個人の妄想です
ご理解いただける方だけどうぞ
お客さん、500円です
入り口につっ立ったままの青年に声をかけると
はい、あ…
焦った様子で財布をゴソゴソして
すみません、これで
丁寧に万札を広げて番台に置いた彼から、微かにアルコールの匂いがする
ん?
顔を覗くと、ビクッと目を逸らした
貴重品はロッカーにいれてください
彼は財布をロッカーに入れ鍵をかけると、広い脱衣所の端っこで着替え始めた
じいちゃんはまだマッサージ椅子で寝ている
さてと、女湯のお客さんはみんな帰ったし、そろそろ片付けるとするか
浴槽の湯を抜いて、タイルをブラシで擦り、それからタワシで湯桶や椅子についた湯垢を落とす
乾かないうちにやらないと汚れが落ちなくなるぞと、じいちゃんに教え込まれた
子供の頃は実家が銭湯なんて死ぬほど嫌だった俺が、まさか家業を継ぐなんてな
洗い終わった桶を重ねてると、男湯からざわざわした声が聞こえてきた
大変だ、溺れたぞっ
誰かっ
おーい、しょうちゃんっ!!
俺は桶を放り投げると男湯の方へ駆け出した