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古村治彦の政治情報情報・分析ブログ 2026年01月17日

ドナルド・トランプのドンロー主義は長期的に見てアメリカの利益にはならないがそのようなことを言っていられる状況ではない

古村治彦です。

アメリカによる西半球支配の動きはラテンアメリカ諸国やヨーロッパを緊張させている。ヴェネズエラ攻撃によって、「アメリカが実際に攻撃をする」可能性を見せられて、動揺が広がっている。他国からの侵略から守ってくれて、地域に安定をもたらすはずだったアメリカが攻撃する主体になったということは戦後80年の大きな節目での、国際社会の構造の大転換となった。

 

ラテンアメリカはそれぞれに不平不満はありながらも、平和を維持してきた。しかし、これからはどうなるか分からない。

 

アメリカは「裏庭(backyard)」であるラテンアメリカを勢力圏として管理し、味方につけようとしてきた。モンロー主義の場合は、ラテンアメリカ諸国が独立する時期で、スペインやポルトガルに代わってイギリスがラテンアメリカでの影響力伸長を目指して、独立運動を支援していたのを阻止するということが理由であった。アメリカは、ラテンアメリカに地域外の大国が進出してくることを安全保障上の脅威と捉え、深刻な恐怖感を持って対応する。

 

今回のヴェネズエラ攻撃の場合には対象となるのは中国とロシアである。

 

トランプ大統領はヴェネズエラの石油を管理し、販売した利益をヴェネズエラ国民とアメリカ国民に分配するとし、更には、ヴェネズエラ国民はその利益でアメリカ製品だけを買うように主張している。これは、ヴェネズエラの属国化のさらに先の「再植民地化(recolonization)」である。

 

このようなアメリカの動きは長期的に見れば、アメリカの利益にならない。アメリカが大国として暴れまわることで、信頼を失い、アメリカとの協力を控えることになる。さらには、中国とロシアに近づき、対米防衛同盟を結成する動きも出てくるだろう。しかし、今のアメリカには既に長期的な視点を持って対外政策を行うだけの余裕がない。

 

トランプ率いるアメリカはグリーンランドの領有も狙っているが、これは、レアアースの取得と、北極海航路の通行料徴収が目的である。アメリカは何が何でもお金を稼いで、国民を食べさせねばならない。トランプは、大統領就任演説で、アメリカを製造業の国にすると述べた。しかし、既に手遅れである。生産設備はなく、質の高い労働力などどこにもない。これから工場を建設すると言っても時間がかかる。その間に人々の暮らしは厳しくなる。結局、短期的な方法を取らざるを得ない。

 

トランプの攻撃的なドンロー主義は、アメリカには余裕がなくなってどうしようもないという状況の裏返しである。アメリカはこれから「悪い隣人」となって、町のチンピラのようなことをする。「昔は立派だったのにね」と言われ、嫌われながら、衰退していく。

 

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の「悪い隣人」政策(Trump’s Bad Neighbor Policy)-地域諸国を属国(vassal states)のように扱うことは彼らを中国の懐に進めるになるだろう。ウィリアム・M・レオグランデ、ピーター・コーンブルー筆 2026年1月5日『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/05/trump-maduro-venezuela-oil/

 

スペイン・バルセロナで行われたデモで抗議者が「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」と書かれた帽子をかぶっている。帽子の文字は「ヴェネズエラ」とテープで上書きされている(2026年1月4日)

 

「2026年にようこそ」とピート・ヘグゼス米国防長官は土曜日、アメリカ軍によるヴェネズエラへの攻撃を祝うマール・ア・ラーゴでの記者会見で宣言した。「トランプ大統領の下、アメリカは戻ってきた」。つまり、1900年代初頭の砲艦ドル外交(gunboat and dollar diplomacy)の時代、つまりラテンアメリカにおける帝国主義的覇権(imperial hegemony over Latin America)を志向し、いまだに完全には消えることのない敵意を生み出していた(engendering enmities that have never entirely dissipated)時代への回帰である。

 

世界をそれぞれの勢力圏(spheres of influence)に分割することを構想するドナルド・トランプにとって、ラテンアメリカ地域におけるアメリカの支配(U.S. domination)はそれ自体が目標だ。「西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの支配は、二度と疑われることはないだろう」と、ヴェネズエラの複数の空港への空襲と、ニコラス・マドゥロ大統領とシリア・フローレス夫人の強制連行を含む夜明け前の襲撃からわずか数時間後、トランプは記者団にそのように語った。ヴェネズエラの今後について問われると、「私たちが統治することになる」と答えた。もはや国家建設(nation-building)は行わないという彼の約束は裏切られ、これで終わりとなった。

 

アメリカによるカラカス爆撃、マドゥロ大統領の拉致、そしてトランプ大統領によるヴェネズエラ石油産業の掌握計画は、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領の善隣政策(President Franklin D. Roosevelt’s Good Neighbor Policy)によって構想され、1950年代に米州相互援助条約(the Inter-American Treaty of Reciprocal Assistance)と米州機構(OAS)憲章(the Charter of the Organization of American States)によって成文化された米州システム(the inter-American system)に深刻な打撃を与えた。

 

マドゥロ大統領はラテンアメリカ内に友人をあまり持っていないが、主要国の指導者の多くはアメリカの攻撃を非難している。地域の指導者たちは短期的には反撃できる余地がほとんどないが、アメリカのラテンアメリカへの介入の歴史は、たとえトランプとその外交政策ティームがカラカスで思い通りに事が運んだとしても、西半球におけるアメリカの立場に与える外交的ダメージは、彼らが想像する以上に大きな代償を伴う可能性があることを示唆している。たとえ彼らがカラカスで思い通りに事が運ぶことができるかかどうかは、決して確定的ではない。

 

トランプは、第二次世界大戦終結以来の国際秩序を形作ってきた規範や制度(the norms and institutions)を破壊してきたことで悪名高い人物だ。NATOや国連から世界銀行や世界貿易機関に至るまで、「アメリカ・ファースト(America First)」は、ハードパワーに依存し、多国間の関与やコミットメントに懐疑的なアメリカの外交政策を意味してきた。

 

第2次トランプ政権発足後数週間で、トランプはその姿勢が西半球でどのように適用されるかを予見した。パナマシティにパナマ運河を返還し、カナダに主権を放棄して51番目のアメリカの州となるよう要求した。先月(2025年12月)末には、デンマークに対しグリーンランドの引き渡しを要求し、さもなければアメリカ軍による奪取に直面する可能性があると繰り返した。

 

ヴェネズエラは、昨年9月にアメリカ軍がカリブ海で麻薬密輸船とされる船舶の爆破を開始して以来、トランプの一方的な攻撃の的となっており、トランプはマドゥロをいわゆる「カルテル・デ・ロス・ソレス」の麻薬テロリストの首謀者だと非難している。

 

しかし、マルコ・ルビオ国務長官に煽られたトランプのヴェネズエラへの執着は、麻薬が原因だったことは一度もない。ヴェネズエラはコカインを生産していないし、ましてやフェンタニルも生産していない。ヴェネズエラはコロンビア産コカインの二次的な中継地点であり、その輸送先は主にヨーロッパだ。アメリカ市場向けのコカインは、コロンビアとエクアドルから太平洋を経由して北上するか、陸路でメキシコを経由して北上する。さらに、もしトランプの主目的が麻薬密売人の処罰であったならば、400トン以上のコカインのアメリカへの密輸を幇助した罪で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領フアン・オルランド・エルナンデスを恩赦することはなかっただろう。

 

トランプ大統領がカリブ海に大規模な艦隊を派遣したことは、当然のことながら、アメリカが砲艦外交(gunboat diplomacy)の手段として、あるいは介入(intervention)の前兆として、この地域に海軍部隊を定期的に派遣していた砲艦外交を想起させた。100年前、砲艦外交はセオドア・ルーズヴェルト大統領と密接に結び付けられ、モンロー主義のルーズヴェルト的系列として正当化された。この系列では、アメリカはラテンアメリカ諸国への介入によって安定を維持する権利があると主張していた。

 

その後20年間にわたる24回のアメリカによる介入と6回の長期占領は、ラテンアメリカ諸国の間に大規模な反感を招いた。第一次世界大戦中、多くのラテンアメリカ諸国が中立を守り、ドイツはメキシコにアメリカへの宣戦布告を促せるのではないかと考えたほどである。

 

1930年代、ヨーロッパに再び戦火の雲が立ち込めると、ルーズヴェルト大統領は善隣政策を採用し、関係修復と、西半球に戦争が到来した際にラテンアメリカが連合国側にしっかりと留まることを保証するために、軍事介入を放棄した。ルー元はこの政策に成功し、戦後の米州システムの基礎を築いた。

 

確かに、アメリカは西半球を支配するという帝国主義的誘惑(the imperial temptation)を完全に捨て去ったことはなかった。特に冷戦期においては、共産主義の脅威、とりわけキューバ革命後の脅威が、グアテマラ、キューバ、ドミニカ共和国、チリ、グレナダ、ニカラグアといった主要な国々への、秘密のそして公然の介入を生み出した。

 

トランプ大統領は、自ら「トランプ系列(Trump Corollary)」を発表し、続いてヴェネズエラに介入することで、ラテンアメリカにおけるブレジネフ・ドクトリン(the Brezhnev Doctrine)に相当するアメリカ版を宣言した。すなわち、アメリカの勢力圏内にある国々は限定的な主権(limited sovereignty)しか持たないというものだ。先月発表されたトランプ大統領の国家安全保障戦略(Trump’s National Security Strategy)は、「アメリカは西半球において卓越した存在でなければならない(The United States must be preeminent in the Western Hemisphere)」と明確に宣言している。

 

ラテンアメリカの人々は、少なくとも今後3年間は、国際法の制約がもはや適用されないホッブズ流の自然状態(a Hobbesian state of nature)に生きていることを理解すべきだ。トランプは国内法以上に国際法を軽視している。米州協力の基盤文書である米州機構(OAS)憲章は、「いかなる国または国家集団も、いかなる理由によっても、直接的または間接的に、他国の内政または外交問題に介入する権利を有しない」「いかなる国も、他国の主権的意思を強制し、そこからいかなる利益を得るため、経済的または政治的性格を有する強制的手段を用い、または用いることを奨励してはならない」「国の領土は不可侵である。いかなる理由によっても、一時的であっても、他国による直接的または間接的な軍事占領またはその他の武力行使の対象とされてはならない」と厳粛に宣言している。事実上、この憲章は今や死文(a dead letter)となっている。

 

ラテンアメリカ諸国からの初期反応は、トランプ大統領によるアメリカ国内法の軽視に対する国内の反応と軌を一にしている。イデオロギー的に同調的な指導者たちは、支持を得るために惜しみない賛辞を送った。トランプ大統領から200億ドルの救済措置を受けたアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、マドゥロ大統領の退陣を支持し、「自由万歳、くそが(Long live freedom, damn it)」と宣言した。しかし、主要国はアメリカの介入をはっきりと非難した。

 

ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は、アメリカは「容認できない一線を越えた(has crossed an unacceptable line)」と直後に警告した。コロンビアでは、グスタボ・ペトロ大統領がワシントンの軍事作戦を「地域の主権への攻撃(assault on the sovereignty of the region)」と非難した。チリでは、退任間近のガブリエル・ボリッチ大統領が、トランプ政権の行動は「領土保全の原則の重大な侵害であり、地域諸国の安全、主権、そして安定を危険に晒す(constitutes a grave violation of the principle of territorial integrity and puts at risk the security, sovereignty, and the stability of the countries in the region)」と宣言した。メキシコ外務省は声明で、「ラテンアメリカ・カリブ海地域は相互尊重(mutual respect)、紛争の平和的解決(the peaceful settlement of disputes)、武力行使と武力威嚇の禁止(the prohibition of the use and threat of force)を基礎として築かれた平和ゾーン(a zone of peace)であるため、いかなる軍事行動も地域の安定を深刻に脅かすことになる」と指摘した。

 

短期的には、ラテンアメリカ諸国はトランプの攻撃的な姿勢を抑えるためにできることはほとんどない。昨年、トランプはメキシコとコロンビアへの軍事攻撃をちらつかせ、パナマ運河を再占領し、ニカラグアとキューバに新たな経済制裁を課した。強者はやりたいことをやり、弱者は当然の苦しみを味わうことになる(The strong do what they will; the weak suffer what they must)。

 

​​しかし長期的には、ラテンアメリカ諸国には、最初の砲艦外交の時代と同様に、選択肢がある。国際的な経済関係をヨーロッパやアジアのより信頼できるパートナーへと転換することで、アメリカの経済制裁に対して脆弱な(vulnerable)状態を軽くすることができる。アメリカの外交的圧力、そして(程度は低いものの)アメリカの軍事的脅威とのバランスを取るために、他の主要国に新たな戦略的同盟を求めることもできる。トランプの優先事項である移民問題や麻薬密売問題など、アメリカ単独では解決できない問題への協力を縮小するだけで、受動的に抵抗することもできる。

 

ラテンアメリカ諸国がアメリカから離れる傾向は、ここしばらく徐々に進行しており、その先頭に中国が立っている。過去10年間、アメリカ南方軍の年次態勢声明は、中国を戦略的競争相手(a strategic competitor)、そしてアメリカの半球の利益に対する脅威として拡大していると指摘してきた。昨年発表された最新版では、「アメリカと中国は激しい戦略的競争に巻き込まれている(The United States and China are locked in a fierce strategic competition)」と警告している。

 

ルーズヴェルト大統領の善隣政策は、ヨーロッパで高まりつつある危機に対処するため、ラテンアメリカ諸国に同盟関係を築くことを目指していた。トランプ大統領は、アメリカはこの地域に同盟国(allies)など必要なく、属国(vassals)さえあれば十分だと考えているようだ。わずか1年で、アメリカは典型的な「悪い隣国(Bad Neighbor)」に変身した。ラテンアメリカ諸国をアメリカの宗主権(suzerainty)の対象として扱うことは、ラテンアメリカ諸国の中国への傾きを加速させ、アメリカの地域的影響力(U.S. regional influence)を弱めるだけだ。もし世界でトランプ大統領のヴェネズエラ介入を密かに称賛している人がいれば、それは中国の習近平国家主席だろう。

※ウィリアム・M・レオグランデ:アメリカン大学教授。クインシー研究所非常勤研究員。ピーター・コーンブルーとの共著『キューバへの裏チャンネル:ワシントンとハバナの交渉の隠された歴史(Back Channel to Cuba: The Hidden History of Negotiations between Washington and Havana)』がある。Xアカウント:@WMLeoGrande

※ピーター・コーンブルー:ジョージワシントン大学国立安全保障アーカイヴのキューバ文書プロジェクト部長。『1962年のキューバミサイル危機(The Cuban Missile Crisis, 1962)』の共著者であり、ウィリアム・M・レオグランデと共著で『キューバへの裏チャンネル:ワシントンとハバナの交渉の隠された歴史(Back Channel to Cuba: The Hidden History of Negotiations between Washington and Havana)』もある。Xアカウント:@peterkornbluh

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

 

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