嶺太へ


 ずいぶん毎日が寒くなってきたね。

 風邪をひくとお父さんとも会えなくなるから

 気をつけろよ。

 お父さんも気をつけるからさ。


 真希おばちゃんが付けている

 いとこのココロの育児日記見ているとさ、

 どうしても嶺太と重ねちゃうんだ。


 ココロは動物園に行ったり、

 保育園のイベントがあったり、

 表参道のハロウィンイベントに出かけたり、

 友達と散歩したり、

 毎日楽しそうだよ。


 もちろん、嶺太もお母さんやおばあちゃんに

 あちこち連れて行ってもらっているだろうけど、

 そこにお父さんはいないわけで、

 それってどうなんだろう。


 お母さんは小さい頃から

 お母さんのお父さんが単身赴任で

 ほとんど家にいなくて

 「お父さんは私のことどうでもよかったと思う」って

 言ってたことがあったから、

 嶺太にもそれでいいと思っているのかもしれないけど、

 お父さんはそうは思わないんだけどな。


 嶺太は男の子だし。


 今週末は嶺太に会えるかな。

 どこいこうか!


お父さんより

嶺太へ


 ケイタイのメモリーを整理していたら、

 生まれたばかりのときの嶺太の動画がたくさんあったよ。


 嶺太が生まれて一ヵ月後に麻布へ引っ越してきたお母さんだけど、

 結局しょっちゅう千葉に帰ってしまうので、

 なかなか嶺太と一緒に過ごせないから

 せめて動画を送ってくれとお母さんに頼んで

 送ってもらってたんだ。


 生まれて2ヶ月くらいの嶺太。

 あうあう言って、とても小さい嶺太。

 あの嶺太ともっと一緒に過ごす時間が欲しかったよ。


 今だって嶺太ともっと一緒にいたい。


 小さい嶺太と一緒にいられる時間は少ないんだから、

 もっと一緒にいたいよ。

 お父さんは、嶺太が生まれたときからずっとそう思ってた。


 だからお母さんがしょっちゅう千葉に帰って

 お父さんと嶺太と過ごす時間よりも、

 おばあちゃんと過ごす時間を優先させるお母さんにアタマにきてたんだ。


 嶺太とたくさんの時間を過ごしたい。

 今の嶺太は今しか会えないんだからさ。

 嶺太のすべての時間をお父さんはお父さんとして共有したいんだ。

 

 お母さんは、それより譲れないことがあるから

 千葉にいるんだと思うけど、

 お父さんにはわからないよ。


 嶺太。

 でも、もうすぐもっと会えるようになるよ。

 お父さんが法律を変えるからね。


お父さんより

 

 

嶺太へ


 お母さんから昨日メールがあったよ。

 予定していた日のOKの返事ではなかったけど、

 少なくとも、保険証は届いて、

 予定も検討するってさ。


 三人での食事の件も「検討する」ってことかな。

 だったら三人で表参道で食事なんて初めてだからうれしいね。


 嶺太はまだお腹にいたから知らないかもしれないけど、

 お母さんとお父さんがデートしたレストランがあってね。

 そこのハンバーガーがとってもおいしいんだ。


 でもお父さんはホットケーキに負けて

 ホットケーキを注文しちゃったから、

 お母さんのハンバーガーを一口分けてもらっただけなんだけど。


 その店は、店長さんが息子においしいものを食べさせたいって

 気持ちで作った店なんだって。

 だから嶺太とお母さんとお父さんと三人で行ったら

 楽しいだろうなぁ!


お父さんより

嶺太へ


 今日は文化の日です。

 昨日、お母さんに11月の嶺太と会うための希望の日を

 メールで伝えたんだけど、

 まだ返信ないんだ。


 今月は平日を一日と、土曜日に一日。

 あと、もしお母さんが東京に髪を切りに来るなら

 嶺太を連れてきて、夕方一緒に食事しようよって

 誘ったんだ。


 嶺太を連れて行きたい店もあるしね。


 お母さんはなんて返信くるかね。


お父さんより

嶺太へ


 今日はお父さんの友達のお父さんが亡くなって

 お通夜に青山葬儀場に行ったんだ。


 あたりまえだけど、

 お父さんは嶺太より早くいなくなるんだから、

 少しでも嶺太の顔を見て

 たくさんお話したいんだ。


 いづれ、嶺太には早く独立して

 世界を見聞してほしいから、

 そのときがきてもお父さんは引き止めるつもりはないけど、

 でも、いなくてさびしくないわけじゃないんだよ。


 ただお父さんが君にしがみつくなんて

 ナンセンスだと思うし、

 君が必要としたときにそばで支えてあげられればいいなって思う。

 でも、そういう関係って一昼夜にできるものじゃないし、

 だから、まだ小さい君とは

 できるだけ長く生活したいんだけどね。


 お母さんも、早くそれがわかってくれればいいのに。


お父さんより