優しさの天重仇になる | 珈琲 たいむす

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この世紀末の雰囲気、もう笑うしかない。

親戚のおばさんたちを呼んで

店屋物を頼むことになった。





今回はお招きしているので、

お代はこちら持ち。



なので、当然 おばさんたちは

遠慮をするわけだ。



放っておけば、
安い  たぬきやおかめ  に落ち着くだろう



しかし、わざわざオヨビダテしておいて

安い店屋物を喰らわせては、我が家の沽券に関わる!


"高いものを食べてもらう"  それが今日すべき我が家の使命なのだ。





母は言った。


「どれにします?

ほんと好きなもの頼んでください、今日は普段食べないようなものを  頼んでください  ほんとに。」






おばさんは答える。

「ん〜そうね、え〜っと……

じゃーあなた、あなたから決めて。」


といきなり   俺にメニューを差し出してきた。




俺?!

そうか……様子見というワケか。。

いきなり高いものを言っても、
安すぎるものを言っても  我が家を 困らせてしまう……



ならば、一番遠慮の必要のない俺にメニューを渡して

その懐具合をみようって 算段だな





さすが、おばさん。伊達に俺より長く生きてないぜ。




俺は考えた。

今回は色々お世話になったお礼に、家に招待している。 家としては、少々高いものでも食べてもらいたい。


この認識は揺るぎないものだ


おばさんは遠慮こそするものの、本当は高いものを食べたいはず。






であれば、簡単だ

俺が高いものを選んで、おばさんたちが高いものを頼み易くすれば良いのだ。






よしっ!  決めた、天重だ。

この店で一番高い天重を頼めば、おばさんたちの天井が外れる。。


おばさんたちのリミッターを解除するんだっ!




「俺、天重にします!」





よし。。。

これで、心置き無く  頼めるだろう……   さぁ、頼むんだ おばさん!


天重なり、天せいろなり、うな丼なりを!!



親戚は答えた


「じゃ〜あたし、たぬきそばで」


「あたしはおかめうどん」






ちょっと待てぇぇぇ〜っ!!!

それは、ルール違反だろ。。






「じゃ〜私は天ぷらそば」

「俺はかけそば」



母さんと父さんまで!  

一体どうしたんだ、あんたたちが安いの頼んでどうする!


「俺は腹減ってないからいいや」

お前この野郎……この愚弟がっ!!






俺は巻き返えした

「いやいや、もっと高いの頼んでくださいよ、せっかく来たんだから……」


「いいのよ、さっぱりしたのが食べたい気分なのよ」



「いやいや、そうは言っても……」



「ほんとにね、ご飯とかね、油ものは最近ダメなのよ」





ん?  ……どうやら  この人たちは本当に  たぬき   おかめが 食べたいようだな……

そう言われてみれば、どことなく、たぬきやおかめに 見えなくもない。。。
 
 


ん〜

多勢に無勢、仕方あるまい……路線変更だ

「じゃあ〜俺も、ざる蕎麦で!」




「ちょっと、遠慮しないで!あなたはあなたが食べたいものを食べればいいのよ」


「いや、遠慮しているわけではなくて…」


「だって、最初 天重食べたいって言ってたじゃない?」


「いや……それは…」


「ほら〜いいの、遠慮するもんじゃないのよ」


「いや、でも……」


「おばさんもこう言ってくれているんだ。お前は天重を食べなさい。まったく、1人だけ高いの頼んじゃって〜  今日は特別ぞ!」




おやじ!違うっ、

俺は、親戚の頼みやすい空気づくりのために……


むしろ、
本当はさっきあんぱん食べたから、ざる蕎麦くらいの軽いものがいいんだ……

 胃もたれもしてるし。。



「すいませんね〜こいつ1人だけ、良いもの食べちゃって」


「いいのよ〜、でも羨ましいわ。素直に食べたいものを言えるなんて、素直でいい子ね」



「ほんとね、素直だけが取り柄なもんで、、お恥ずかしい」



もうダメだ……  外堀にセメントを流し込まれている。。。



結局

みんなが質素な  蕎麦やうどんを食べる中

1人だけ天重を食べることになった。



くそっ!胃が重いっ!!!

うまいけど!