高市解散で「旧統一教会」問題や「責任ある積極財政」の検証はウヤムヤ…人気頼みで「突破」は許されるのか
東京新聞 2026年1月16日 06時00分
高市早苗首相は衆院解散・総選挙に踏み切る意向を与党側に伝えた。具体化すれば政権の信を問うことになるわけだが、有権者の判断材料がそろうとは言いがたい。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側との関係しかり、「責任ある積極財政」しかり、海外から厳しい視線を向けられる問題は説明も検証も尽くされていない。そんな中で有権者の審判に向かうべきか。(太田理英子、佐藤裕介)
◆「TM特別報告」には高市氏の名が32回記載され
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=462309&pid=2418627
首相官邸に入る高市首相=15日、佐藤哲紀撮影
「まずはきっちりと説明責任を果たす必要があると思う」。旧統一教会の信者家庭で育った30代女性は高市氏の姿勢に疑問を抱く。
昨年末、波紋を広げたのが韓国の日刊紙「ハンギョレ新聞」などの報道だ。扱ったのは教団の内部文書とされる「TM特別報告」。日本教団側が2021年の衆院選後、教団本部の韓鶴子(ハンハクチャ)総裁に対し、自民党の国会議員290人を応援したと報告していたという。
TMは「トゥルーマザー」(真の母)の略。文書には高市氏の名が32回記載され「総裁に選ばれることが天の望み」と言及された、とも報じられた。
◆高市氏は配信で「教義は分からない」と強調
当の高市氏は、過去に教団と関わりが深い日刊紙に複数回登場しながら、昨年に出演した配信動画では「教義は分からない」などと強調していた。
旧統一教会と関わりが深い「世界日報」に掲載された高市氏の記事
先の女性は「解散命令請求を受けるような宗教団体と関係し、反社会的と見抜けなかったとすれば、国を担う首相としての資質にも影響する」と厳しくみる。
韓国では今、教団側から尹錫悦(ユンソンニョル)前政権側への金品の供与があったなどとして韓氏らの刑事裁判が続く。
朝鮮半島問題の専門誌「コリア・レポート」の辺真一(ピョンジンイル)編集長によると、韓国では宗教団体が政治に関わることは珍しくなく、抗議運動に参加するケースなどがある。だが、旧統一教会を巡る問題は「信者を政党に集団入党させて選挙に関与させたり、候補者に資金をばらまいたりすれば、違法になる。重大な犯罪になりうるとして、問題視されている」。
◆今年になって発覚した自民党と旧統一教会の新たな「接点」も
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=462309&pid=2418628
旧統一教会の中核施設とされる建物=2025年9月、韓国・加平で(上野実輝彦撮影)
今月13日には、教団への徹底的な捜査を首相が指示したと報じられた。辺氏は「尹氏は内乱首謀罪での死刑求刑まで追い詰められた。教団は手を貸した存在として解散を迫られるのでは」と見通す。最大野党の国会議員も資金提供を受けたとされ「最大野党の弱体化をもくろむという見方もある」と付け加えた。
日本でも今年に入り、自民議員と教団側の疑惑について週刊誌報道が続いた。
名前が挙がった一人の長島昭久衆院議員は、信者だったと認める声明をX(旧ツイッター)で掲載。「様々な社会問題等が起こり、看過し得ない矛盾と疑問を感じ」たとし、30年以上前に脱会したと釈明した。
◆「高市氏、自民党は真偽も含めて検証や説明をすべきだ」
「こちら特報部」が脱会理由の詳細を長島氏の事務所に尋ねると、「憲法は(思想や信仰の)告白をしないことを認めている。これ(声明)以上のことは回答しない」と答えた。
自民は2022年、所属議員と教団側との接点について調査結果を発表したが、不十分と批判された。教団に詳しいジャーナリスト藤倉善郎氏は「党は『終わった話』として扱う印象だが、このままでは有権者が報道内容だけを材料に判断をすることになる」と語る。
一方で、TM特別報告は「教団上層部向けに成果を大げさに報告している可能性も捨てきれず、現時点で細部までうのみにすることは危険」とくぎを刺し「だからこそ高市氏、自民党は真偽も含めて検証や説明をすべきだ」と訴える。
◆支持率同様に株価は高水準だが
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=462309&pid=2418631
最高値を更新した日経平均株価の終値を示すモニター=14日、東京都中央区で(池田まみ撮影)
高市政権は昨年10月の発足以来、報道各社の世論調査で軒並み高い内閣支持率を記録。共同通信社が昨年12月に実施した全国電話世論調査でも、支持率は67.5%と7割に迫った。
同様に高水準なのが株価だ。今月15日の東京株式市場は、連日の株高を受けた利益確定売りに押され、日経平均株価(225種)が反落したものの、東証株価指数(TOPIX)は連日、史上最高値を更新。依然として歴史的な高水準を維持している。
元日銀審議委員で、野村総合研究所の木内登英氏は「日本経済が非常に強くなったとか、企業の競争力・収益性が大きく高まったというよりは、円安・物価高によって表面的な企業収益が拡大する『水ぶくれ的な株高』が続いてきたという側面がある」と解説する。
一方で危うさをはらむのが、国債や円を巡る市場の動き。ともに「売り」が進んでいる。
◆「円安、債券安、株安のトリプル安が起きる恐れも」
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=462309&pid=2418632
円相場を示すモニター=13日、東京・丸の内で(芹沢純生撮影)
高市氏は、企業の成長などを名目にして積極財政を標榜(ひょうぼう)するが、今以上の借金を重ねて財政出動すれば、返済がままならない可能性が高まる。そんな不信から
か、国債の売りが重なり、価格と逆の動きをする利回りが上昇している。円も売られ、円安に傾いている。
海外メディアは、高市氏の積極財政を「自滅的」と断じる。円安を巡っても、総選挙の実施が決まり、高市政権を支える与党の大勝が確実となれば、「本格的な急落に発展する可能性が指摘されている」(米ブルームバーグ通信)。
木内氏によると、今後も積極財政路線が続けば、最悪のケースとして国内外の投資家が日本から資金を逃避させる事態が生じかねず「円安、債券安、株安のトリプル安が起きる恐れもある」と懸念を強める。
◆「早く必要な経済政策の推進にまい進するべき」
経済ジャーナリストの荻原博子氏は、日常に陰を落とす事態を危惧する。
国債が売られて利回りが上昇すれば、連動するように住宅ローンの金利が上がり「借りている人は大変なことになる」。円が売られて円安が加速すれば輸入物価の上昇に拍車がかかる。「庶民生活にとってはプラスではない」
積極財政路線でいいか、国会で検証すべきでは、という疑問が湧く。
荻原氏は「早く必要な経済政策の推進にまい進するべきだ」という立場。高市氏が物価高対策として「『食品の消費税2年間ゼロ』を選挙公約の柱として打ち出す可能性がある」とみる一方、これを打ち出さない場合は「『この大切な時期に解散なんて一体何をやっているんだ』との批判が首相に向かうだろう」と指摘。「(通常国会での論戦を前にした)無責任な解散であり、高市さん独自の物価高対策が全くないことになる」と話す。
◆「反共イデオロギーの政策ばかりを推し進めている」
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=462309&pid=2418633
衆院本会議=2025年12月(佐藤哲紀撮影)
今後を考えても危ういのは、政策に関する丁寧な議論もないまま、人気を頼みにして突破を図る姿勢だ。
経済評論家の佐高信氏が振り返るのが、高支持率を背景に国政選挙で勝利し、郵政改革に踏み切った小泉純一郎政権。「結果として『郵便局』という国民のライフラインをダメにしてしまった。『国民の生活を考えていない』という点では小泉氏と高市氏は一緒だ」
高市政権で進んでいる円安は「国民を貧しくして国を豊かにする『国富民貧』の象徴。物価高など、あらゆる『しわ寄せ』が国民に押し寄せている」と指摘。一方で「(経済的に重要な)中国を敵視するような反共イデオロギーの政策ばかりを推し進めている」と批判し、こう続けた。
「有権者は『何となく』で判断してはいけない。高市政権には有効な経済政策が全くないということを見破るべきだ」
◆デスクメモ
自身に不都合な話を棚に上げる。そんなトップの下にいたくない。保身第一、下々は二の次、は嫌だ。会社なら退職すれば関係を終わらせられるが、首相と国民の関係はそうもいかない。ただ、国民には選挙権がある。間接的でもトップ選びに関与できる。責任の重さを自覚せねば。(榊)
関連記事
新党叩いて活路をふさぐな2026年1月18日 (日)(植草一秀の『知られざる真実』)
本日のワーカーズブログ
