植草一秀の『知られざる真実』
2025年2月22日 (土) 組織腐敗を警告した県民局長
兵庫県知事選で斎藤元彦氏が再選を果たした裏事情が明らかになりつつある。私は兵庫県知事の出直し選が実施された11月17日の翌日に下記記事を配信した。ブログ記事「新時代情報戦争と兵庫知事選」https://x.gd/hAuJv メルマガ記事「兵庫県知事選と25年政治刷新」https://foomii.com/00050 記事のなかに次のように記述した。
「インターネットメディアを活用して、人々の納得や共感を獲得できれば、大きな成果を上げることができる。問題は流布される情報が必ず真理とは限らないこと。事実に反する情報であっても、情報の受け手が納得し、真実だと信じ込めば投票結果などに影響を与えることができる。
兵庫県知事選では、斎藤前知事が亡くなった県民局長の内部通報に対して取った行動が適切であったのかどうかが最重要の評価対象だったが、県民局長のプライバシーに関する情報が拡散されて有権者の行動が誘導された側面が強いと見られる。「目的のためには手段を問わない」とのスタンスで選挙戦が展開されたとすれば、県民局長が使用していたPCに保存された情報の管理が適切であったのかどうかに関する評価がなされる必要がある。この意味で、選挙が公正な状況で執行されたのかどうかについての検証が必要になる。」
公正な選挙は行われなかったと言える。兵庫県西播磨県民局長による外部通報。局長は斎藤知事に対する批判感情を有していたと考えられる。斎藤知事の退任を求める感情もあったのではないか。しかし、このことは公益通報の正当性を否定することに直結しない。
局長は外部通報を行う直前にあたる昨年2月に兵庫県HPにメッセージ記事を投稿している。現在も、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業によって閲覧できる。https://x.gd/0LpPbB このなかで局長は「○選ばれる職場、働き続ける職場」の小見出しを付けて職場としての兵庫県のあり方について言及している。
〈これからの兵庫県は、志ある次世代の若者達に選ばれ続けることが出来るでしょうか。職員達が働いていたいと思う組織であり続けられるでしょうか。いわゆるビジネス書系では、山口周さんの書籍をわりと読んでいます。著書「劣化するオッサン社会の処方箋」という本の中には、“組織は必然的に劣化する”という仮説を人間行動学、組織論、歴史的事実などから論理的に説明しようとされています。
組織の劣化はひとえに権力者の取り巻きの劣化が原因である。自分より優秀な者を讒言により権力者から遠ざけ、真実に蓋をし、判断を誤らせる。その組織はどんどんと腐敗し落ちぶれていく。そんな論調です。歪な人事は組織を蝕んでいきます。
そして、一握りの者たちが自らの栄達と保身に明け暮れ、気がつけば、権力者の周囲には二流、三流のイエスマンが主流を占めている状況に。権力者は好き嫌いで人を評価します。既に一部の者だけが居心地よい組織になってしまっていたとしたら末期ガンと同じです。余命はあと何年でしょうか。
そして、そのような組織の腐敗・内部崩壊も外部にはなかなか伝わりにくく、不祥事、事件の発生といった出来事でようやく世間の知るところとなるのです。いや、これ、兵庫県のことを言ってるのと違いますよ、念のため(笑)〉
恐らく兵庫県のことをこの文章で表現しようとしたのだろう。斎藤知事は〈牛タン倶楽部〉と呼ばれる数名の側近だけを周囲に配して県政を独裁的に運営したとされる。この〈側近〉が県民局長の外部通報後に県民局長を追い詰めた。
外部通報が公益通報に該当する場合には、公益通報者保護法に基づいて公益通報者を保護しなければならない。しかし、斉藤知事を筆頭とする県幹部は外部通報の犯人捜しを実施し、公益通報の可能性が否定されないなかで県民局長に対する懲戒処分が断行された。
同時に県民局長から押収した公用PC内に保存されたプライバシー情報を外部に公表するとの脅しをかけた。プライバシー情報の外部漏洩は許されないが、県幹部がプライバシー情報を外部に漏洩させ、その情報が立花孝志氏によって流布拡散され、11月17日の知事選に重大な影響を与えた。
驚くべきことは、知事選で立花孝志氏が流布・拡散した不透明な情報の源が百条委委員を務めてきた岸口みのる議員、増山誠議員等であったこと。いずれも維新所属議員。多くの死者が生じている兵庫県問題。維新の責任が厳しく問われる局面が到来している。
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