5月25日まで開催の「帝室技芸員seriesⅡ蒔絵—白山松哉とその弟子たち—」は必見の展示会です。
関西方面の人たちは勿論、往復の新幹線代を払っても観る価値はあります。
白山松哉(しらやましょうさい)と云う人は一般的にはあまり知られていませんが、幕末から明治にかけて活躍した蒔絵師、漆芸家です。
1906年(明治39)に帝室技芸員(現在の芸術員会員のようなもの)に任命され、柴田是真、川之辺一朝、池田泰真らと共に世界的に名を馳せました。
この4人の中で、圧巻は是真だと思いますが、彼らに共通しているのは、蒔絵の技術もさることながら、斬新なデザイン性(意匠)にあります。
先日観に行った東日本伝統工芸展でも、「時代を掴む新しさ」のないものは、見応えがなかったように思います。
その点、彼らの作品には現代(いま)に通じる新しさがある。
私たち宝飾品に携わるものにとって、この時代(幕末から明治)の工芸作品に触れる事は大変重要でありますが、ややもすると、違う分野、古いものという大いなる錯誤を持っている人たちがいる事は、悲しむべき事です。
彼らの作品をジッックリ見れば、いまのものより新しいものがあることに気づくでしょう。
ジュエリーはヨーロッパのものですが、だからといって日本のものを疎かにするのではなく、もっと日本の工芸品や技術のエッセンスを学ばなくては、ヨーロッパの伝統や技術を凌駕する事は出来ないのです。
『技巧に走ってはならない、しかし技巧を超えるものでなくてはならない』、私はジュエリーの神髄をこのように考えています。
一品ものだけではなく、量産品についても云える事だと思います。
自分が作るものの中に、人とは違った新しさがなくては、人には認めて貰えません。
そのための手本として、幕末から明治、大正にかけての良品を、できるだけ沢山チャンスを作り自分の目で観て確かめる事です。
三年坂美術館は、小さい美術館ですが、私たち宝飾品に携わる者たちにとって、大いに刺激を受ける美術館です。
私は関西方面に出張すると、時間の許す限りこの美術館に立ち寄ります。
1階の奥には、金工や蒔絵、七宝、地金などの工程を解説しているコーナーがありますが、
これ程充実したコーナーは日本の何処に行っても観る事が出来ません。
国立博物館にも芸大にもないのです。
日本の美術がジャポニズムと云われて、大いにヨーロッパの美術工芸に影響を与えましたが、そのエッセンスを現代の私たちは忘れてしまっている、失くしてしまってはいないでしょうか。
現代のジュエリーが、多くの人に感動を与えられないのは、まさにこの点を忘れてしまっているからなのです。
だからといって、日本的なものを作れと云っている訳ではありません。
そんな短絡的な発想を求めている訳ではないのです。
日本人が作るヨーロッパスタイルのジュエリーは、ヨーロッパの人からみると、やはり日本人の作るもの、だそうです。
であれば、もっと日本人の「感性」を前面に押し出して、ヨーロッパスタイルのジュエリーを作れば良いのです。