坪内石斎


$『ますぶちStyle/宝石箱の片隅』

といってもかなりの食通の人でなければ知らないかもしれない。
室町から安土桃山の時代の名料理人である。
ある時織田信長が京都に行ったときのこと、
石斎が信長のために料理をこしらえることになった。
かの有名な料理人のつくるものはどんな味付けだろうか。
どんな創作料理が出てくるのか。
信長は大きな期待をしていたらしい。
ところが、「一言、不味い!!!」
出された料理は信長の期待を裏切ってしまったのだ。
「おのれ、儂にこのような不味いものを食べさせるとは、手打ちにしてくれる」
と言ったかどうかは知らないが
すんでのところで九死に一生を拾った石斎。
「もしお許しを頂ければもう一度私の料理を召し上がって頂きたい」
こともあろうに石斎の大胆な申し出を信長は何を思ったか許した。
何日かして、再度石斎の料理を食べた信長は
「これが同じ料理人のつくったものか。美味である」と、
この一連の会話は全て私の創作。

信長が大変喜んだという知らせを聞いた石斎、
「ふんっ!田舎者めが」と呟いたと云う。
石斎は最初は真の京料理を出した。
次には味付けを濃いめにしたのだ。

このエピーソドは信長の家来の太田牛一が著した
「信長公記」の中に出てくると記憶している。
間違ったらご免なさい。

7月に肺の手術をして、もともと糖尿病の宣告をされていたので
病院ではかなり厳しい食事療法を強いられたが
お陰さまで、久しく忘れていた「モノ」の味が少しは思い出した。
現代の人達は私も含めて、濃い味に慣らされている。
食物本来の味を
調味料で台無しにしていると云っても過言ではないだろう。
信長と同じで所詮は田舎者だと解っているけれど
大病をして初めて解ることって意外とある。
最も死んでも治らないこともあるけれど・・・・。