男と女がいる限り運命的な出会いがあり、いくつかの恋愛が生まれます。それはまるで万華鏡のように一つとして同じには見えない不思議な物語でもあるのです。宝石が絡んだ1000の物語、今宵はどんなストーリが生まれるのでしょう。


宝石たちの1000物語・シリーズ[2]
ピッタリ1000字に収めたSHORT STORY




第8話・美しい年輪
《パライバトルマリン/paraiba tourmarine》 



女性も40を過ぎると肌の衰えは隠せない。
でも私は自然のままがいいと思う。
女性の本当の美しさは内面から醸し出されるのだ。
そして美しく歳を重ねる事だと思う。
ある夕暮れ、いつものようにショッピングの帰りに、行きつけのレストランの片隅で食事をとっていると、隣に恰幅のいい紳士が来て座った。
この店は全席喫煙でとても許せないのだが、シェフと幼なじみと料理の味が私好みということもあって、我慢して来ている。
その紳士は席に着くと、鞄から煙草セットを取り出し、パイプに火をつけるとおもむろにメニューを眺め始めた。
フレーバーのいい香りが辺りに漂い、私はついうっとりとその匂いを嗅いでいた。
「やあ失敬、うっかりしていました」
「・・・」
その紳士は私が煙草を嫌っていると勘違いしたらしく、慌ててパイプの火を消そうとした。
「あらよろしいんですのよ。私、この匂いは決して嫌いじゃありません」
「ああ、そうでしたか。それはどうも」
「でも最近パイプを嗜む殿方は少なくなりましたね」
「失礼ですが、お一人ですか。もし良かったら私とテーブルをご一緒しませんか」
私の食べている料理はまだ半分近くを残していた。
「別に構いませんが・・・」
「よかった、ところで貴女はこの店には良くいらっしゃるのですか」
「私とこの店のシェフは幼なじみなのです」
「えっ、そうなんですか。知りませんでした」
「・・・」
「実は私はこの店のオーナーなのです」
「???」
「ご贔屓にして頂いて有り難うございます。これからもどうぞ宜しく」
私は突然のことに少しビックリしていた。
よりによってこの人がこの店のオーナーだなんて。
この日を境にして2人の仲は急速に接近した。
2週間に一度、彼の方から誘いが来て、デートはいつも高級レストランやホテルのラウンジだった。
彼は話術が巧みで、いつも私を飽きさせなかった。
そして紳士だった。
1年後私たちは結婚した。
彼はいつも「人間は美しく年輪を重ねるものだよ。それには自然にしている方がいいんだ。無理に作る必要はない」と云った。
そんな幸せの日々が続いたある日、彼が私の前に一粒の宝石を差し出した。それパライバトルマリンといって、私は初めて見る宝石だった。
ブルーとグリーンのミント系の色彩は存在感が一際あり、私はいっぺんに好きになった。
「君にぴったりだと思うよ」
「ありがとう、大事にするわ」
この宝石はリングになって、今でも夫との楽しかった想い出を封じ込めている。
美しい年輪を重ねて。