Special essay:
宝石箱の片隅「深夜のモノローグ」・no.0037
『良いものは決して古びない』
この言葉は私がMIKIMOTO(その当時はミキモト真珠店)に入って
たくさん教えて貰ったことの一つです。
その後アンティークジュエリーに携わるようになって
この言葉の意味が本当に理解できるようになりました。
確かドイツ・フォルツファイムのエナメルジュエリー作家で
オットー・クラインという人がいますが、
この方は自分の作るジュエリーは100年後をみて作っている、と
聞かされたことがあります。
彼の言わんとするところは、いくつかあると思いますが、
単なる流行に終わらせないモノ作りを目指しているからなのでしょう。
1992年の暮れに日本のジュエリーがバブルが弾けると、
其れ迄営々として築き上げてきた日本のジュエリーはものの見事に崩壊、
やれ高いものは売れないとか、これからは大衆消費時代だとか
ケンケン轟々、ピーチクパーチク議論が渦巻きました。
しかしその後30年以上が経過しても、ジュエリーの小売市場規模は
一向に右肩上がりにはなりません。
それどころか、海外ブランドやノンブランドに押されてしまっています。
もう昔の夢を現実にするのは到底無理で、ますます世界から離されてしまうでしょう。
オットー・クラインではありませんが
せめて100年後でも世界で戦えるジュエリー作りをする作家が
出て欲しいと思うのは私一人ではないでしょう。
世界に比べてあまりにも志の高い作家が少な過ぎるのです。