『この作家にはも
う少し書いて欲しかったなぁ』



ますぶちStyle/宝石箱の片隅

「JAMの本棚-29」







人の生涯は生きた長さだけでは測れないけれど、
山本兼一という作家には、もう少し書いて欲しかったと思う。



直木賞を受賞した「利休にたずねよ」にしてもそうだったが、
多くの作家が取り上げているテーマを取り上げながら、
普通にならず傑作をものにできるのは、
彼独特の視点が他の作家と違うからなのだろう。



この「花鳥の夢」の主人公は狩野永徳である。


同じ時期に安倍龍太郎が長谷川等伯主人公とする「等伯」を
日経新聞に連載して直木賞を受賞した。


等伯と永徳は桃山時代を代表する絵師である。
このライバルはあまりにも立場が違うなかで、
お互いがしのぎを削った。


等伯は息子を亡くし一代で潰えた。


永徳はその後徳川家のご用絵師として
明治時代まで狩野家を存続させた。



絵師としての狩野家は何人かの天才を排出したが、
好き嫌いは別にしてもやはり永徳に尽きるといっても
過言ではないだろう。



その永徳を彼独自の視点で書いているのだ。



よく歴史小説と時代小説とが比較されるが、
歴史上の人物を主人公に書くのは歴史小説に分類される。


歴史小説はその時代背景、登場人物などの
資料の収集と分析がしっかりしていないと、
陳腐になってしまうので
膨大で大変な作業を必要とする。



司馬遼太郎も資料の収集と分析では有名な作家の一人だ。



桃山時代、
信長、秀吉、家康と言う為政者たちが交錯する中で、
狩野家の当主永徳はいかにして彼等と対峙し
またライバルの等伯に恐れを抱きながら、
人生を泳ぎ切ったのか。



山本兼一の視点は永徳を見事に浮かび上がらせてくれる。