植草一秀の『知られざる真実』
2024年9月10日 (火) 吉田晴美氏だけが消費税減税公約
立憲民主党の代表選に4人の候補者が立候補した。推薦人不足の泉健太氏は枝野幸男陣営から、吉田晴美氏は野田佳彦陣営から推薦人を「借り受け」て出馬にこぎつけたと伝えられている。吉田晴美氏の主張は枝野氏と重なる部分が多く、リベラル系の得票を枝野氏から引きはがす狙いで野田氏が吉田晴美氏出馬に協力したと見られている。逆に泉健太氏の主張は野田佳彦氏と重なる部分があり、野田票を引きはがすために枝野氏が泉氏出馬に協力したと見られている。
自民以上に派閥力学が働いているのが立憲民主党代表選。しかし、より重大なのは基本政策を異にする人々が呉越同舟していること。かつての民主党時代から一貫して解消できていない問題だ。重要な基本政策テーマは原発、消費税、対米自立。2017年に立憲民主党が創設されて民主党の「水と油」問題が解消されたかに思われた。リベラルの立民と第二自公の国民に分離されたと思われた。ところが、立民が躍進すると立民への介入が行われ、枝野氏が転向した。
枝野氏が21年総選挙で共産を含む野党共闘を否定した。この瞬間から立民の凋落が始動。立民に介入したのは連合。連合を仕切るのは6産別と呼ばれる同盟の系譜を引く勢力である。同盟はCIA資金支援で創設された民社党の支援母体として設立された大企業御用組合連合。同盟は統一協会の国際勝共連合と極めて深い関係を有してきた。「勝共連合」は反共を唱える統一協会の政治組織。現在の連合は「勝共活動」を中心に据えている。この連合が立民に介入し、枝野氏が転向。共産を含む野党共闘路線を否定し、21年総選挙で惨敗した。
後継代表に就任した泉健太氏も共産との共闘を否定して22年参院選でさらなる大惨敗を演じた。基本政策テーマである原発・所費税・対米自立について、改革勢力は原発廃止・消費税減税廃止・対米自立の方針を掲げる。守旧勢力は原発容認・消費税増税容認・対米隷属の方針を掲げる。この対立する二つの勢力が同居していることがおかしい。
自公に対峙するために野党が一体となることが主張されているが、基本政策路線が真逆の勢力が「野合」して政権を獲得しても、すぐに空中分解する。「野合」ではなく「政策基軸の連帯」を構築するべきだ。
最重要の課題は消費税と原発。消費税減税・廃止の政策路線と消費税増税容認の政策路線は真逆。立民代表選で消費税減税を公約に掲げているのは吉田晴美候補のみ。9月4日開催の「ガーベラの風」主催国会イベント「災害・食料・消費税 総選挙で日本をアップデート」https://www.youtube.com/watch?v=MGQT7ygxutw&t=2846s
で消費税問題について見解を提示する予定だったが、時間がなくなり説明を割愛した。
以下が説明予定だった内容。
1.消費税の問題点
1)構造的景気低迷の原因(消費税は消費懲罰税)
2)逆進性(富裕層に優しく少所得階層に過酷)
3)前提のシロアリ退治が一切行われていない
2.消費税収拡大の目的が不正
1)1989年度~2023年度に消費税で509兆円徴収
2)同期間の個人税負担軽減が286兆円
3)同期間の法人税負担軽減が319兆円
4)消費税増税は財政再建・社会保障拡充に一切使われていない
5)金持ち優遇税制は温存され、少所得階層の生存権を侵害
3.消費税減税・廃止が必要不可欠
1)高福祉と消費税の組み合わせは存立し得る
2)低福祉と高率消費税は「悪魔の組み合わせ」
3)消費税率5%超を境界に個人消費が減少トレンド
4)「応能負担原則」を貫徹する税制抜本改革必要 最重要のポイントが2と、3の3)。
1989年から2023年までの35年間に509兆円が消費税で吸い上げられたが、この期間に個人の所得税・住民税負担が286兆円、法人の税負担が309兆円軽減された。消費税収のすべてが富裕層や大資本の税負担軽減に充当され、財政再建や社会保障拡充には消費税収が1円も充当されていない。また、GDP統計における民間最終消費支出の推移を見ると日本の個人消費活動は2014年を境に減少トレンドに転じたことが分かる。
2014年に安倍内閣が消費税率を5%から8%に引き上げた。安倍内閣はさらに19年に消費税率を10%に引き上げた。日本の個人消費は2014年を境に減少に転じたのである。GDPの5割を占める個人消費が減少トレンドに転じたのだから経済が浮上するわけがない。
消費税減税・廃止こそ最重要の経済政策である。吉田晴美氏以外の誰も消費税減税を公約に掲げない。これでは自民党と同じ穴のムジナ、同じ穴のドジョウである。
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