植草一秀の『知られざる真実』
2025年5月31日 (土) 切ってはいけない三大カード
トランプ関税政策に右往左往する日本政府。日本は真っ先に訪米してお伺いを立てたが大きな進展はなかった。トランプ大統領が交渉に登場して「格下も格下の自分にトランプ大統領が直接話をしてくださった」という〈朝貢(ちょうこう)外交〉をしているのだから先が思いやられる。
中国は、米国が上げた拳を降ろさざるを得ないとの洞察に基づき、一歩も譲らぬ姿勢を明示して、見事にトランプ大統領の大幅譲歩を引き出した。
交渉というのは、こうしてするものだという手本を示したとも言える。「格下も格下」の担当相が訪米して交渉し、「切ってはいけない」カードを切らされることになるのではないか。
「切ってはいけない」カード。三つある。
第一はコメ輸入
第二は防衛費・駐留経費という名の米国への上納金増額
第三は日本政府保有の米国国債について規制を課されること
このカードを切ってはいけない。
日米交渉と同じ時期に米騒動が勃発しているのは偶然ではない。備蓄米を5キロ2000円で放出するが、在庫は60万トンしかない。年間消費量は700万トンから800万トンだから1ヵ月分しかない。国民に均等にまんべんなく行き渡る量でない。瞬間蒸発。他のコメは小売店の仕入れ価格が高いから低価格では販売されない。
そこで、コメ輸入が拡大されるリスクがある。グローバル資本は日本農業の解体を狙っている。三つの側面がある。
第一は日本の食料自給率を低下させ、食料によって日本を支配すること。
第二は日本農業の効率化できる部分を収奪すること。
第三は農協マネー200兆円を収奪すること。
メディアを動員してJAつぶしが推進されている。郵政潰しとまったく同じ。
郵政事業で収益にならないのは郵便事業。初めから明白だった。グローバル資本が収奪したかったのは郵貯マネー、簡保マネー、日本郵政不動産、郵便局販売チャネルだった。郵便事業だけは不要だった。
郵貯マネー、簡保マネー、不動産が着実に収奪されつつある。棄てられた郵便事業の郵便料金が暴騰している。
同じことが日本農業で進行している。騙されてはいけない。JAは協同組合組織。営利企業ではない。JAとともに日本の零細、小規模農家を守らなければならない。
零細。小規模農家を守ることは、小規模農業に従事する人の所得を補償すること。これを財政資金で実現することが必要不可欠なのだ。
コメ輸入を拡大して小規模農業を潰してはならない。防衛費・駐留米軍経費負担を拡大してはならない。
軍事にお金を投じるのではなく、日本の農家を支えるためにお金を投下すべきだ。
日本政府保有の米国国債売却について米国に制限を付けられるいわれはない。国家主権の侵害だ。
ところが、「格下も格下の担当大臣」の対米交渉ではすべてが日本の敗北に終わるのではないか。
話は変わるが、6月19日に新著『財務省と日銀 日本を衰退させたカルトの正体』(ビジネス社)
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