宝石たちの1000物語

[番外編]

深夜12時開店のBAR

フツーの何気ない日常の会話から奥深いジュエリーや宝石の世界に踏み込んでいく。男と女、女と女、そして男と男。舞台は新宿の裏ぶれた片隅にある一軒の酒場。客が10人も入れば一杯になってしまう小さな酒場。深夜零時きっかりに開店し客がいれば何時までも付き合い、客が帰れば閉店する。そんな店にようこそ、いらっしゃい。今宵もまた・・・・。

 

 

 

第43話

『合成ダイヤモンド』[前編]

 

 

激しく雨が降る深夜、重いドアを押して入って来た二人連れ。

見るからにその筋の者と知れる。

一瞬マスターの顔が曇った。

「ここいいかい」

「いらっしゃいませ。どうぞお好きなところへ」

「お好きなところへと言っても空いている椅子はこことあすこしかないだろう」

「良さないか健二」

「スミマセン」

「何にしますか」

「そうだな私にはマッカランのロック」

「俺には生をくれ」

「かしこまりました」

「ところでちょっと聞きたいんだが、歳は30歳前後、長身でイケメン、韓国系か中国系の男を見かけなかったかい」

「気がつきませんでしたね」

「こう言った深夜までやっている店には必ず来ているはずだよ、さっさと吐いちまいな」

「そう言われても知らないものは知らない」

「なんだとこの野郎下手に出ていれば生意気な口を」

「健二いい加減にしろ」

「だって兄貴」

「もういいからお前は黙ってろ」

「はいすみません」

「そうかい邪魔したな、いくらだい」

「全部で2000円です」

「気に障ったら許してくれ」

と言いながら5000円をテーブルに置いて出ていった。

カウンターの隅で一人で飲んでいた常連の香具師の元締めが、

鋭い眼光を光らせていたのを知っていたのは兄貴と呼ばれた男だ。

「あいつは関西系の暴力団だろうね。この辺じゃ見ない面だ」

「元締めがいたので助かりました」

「いやいや、最近はいろんな奴が方々で勝手な事をし出しているからせいぜい気をつけなよ」

「何かあったら連絡してくれればすぐに飛んくるぜ」

「とんでもありません、元締めがお出ましになるのは最後の時ですから」

「あははははっ」

そこへ元締めの愛人が入ってきた。

「今晩は、あなたまだいたのね」

「いらっしゃい、なんにします」

「この人と同じ物でいいわ。それからいつものきんぴらね」

「かしこまりました、すぐに」

「なんかこの辺、西新宿のオマワリが数人ウロチョロしているわ」

「そうかい、ところで何か用があったんじゃないのか」

「そうそう、そのためにきたのよ」

といいながら二人はヒソヒソ話を始めた。

他には客はいないし、もう午前4時を回っている。

客がいれば何時でも店はやっているが、この時間になって客が他にいないので、

ドアに「閉店」の札をかけに行った。

「元締め何時まででもごゆっくり」

「そうもしていられなくなった。また明日にでも出直すから宜しく」

「分かりました、お待ちしています」

「ところでマスターこれを少しの間預かってくれるかい」

「分かりました」

・・・・16日[後編に続く]