅地、分譲住宅の暮らしに注目が集まっていて、「金曜日の妻たちへ」(金妻)のようなドラマに出てくる家族は新興住宅地の人たち。
金妻は東急田園都市沿いの街で、我が実家は「くれない族の反乱」という田村正和と大原麗子の住む家のモデルとして選ばれたけれど、実際は2軒隣でドラマ撮影されました。

その当時は、街の住人は皆不便さをものともしない、元気な若い人でした。

42年を経て、私も還暦間近。以前のようにスタスタ動き回れるわけではありません。
同じ都内なのに実家に辿り着くまでに疲れてしまいます。

 

家から最寄りの電車の駅には徒歩25分。

お年寄りなら30分以上かかりそうです。

駅まで車で家族に迎えにきてもらうのが当たり前。

坂道が多く、足腰の弱いお年寄り、迎えがない人はバス移動。

バス乗り場やタクシー乗り場には長い老人の行列。

しかしタクシー乗り場にタクシーは滅多におりません。

どこに行くにも不便で陸の孤島状態。

外を歩いているのはみんなお年寄り。

スーパーのお客さんは90%はご老人で、レジ前に加齢臭がこもっていて、驚いてしまったほどです。

銀行の支店は撤退。

街にあるのは病院ばかり。

活動的になれない人は家に引きこもっている状態。



42年前に売り出された分譲住宅の街は、もうすっかり高齢者の街になってしまいました。

私の実家がある場所の公示価格は昨年と比べると下りこそしていないですが、横ばいです。

人が増えない、未来が見えない街、魅力のない街の価値が上がるわけありません。



ネットで見つけた記事によると、実家の街はこの10年で老人の数は2倍になり、住民の増加はなし、老人の人口比率は31%超え。3人に1人は老人なのです。振り込め詐欺や悪徳リフォーム業者がウロウロする街になっています。母によると町内会の活動ができない老人ばかりで、数少ない若い人の負担が増えているようです。



この分譲住宅ができた頃には、理想の家庭ドラマの舞台となったくらいでしたけど…

発展するというより衰退してしまったというように、分譲住宅を購入した人とともに置き去りにされてしまった感じです。

小田急や東急は、街を作ったもののその後の開発に手を抜いたように思えます。

坂が多い、交通の便が悪い、買い物が不便などの悩みがずっとそのままで、お年寄りばかりの街が増えているようです。




住宅を購入した初代の住人は現在80才以上。

家を建て替えるかリノベーションしてその子供が親と住んでいる家族もいますが…


不便な場所なので、子供は住みたがらない、年老いた親は施設に入ってしまい、空き家になっているところもチラホラあります。

そんな場所の中古物件は今のままではなかなか売れるものではありません。


そんな場所にある古い実家を母が管理できなくなったこともあり、リースバックで売却、今は銀行が家主となり、母は賃料を払って暮らしているというわけです。家を売却したことで、まとまったお金が出来て、母が施設に入る時がいつ来ても大丈夫になりました。


このリースバックは私たち夫婦がいたから決断できたけれど、年老いた母87才が売却に踏み切れるわけはありませんでした。お年寄りは、どんなに不便でも長年住んだ土地にこだわってしまいます。認知症になれば、新しい土地に移住して新しい環境に馴染むこともできなくなります。


母は自分が施設に入る時には、娘の私が全部お膳立てしてくれると思っているので、なんの準備もしておりません。自分がどのように暮らしてきたいのかについても何も考えていないようなので、私がリースバックを勧めて施設に入る時の現金が準備出来ました。(とはいえ、リースバックの仕組みは理解できていないようです。)

施設に入る資金を作るために普通に売却となると、価値や魅力のない街の物件ではいつ売れるかわからないので、即現金化出来て住み続けることが出来る方法を選びました。

(年齢が若い人にはお勧めしませんけど。)


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父親が家を購入した時、先を見越して不便な土地で自分が年老いた時の生活をシュミレーションしなかったのでしょうか?


どこに行くにも自家用車が必要になる場所の家。

運転免許証を自主返納する前に車がない生活を考えて対策を取るべきでした。

 

両親は年老いて体が動かなくなる前に家を手放して、便利な所に移り住むという選択肢に踏み切れなかった…

その時期に父が認知症を発症して判断力が落ちてしまったというのもあります。


子供が親の面倒を見るのが当たり前、という考えで全て子供に頼り切ってしまう…

古い親たちはそうだったかもしれませんが、

自分を世話をしてくれる人たちに面倒をかけすぎないように準備するのが、先に旅立つ人の責任であると私は考えます。


母は、物を捨てられないので、実家は物だらけ。

私が使っていた部屋はすっかり母のクローゼットになっています。

「私が死んだら自由に処分してくれ」と言いますけど、ちょっと無責任だなぁと思っています。



私たち夫婦は今年結婚20周年。その間に5回物件の売買をしています。(ハワイの別荘を含む)

儲けようという気持ちさらさらなく、人生の転機、諸事情で売買しただけですが、運良くどの物件も購入時より価格上昇となったので都心に住めるようになりました。

 

定年退職後に田舎暮らしをしたいと、地方に移られる方も多いですが、私たちは年老いてこそ便利な所に住むべきだと考えています。自分たちには子供がいないですから、何でも人に頼らず、精神的にも肉体的にも健康に暮らせる場所が重要と考えています。少々郊外の広い家を選ぶこともできましたが、高齢になれば体が動かなくなるので、狭い家でちょうど良くなります。

 

どこにお買い物に行くにも徒歩で行ける

車に頼らなくても生活できる

病院が近くに揃っている

公園や劇場や美術館などにも徒歩で行ける

若者文化にも触れられて刺激を受けられる


という観点で今の家を選びました。

 


一方母は、

どこに行くにも不便で、食事の買い物も宅配、病院も近くにないので苦労して、

外に行くのはデイサービスのお迎えが来る時くらいで、

本当に引きこもりの生活となっています。

インターネットを使えない人なので、趣味を楽しむこともできません。

 

もちろん今の家を購入するにあたって母親には一緒に住むことを提案しましたが、頑なによその土地に行くことを断られました。




家は若い時と老いてからでは、暮らす条件、暮らしやすさが変わってきます。

親または自分自身が動けなくなる前に、今の家で暮らし続けるべきか考えてみることをおすすめします。


家や街の価値が下がりすぎる前に、手を打つこともできるかもしれませんから。

 



 
 今回もお読みくださりありがとうございました😊