増渕邦治全仕事ART DIRECTION

 

『根付図録』1979年

 

 

 

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鼻煙壺の仕事でレイモンド・ブッシェル氏の信用を得た事で、

次の年のミキモトホールで開催された「根付」の展覧会では、

図録を作成する仕事が直接ご指名を受けることになりました。

根付は煙草を入れるケースにつける、いわば現代のストラップです。

江戸時代に入り一般庶民にまで普及した小物で、

あらゆる素材と意匠を駆使し、

これを作る職人たちは「技」を競い合ったようです。

浮世絵と同じであまりにも身近な存在であったが故に、

その芸術性を認識されてはおらず、

明治になって外国人によって高度な芸術として見直されたといえるでしょう。

レイモンド・ブッシェルという人は弁護士で

早くから日本の超絶技巧の小物に注目し収集していました。

彼のコレクションが現在誰の所有になっているか知りませんが、

平河町の事務所には大きな金庫室があり、

そこには膨大な量のコレクションが眠っていました。

彼ともっと親しい関係になっていたら・・、とちょっと残念な気持ちがあります。

根付の仕事に関わった事でジュエリー以外の知識が広がったことは有意義でした。

独立してから多くの場面で役につことが増えたのです。