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珈琲 たいむす

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珈琲たいむすへ ようこそ

この世紀末の雰囲気、もう笑うしかない。


カゴにポテトチップスを3個入れて会計をしていると


「ほら、あの人、ポテトチップス買い占めてるよ!」


と後ろに並んでいる2人組が話しているのが聞こえた。





……あのな、俺はポテチショックが起こる前から、毎日ポテチ食ってんだ


カレーに入れたり、サラダにふりかけたり、ご飯にのせたり……


お前らの主食が米なように、ポテトチップスは俺の半主食みたいなものだ。



そして、これは俺の常態行動だし

ポテチショックがあったから、遠慮してるんだぞ。
いつも10個のところ、3個に減らしてるんだ

そもそも、3個で買い占めと言えないだろ……




まったく、、バイアスに取り憑かれやがって。。  これだから、最近の若者は……


でも、怒らない。


待つの。


怒り治るのを待つの。  



世界には何人の人間がいると思っているの?



「75億」   


うそ。70億人もいるんだ。



こんな人間を相手にせずとも、自分の価値観にあった人はたくさんいるはず。



だから、怒らない。


待つの。





ふっ、大人になったなぁー俺。

この境地にくるまで、幾ばくの時を無駄にしてきたのだろう……


でも、今こうして私は平穏を手に入れた


それでいいではないか、万事okだ


okとしよう






すると、後ろの2人組は続けざまこう言った

「買い占めてる奴ってさ〜  性格悪そう〜絶対結婚できないよねー」







なんだとぉおおーー!!!

結婚くらい、お前、結婚くらい、でき……できるかもよ!?!

な、な、なにを根拠にそんなこと言ってるんですか?!!

こ、根拠を言え!

おぉ!!?


クソみたいな推論しやがって、

お前の認知能力ボコボコにしたろかぁぁ!!!




はぁ、はぁ…はぁ……

結婚の話したらダメだよね。

親戚のおばさんたちを呼んで

店屋物を頼むことになった。





今回はお招きしているので、

お代はこちら持ち。



なので、当然 おばさんたちは

遠慮をするわけだ。



放っておけば、
安い  たぬきやおかめ  に落ち着くだろう



しかし、わざわざオヨビダテしておいて

安い店屋物を喰らわせては、我が家の沽券に関わる!


"高いものを食べてもらう"  それが今日すべき我が家の使命なのだ。





母は言った。


「どれにします?

ほんと好きなもの頼んでください、今日は普段食べないようなものを  頼んでください  ほんとに。」






おばさんは答える。

「ん〜そうね、え〜っと……

じゃーあなた、あなたから決めて。」


といきなり   俺にメニューを差し出してきた。




俺?!

そうか……様子見というワケか。。

いきなり高いものを言っても、
安すぎるものを言っても  我が家を 困らせてしまう……



ならば、一番遠慮の必要のない俺にメニューを渡して

その懐具合をみようって 算段だな





さすが、おばさん。伊達に俺より長く生きてないぜ。




俺は考えた。

今回は色々お世話になったお礼に、家に招待している。 家としては、少々高いものでも食べてもらいたい。


この認識は揺るぎないものだ


おばさんは遠慮こそするものの、本当は高いものを食べたいはず。






であれば、簡単だ

俺が高いものを選んで、おばさんたちが高いものを頼み易くすれば良いのだ。






よしっ!  決めた、天重だ。

この店で一番高い天重を頼めば、おばさんたちの天井が外れる。。


おばさんたちのリミッターを解除するんだっ!




「俺、天重にします!」





よし。。。

これで、心置き無く  頼めるだろう……   さぁ、頼むんだ おばさん!


天重なり、天せいろなり、うな丼なりを!!



親戚は答えた


「じゃ〜あたし、たぬきそばで」


「あたしはおかめうどん」






ちょっと待てぇぇぇ〜っ!!!

それは、ルール違反だろ。。






「じゃ〜私は天ぷらそば」

「俺はかけそば」



母さんと父さんまで!  

一体どうしたんだ、あんたたちが安いの頼んでどうする!


「俺は腹減ってないからいいや」

お前この野郎……この愚弟がっ!!






俺は巻き返えした

「いやいや、もっと高いの頼んでくださいよ、せっかく来たんだから……」


「いいのよ、さっぱりしたのが食べたい気分なのよ」



「いやいや、そうは言っても……」



「ほんとにね、ご飯とかね、油ものは最近ダメなのよ」





ん?  ……どうやら  この人たちは本当に  たぬき   おかめが 食べたいようだな……

そう言われてみれば、どことなく、たぬきやおかめに 見えなくもない。。。
 
 


ん〜

多勢に無勢、仕方あるまい……路線変更だ

「じゃあ〜俺も、ざる蕎麦で!」




「ちょっと、遠慮しないで!あなたはあなたが食べたいものを食べればいいのよ」


「いや、遠慮しているわけではなくて…」


「だって、最初 天重食べたいって言ってたじゃない?」


「いや……それは…」


「ほら〜いいの、遠慮するもんじゃないのよ」


「いや、でも……」


「おばさんもこう言ってくれているんだ。お前は天重を食べなさい。まったく、1人だけ高いの頼んじゃって〜  今日は特別ぞ!」




おやじ!違うっ、

俺は、親戚の頼みやすい空気づくりのために……


むしろ、
本当はさっきあんぱん食べたから、ざる蕎麦くらいの軽いものがいいんだ……

 胃もたれもしてるし。。



「すいませんね〜こいつ1人だけ、良いもの食べちゃって」


「いいのよ〜、でも羨ましいわ。素直に食べたいものを言えるなんて、素直でいい子ね」



「ほんとね、素直だけが取り柄なもんで、、お恥ずかしい」



もうダメだ……  外堀にセメントを流し込まれている。。。



結局

みんなが質素な  蕎麦やうどんを食べる中

1人だけ天重を食べることになった。



くそっ!胃が重いっ!!!

うまいけど!


今日僕は嘘をついた。

人のための 優しい嘘じゃない。  


人を騙して、自分が気持ちよくなるための嘘だ。




騙されて呆気にとられている顔を見ると


とても愉しいんだ



胸の内側から  悦びがほつれて

身体の細胞という細胞が、愉快で侵されていく……

その広がりは 歯科治療の浸潤麻酔のように……






大きな声じゃ言えないけど、


たまらない、


たまらないんだ!

あは、あはは…


もう、想像しただけで  イヒッ!




そんな僕のマスターベーションに付き合わせる相手は   いつものあいつだ。   






僕は早速、嘘をついた。






「あのさ…いつも2円掛かる  スーパーのレジ袋、今日だけ無料らしいよ?」



僕は、あいつにエコバッグを持たせなかった。



一人暮らしと言っても、1週間分の食材の買いだめだ。   袋がなければ どうだろう、想像がつくだろ?



ん〜んふぅーん、イーネ……

毛穴という毛穴が活き活きと呼吸を始めた。   今、僕はゆっくりとだが、確実に エクスタシーに足を踏み入れている




案の定、レジで何やら 揉めているあいつを見ることができた。


さぁ、どうする?


袋を買うだろう……だって?

大丈夫、あいつは

損をすることに貪欲なまでに抵抗をする男さ。  決して ビニール袋は、買わない。


分かってるんだ。




さあ、もうすぐだ。

 両腕に荷物を抱えて 、アタフタする

あいつの困り顔、ぱるるも顔負けの困り顔が見れる!!


イヒッ、イヒヒッ!!

ミラバケッソ!


たまらないね〜…



その直後、あいつはポケットから薄いエコバッグを取り出して
荷物を詰め込み始めた。




なぜだ!?  


あいつのエコバッグはここに……


2枚?!


2枚もエコバッグを持ち合わせているのか……


いや、3枚だ!


もう1袋で冷凍食品もカバーしてやがるっ!


3枚も持ってたらエコじゃねーだろが……

クソがっ!  

く、クソったれぇぇ〜……





あいつはスーパーから出てくると僕に呟いた


「袋……有料だったよ」


「あは、そ、そうだろ!だ、騙されたな!  あは、あはは!」


「今日、エイプリルフールだったよな…」


「は、は?  そ、そうだよ、でも、だ、騙される方が悪……」



「そんなことだろうと思って、この薄くて沢山入るエコバッグを  ポケットに忍ばせておいたのさ…」


「な、なにぃ?!  ま、まさか、最初から気付いていたと??」



「その通り、お前の  そのアタフタする顔が見たくてなぁ   ニヤリ…」



「あ、ああああ…嘘だ、嘘だぁぁあ!!!」



「たまらないねぇ〜  人が困った顔っていうのわ!  あははは!   イヒッ、イヒヒ!ミラバケッソ!」


「や、やめろ!  それは俺が言うはずの…ミラバ……」




「ミラバケッソっ!ミラバケッソ!」



「や、やてくれぇぇぇ!!!」




ミラバケッソ!

                                                おしまい。







※ミラバケッソ……"未来を化かした嘘"という意味です。騙されたな〜という程度のニュアンスです。
元々は旭化成が造った造語で"未来に化ける新素材"という意味です。