カマラ・ハリスの外交政策は危険かもしれない! | ワーカーズの直のブログ

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古村治彦の政治情報情報・分析ブログ 2024年08月04日

カマラ・ハリスの外交政策は未知数だが危険かもしれない:「ヒラリー2.0」というべき存在かもしれない

古村治彦です。

カマラ・ハリス米副大統領の外交政策に関しては今の段階ではほぼ分かっていない。そもそもハリスはカリフォルニア州で検察官としてキャリアを重ね、州の司法長官(検事総長のような存在)となり、その後は連邦上院議員となったが1期目途中で、副大統領となった。副大統領時代の主な仕事は南部国境対策で、外交政策らしいものと言えばこの時が初めての経験ということになるだろう。米副大統領が独自に外交政策を行うことはできず、大統領の代理で外国訪問をするとかそういうことが主な仕事となる。

それでもこれまでのハリスの発言などをまとめた素晴らしい記事が出ていたので紹介する。簡単に言えば、ハリスはヒラリー・クリントンのエピゴーネンに過ぎず、「ヒラリー2.0」という存在でしかない。口を開けば「人権、人権」と相手を責め立て、交渉も何もあったものではない。ヒラリーの人道的介入主義派の一部と言わざるを得ない。

例えば、自身の母親の出身国インドに関しては、祖父は高名な外交官で、子供時代に何度も訪れ、祖父の影響で公職を目指したそうだが、アメリカのインド太平洋戦略における最重要の存在という位置づけで、アメリカ政府もインド政府も、ハリスの存在には期待感を持っているだろうに、カシミール地方の人権問題をわざわざ取り上げている。これではインド政府としては、「せっかくインド系と言ってもこれじゃあなぁ」ということになる。

対ロシアに関しては、ロシアを強硬に非難し、交渉相手になれそうにもない。ウクライナとロシアの間の停戦交渉では「誠実な仲介人(honest broker)」が必要であるが、ハリスではその役割を果たすことはできない。ロシア側はハリスに対して既に、「ロシア国営メディアは直ちに民主党の新たな旗手への攻撃を開始した。モスクワ国立大学国際政治学部長のアンドレイ・シドロフは、ロシア国営テレビのウィークリー・トーク番組で、「核のボタンを持ったカマラは手榴弾を持った猿よりも悪い(Kamala with the nuclear button is worse than a monkey with a grenade)」と語った」と酷評している。対中国でもバイデン政権移譲のことはできない。関税の引き上げ競争クライで済めばよいが、ハリスが対中国で緊張を増大させ、戦争の危険が高まるということが考えられる。

ハリスは、非常に定式的な外交を展開することが考えられる。「善か、悪か」の二元論、理想主義で、突っ走るのは非常に危険である。アメリカ国民には本格的な「ヒラリー・クリントン政権」の誕生を阻止してもらえるように期待したい。

 

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カマラ・ハリス・ドクトリン(The Kamala Harris Doctrine)―民主党大統領選挙候補に内定しているハリスの外交政策の見解について私たちが知っていること全て。

『フォーリン・ポリシー』誌執筆陣 2024年7月26日 『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/26/kamala-harris-policy-china-russia-trade-immigration-israel-gaza-india/

カマラ・ハリス米副大統領が2024年大統領選挙の民主党候補指名をほぼ確実にしたように見える今、ワシントンと外国資本の周りで渦巻いている最大の疑問の一つは、ハリスが11月に選出された場合の外交政策の原則がどのようなものになるかである。

ジョー・バイデン米大統領の外交政策観とハリスの外交政策観の違いを正確に指摘するのは容易なことではない。両者が4年近く外交政策と国家安全保障問題で完全に足並みを揃えていると見せようとしてきたからだ。しかし、彼女は短期間ではあるが大統領選挙に立候補したことがあり、2017年から2021年まで、連邦上院議員を務めていたため、全くの白紙ということではない。

『フォーリン・ポリシー』誌は、彼女の記録と過去の発言を検討することに加え、ハリスの主要な地域や外交政策問題についての彼女の立場についてさらに学ぶために、十数人の現役と元アメリカ政府当局者、連邦議会職員、専門家、ハリスの元補佐官たちと面談した。中国からロシア・ウクライナ戦争、そして中東、加えてその先まで、アメリカが関与している問題について取材した。私たちが発見したことは次の通りだ。

 

●中国(China)

フィリピンのプエルトプリンセサ港に停泊中のフィリピン沿岸警備隊の艦船上での演説を終えたカマラ・ハリス米副大統領が記者団と話す(2022年11月22日)

ハリスの中国との関係は、2020年の候補者として、オバマ政権の副大統領として中国の習近平国家主席と多くの時間を過ごしたと自慢できるバイデンと比べると、比較的験的敵だった。ハリスは、2022年にバンコクで開催されたアジア太平洋経済協力サミット(Asia-Pacific Economic Cooperation summit)に向かう際、「習主席に挨拶した(greeted President Xi)」と記録されているだけで、中国の指導者と顔を合わせたのはほんの一瞬だ。

ハリスにとっての最も強力な中国関係の経験は、副大統領としてより広範なインド太平洋地域におけるアメリカの同盟関係を強化するために費やした時間かもしれない。彼女は副大統領として、3回東南アジアを訪れ、シンガポール、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシアを訪問した。フィリピン訪問では、南シナ海に浮かぶパラワン諸島に立ち寄り、フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領との会談で、同盟国に対するアメリカの「揺るぎない関与(unwavering commitment”)」を強調した。 昨年9月にジャカルタで開催されたアメリカ・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議を含め、この地域の会議でもバイデンの代役を務めることが多かった。

2020年の大統領選挙候補として中国に対して彼女が提起した立場は、競争と協力(competition and cooperation)を同時に追求するという過去4年間のホワイトハウスの政策と密接に一致している。2019年9月の予備選挙討論会で、彼女は中国について、「彼らは知的財産を含む私たちの製品を盗んでいる。彼らは規格外の製品を私たちの経済に投げ込んでいる。彼らは責任を負う必要がある」としながら、アメリカは気候変動などの重要な問題で中国と協力すべきだと付け加えた。

しかしながら、ハリスのヴィジョンは、ある点で現在の政策とは異なっていた。彼女は当時のドナルド・トランプ大統領の対中関税を批判し、自分は以前「保護主義的な民主党員(protectionist Democrat.)」ではないと述べていた。しかしバイデン政権は、トランプ関税をほぼ維持しており、ジャネット・イエレン財務長官を含め、これまで関税に反対していた民主党の議員や重要人物の多くは新型コロナウイルス感染拡大や中国との競争激化(rising competition with China)を受けてトランプ関税を支持している。

ハリスにとって、連邦上院議員としても大統領候補としても、人権は特に注目すべき分野だ。彼女と他の55人の連邦上院議員は、物議を醸している引き渡し法案に対する大規模な抗議活動中に香港で人権を侵害した当局者に制裁を課す「香港人権・民主政治体制法(Hong Kong Human Rights and Democracy Act)」法案を共同提案した。

翌年、彼女は新疆における中国の人権侵害に同様の戦略を適用する法律の共同提案者となった。ハリスはまた、新疆ウイグル自治区における中国政府の出生率制限の取り組みを詳述する報道が出たことを受け、その後の書簡で当時の国務長官マイク・ポンペオに対し、更なる行動を取るよう求めた。彼女の見解は、中国の人権問題に対して強硬なバイデン政権の政策に反映されている。

専門家たちは、全体として、対中政策に対するハリスのアプローチがバイデンと大きく乖離する可能性は低いと述べた。

「バイデンの対中政策は、ある意味、民主党のコンセンサスを反映している」と、かつて国務省中国調整室の初代室長を務めたユーラシア・グループの中国担当マネージング・ディレクター、リック・ウォーターズは次のように述べている。「私はカマラ・ハリスに劇的に異なる中国政策を期待している訳ではない。枠組みと構造はほぼ決まっていると思う」。-リリ・パイク筆

 

●インド、南アジア、そしてインド太平洋(India, South Asia, and the Indo-Pacific)

インド首相ナレンドラ・モディがホワイトハウスにジョー・バイデン大統領と到着した際に握手をするハリス(2023年6月22日)

インドは、バイデン政権の二国間関係において最も輝かしいスポットの一つであり、アメリカ政府はインドを中国に対する極めて重要なカウンターバランスであり、アメリカの広範なインド太平洋戦略における重要なパートナーであるとの見方を強めている。防衛とテクノロジーは米印関係の特に強力な柱であり、昨年インドのナレンドラ・モディ首相がワシントンDCを国賓訪問(state visit)した際にいくつかの協定や取り組みが発表された。

他のパートナーシップや地域と同様、専門家たちは、ハリスのインド政策がバイデンの政策と大きく乖離する可能性は低いと述べた。アメリカとインドの関係は、トランプ政権下も含めて数十年にわたって確実に超党派の支持を得ており、依然として双方にとって重要すぎるため、大きく揺るがすことはできない。

ハリスは、これまでの米大統領選挙候補者よりもインドと個人的なつながりを持っている。母親のシャマラ・ゴパランは、インドからアメリカに移住しており、ハリスは、自身の人生や考え方に対する母親の影響について繰り返し言及している。しかし、政治的には大きな役割を果たす可能性は低い。ウィルソン・センター南アジア研究所所長でフォーリン・ポリシー『南アジア・ブリーフ』の執筆者であるマイケル・クーゲルマン氏は次のように述べている。「確かに、ハリスの先祖代々のインドとのつながりは、ハリス自身のインドへの親近感を伝えるために利用される可能性が高い。しかし、インド政策に関して言えば、彼女とバイデンの間に日の目を見ることはないだろう」。

ハリスは実際、過去にはバイデンよりもインドに対して厳しい姿勢を示しており、連邦上院議員時代にモディ政権下でのインドの人権状況、特にカシミール問題を批判しており、副大統領時代にワシントンでモディ首相と複数回会談した際にも、より微妙な方法で批判していた。しかし、ハリスが大統領になれば、その批判は和らげられるかもしれない。クーゲルマンは「ハリスが権利に関して、バイデンよりも厳しいとは思わない。少なくともアメリカの戦略的利益が許す以上に厳しくはないだろう」と述べた。

同時に、ハリスは若いので、常にオンラインでのサポート基盤があるため、彼女はそうした不快な会話をすることに積極的になる可能性がある。ハドソン研究所インド・イニシアチティヴ所長のアパルナ・パンデは、「彼女は次世代の民主党政治家でもある。彼女は、バイデン大統領の世代の政治家ではない」と述べ、党の将来の基盤の大部分を占める若いアメリカ人は、宗教の自由と世界的不正義(religious freedom and global injustices)に対してはるかに大きな関心を持っていると付け加えた。これがハリスの政治的傾向もある。パンデ氏は「ハリスは、ある程度民主党の左派、つまり進歩主義派の出身なので、民主政治体制自体が重要であり、民主政治体制の価値観が重要だ」と続けて述べた。

より広い地域に関して言えば、ハリスは、東南アジアを何度も訪問しており、バイデン政権のインド太平洋戦略の重要な人物の一人である。しかし、大統領としてのバイデンの外交政策で最悪の時期、つまりタリバンを政権に復帰させた混乱に満ちたアメリカのアフガニスタンからの撤退が、大統領選挙期間中にどれほど彼女に負担を与えているかはまだ分からない。トランプは最初の討論会でこのエピソードをバイデンに対する棍棒として繰り返し利用しており、ハリスに対しても同じことをする可能性があるが、専門家たちは、それが同じ効果をもたらすことはないかもしれないと述べている。

ホワイトハウス、CIA、国務省で勤務し、現在は新アメリカ安全保障センター (CNAS)インド太平洋安全保障センターのディレクターを務めるリサ・カーティス氏は次のように語っている。「共和党がアフガニスタン問題でカマラ・ハリスを非難するのは難しいだろう。私たちのような悲惨なやり方で完全撤退したのは、バイデンの個人的な決断であったことは明らかだ」。

しかし、ハリスが大統領になれば、アフガニスタンは、彼女に外交政策に大きな影響を与える機会を与えることになる。カーティスは「カマラ・ハリスが女性大統領として当選すれば、アフガニスタン女性の支援にもっと注力してくれることを期待したい。アメリカで、女性の権利のために戦っている者として、アフガニスタンの女性​​に起きていること、つまりアフガニスタンが女性と少女への教育を否定している世界で唯一の国であるという事実を無視するのは難しいだろうと思う」。-リシ・イエンガー筆

 

●通商政策(Trade Policy)

ロサンゼルスで社長兼CEOのマット・ピーターセン氏とともにLAクリーンテック・インキュベーターを視察するハリス(2023年3月17日)

連邦上院議員時代も副大統領時代も、ハリスは決して貿易通(trade wonk)ではなかった。しかし、大まかに言えば、連邦上院議員時代から2020年の大統領選出馬に至るまで、ハリスは労働者中心で環境に優しく、経済的な見識に富んだ貿易のヴィジョンを提唱してきた。それは今日の民主党にかなりしっくりとなじむものであり、トランプやその副大統領候補であるオハイオ州選出のJ・D・ヴァンス連邦上院議員の立場とは明らかに対照的である。

ハリスは在任中、トランプ前大統領の関税を一貫して批判し、関税はアメリカ企業と消費者に対する追加課税であり、貿易相手国からの反発や国内の更なる経済的苦痛につながったと正しく認識した。

しかし、バイデンも当時ほぼ同じことを言っていて、重要な分野を保護することを目的とした、より的を絞った戦略的義務であったとしても、新たな関税を追加する前にトランプ大統領の当初の関税の多くを維持し続けた。おそらく、保護主義のバグが民主、共和両党に十分に浸透しており、輸入関税のような自滅的な考えでさえ、どの候補者にとっても振り払うのは難しいことだろう。

貿易協定に関して言えば、ハリスを理解するのは少し難しい。彼女は、レーガン・ブッシュ時代の共和党が発案し、今では共和党の鬼っ子となった当初の北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement、NAFTA)や、トランプ大統領のNAFTA2.0にも反対票を投じていただろうと言う。ハリスは、カナダとメキシコとの改定貿易協定には労働と環境保護が十分に盛り込まれていないため、反対すると述べた。彼女はバラク・オバマ前大統領の署名である環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)にも同様の反対意見を持っていたが、この協定はすぐに民主、共和両党にとって有害となり、トランプ前大統領の就任最初の週に打ち切られた。

ほぼ全てのアメリカの政治家と同様に、ハリスは、中国が知的財産(intellectual property)を盗み、貿易を不正行為していると非難しているが、エスタブリッシュメント派の政治家たちと同様に、北朝鮮や気候変動を含む地域的および世界的な問題への対処には、中国政府との協力関係が必要だとも主張してきた。-キース・ジョンソン筆

 

●ロシア・ウクライナとNATO(Russia-Ukraine and NATO)

スイスのルツェルン近くで開催されたウクライナ和平サミットで、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領と握手するハリス(2024年6月15日)

バイデンは、ミュンヘン安全保障会議やウクライナ和平サミットなど多くの大きな国際会議にハリスを代表として派遣している。

ハリスは、バイデンのような大西洋を越えた実績はないが、ヨーロッパ有数の対話の場であり、アメリカの政策について神経を落ち着かせるために政府高官たちが訪れる場所であるミュンヘンにおいて3年連続で、アメリカのトップの高官として期待される成果を挙げている。

NATOに対するアメリカの関与は「揺るぎない(unwavering)」ものであり、「鉄壁(ironclad)」であると、ハリスは、2022年2月のミュンヘンでの演説で述べた。彼女はまた、トランプ大統領が同盟のGDP比2%の支出を満たしていない同盟国には敬意を払わないと脅しているNATOの第5条の自衛権の誓約は「神聖なもの(sacrosanct)」だとも述べた。

2023年、ハリスはミュンヘンに戻り、NATOについては同様の論点を話したが、当時1年を経過していたロシアの侵略については、より厳しい言葉を述べた。ハリスは、バイデン政権はロシアが戦争で人道に対する罪を犯したと結論づけたと述べた。

そして、バイデンの大統領選挙活動を事実上終わらせることになる討論会の約2週間前、ハリスは、スイスで開催されたウクライナ和平サミットにバイデンの代理として出席し、そこで「公正かつ永続的な平和(just and lasting peace)」を訴えた。

クレムリンは、これまでハリスの大統領選挙への立候補について、ほぼ沈黙を保っており、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官はハリス副大統領の「非友好的な発言(unfriendly rhetoric)」に言及したが、ロシアはまだハリスの立候補を正式に評価できていないと付け加えた。

しかし、ロシア国営メディアは直ちに民主党の新たな旗手への攻撃を開始した。モスクワ国立大学国際政治学部長のアンドレイ・シドロフは、ロシア国営テレビのウィークリー・トーク番組で、「核のボタンを持ったカマラは手榴弾を持った猿よりも悪い(Kamala with the nuclear button is worse than a monkey with a grenade)」と語った。-ジャック・ディッチ

 

●イスラエル・パレスティナ紛争(Israeli-Palestinian Conflict)

ワシントンDCの国立建築博物館でイスラエル国家樹立75周年の独立記念日レセプションに出席するハリスとエムホフ(2023年6月6日)

外交問題全般に言えることだが、ハリスのイスラエル・パレスティナ紛争の歴史は、大統領執務室に入るまでに異例の外交経験を積んだバイデンに比べると浅い。しかし、ハリスの投票記録や公の演説をよく読むと、彼女がガザ地区での戦争やより広範なイスラエル・パレスティナ紛争に対する、アメリカのアプローチに大きな変化をもたらす可能性は低いことが分かる。イスラエル・パレスティナ交渉担当米特使の元上級補佐官のデイヴィッド・マコフスキーは、「彼女の発言からすると、バイデンとの継続性があると思う」と語った。

2023年6月、ハリスは、イスラエルの独立記念日を記念してワシントンで開かれたレセプションで演説し、イスラエルに対するアメリカの「揺るぎない(unwavering)」関与と対イスラエル安全保障支援を支持してきた連邦上院議員としての実績をアピールするとともに、反ユダヤ憎悪があるからと言って、イスラエルを特別視することはしないと警告を発した。ハリスの夫のダグ・エムホフはユダヤ人で、反ユダヤ主義に対処する政権の取り組みで重要な役割を果たしてきた。ハリスは、スピーチの中で、副大統領公邸で初めて過越祭の祭典を主催したことへの誇りを語った。

2023年10月7日のハマス攻撃以来、ハリスは、バイデン政権の政策にほぼ堅持しており、バイデン政権はイスラエルの自国防衛の権利を肯定する一方で、イスラエルの軍事行動の容赦ない性質に対する批判を徐々に強め、人質の解放も保証する停戦を推進している。しかし、少なくとも言葉の上では、相違点がいくつかあった。外交問題評議会の上級研究員で、フォーリン・ポリシー誌コラムニストのスティーヴン・クックは、「ハリスは時に、表に出てきて、バイデン大統領よりもイスラエルに対して批判的になった」と述べている。

ハリスは、公式声明の中で、ガザ地区でのパレスティナ人の苦しみをより重視し、より共感を示してきた。これは、彼女が人道危機(humanitarian crisis)について、更なる懸念を表明するようホワイトハウスに圧力をかけたとの昨年末からのメディア報道と一致している。バイデン政権はこれらの報道に異議を唱えている。

12月にドバイで行った演説で、ハリスは、戦争のきっかけとなったハマスの攻撃の残忍な性質を再考したが、同時にガザ地区の民間人を保護するためにイスラエルに更なる努力をするよう求めた。3月にアラバマ州セルマで行った演説で、ハリスは、人質解放とガザ地区への援助流入を可能にする即時停戦を求めた。彼女の発言は停戦合意を仲介するための政権の外交努力と一致していたが、彼女の熱のこもった発言に聴衆から大きな拍手が送られた。

国務省でイスラエル・パレスティナ交渉担当特使を務めたフランク・ローウェンスタインは、ハリスの紛争に関する政策は継続性を重視するものになる可能性が高いが、バイデンとは異なるトーンを打ち出す可能性があると述べた。この認識は、戦争について、彼女と個人的に話した人たちからも同様の意見が寄せられている。

4月2日、バイデン政権のガザ政策について話し合うためにホワイトハウスでイスラム教徒コミュニティの指導者たちと会談した際、今年初めに医療任務で、ガザ地区で働いていたシリア系アメリカ人医師のザヘル・サルールは、ハリスはガザ政策に関する彼らのプレゼンテーションに感動していたと述べた。ガザ地区の人々に対する戦争の影響を懸念し、会議後に彼に近づき、人道状況について地上からの更なる報告を求めた。サルール医師は、「ハリス副大統領は共感を示していると感じた。彼女はガザ地区の民間人の窮状を明らかに気にかけていました」。また、政策に関してはバイデンと乖離はなかったものの、紛争に対するアメリカのアプローチについての彼女の表現はより明確かつ詳細だったとサルール医師は述べた。

木曜日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談後の公の場での発言で、ハリスは強い口調で語った。ハリスは、イスラエルには自国を守る権利があるというバイデン政権の立場を繰り返したが、その方法が重要だと述べた。ガザ地区について、ハリスは、「私たちは苦しみに対して無感覚になることを許すことはできない。私は沈黙しない」と語った。

ハリスが選挙に勝ったとしても、彼女が就任するのは2025年1月になるため、その間の戦争で多くのことが変わる可能性がある。ガザ地区の状況は依然として厳しいものであるが、戦争の性質は既に大規模な作戦から、より標的を絞った(依然として致命的ではあるが)作戦へと変化している。マコフスキーは、「戦争は過去9カ月のようなものにはならないだろう。だから、ハリスが同じような選択に直面するかどうかは分からない」と語った。-エイミー・マキノン筆

 

●アフリカ(Africa)

ワシントンがアフリカ大陸における外交関係の強化を目指す中、アフリカ3カ国歴訪中のハリスがガーナのケープコースト城で演説(2023年3月28日)

2022年、ワシントンで開催された主要なアメリカ・アフリカ首脳会談で、バイデンは、翌年アフリカを訪問すると誓った。しかし、彼はそうしなかった。 5月にケニアのウィリアム・ルト大統領がワシントンを国賓訪問した際、バイデン氏は再選されれば来年2月にアフリカを訪問すると約束した。今、彼は選挙戦から脱落した。

アフリカの指導者たちは長い間、ワシントンとの関与が他の地政学的優先事項のために後回しにされてきたことを批判してきた。バイデンが全く参加しなかったことは、トランプが大統領としてサハラ以南のアフリカに足を踏み入れなかったことに続くもので、アフリカ諸国のいくつかを 「くそ溜め国家(shithole countries)」と呼んだことで悪名高い。

ティーム・バイデンは、アメリカ・アフリカ首脳会談を企画し、定期的にバイデン政権の閣僚たちをアフリカ大陸に派遣することで、トランプ大統領との差別化を図った。ハリスは、アフリカ大陸を訪問した政府高官の中で最上級であり、昨年ガーナ、タンザニア、ザンビアを訪問した。

現・元政権当局者らは、ハリスのホワイトハウスも、バイデンのアフリカへのアプローチと同様の方針をとる可能性が高いと述べている。それは、閣僚レヴェルの訪問を着実に続け、アフリカ大陸が悲惨な不況に直面する中、民主政治体制と法の支配の促進について得意げにと述べるだろうということだ。民主政治体制の進歩において、地政学的な影響力を巡ってロシアや中国と競争している。

しかし、ハリス政権が誕生すれば、アフリカの指導者や住民に、アメリカ・アフリカの協力と民主政治体制に対する、アメリカの公約が単なるレトリックにとどまらないことを納得させるには、険しい戦いに直面することになるだろう。バイデン政権は、真の民主促進運動を支援するよりも、脆弱な独裁政権との短期的な安全保障上の提携を優先するという、アメリカの外交政策上の長い伝統に従ってきたためだ。西アフリカでクーデターが相次ぎ、アメリカの対テロ作戦が失敗したことで、サヘル地域は以前にも増して独裁的で、テロに脆弱で、ロシアのような、アメリカのライヴァルと手を組むことを許している。

多大な負担にもかかわらず、ハリス政権は、アメリカとアフリカの関係において、いくつかの良い方向に進むだろう。バイデン政権がビジネスとインフラ関係の拡大に重点を置いたことで、新たに約142億ドルの双方向貿易と投資が生まれ、アメリカのアフリカへの直接投資は、新型コロナウイルスの世界的大流行で急激に落ち込んだ後、再び増加に転じている。

バイデンティームはまた、政権末期のスーダン戦争(スーダンの民主政体移行にワシントンが関与して失敗したことを受けて勃発した戦争)の和平交渉を開始するために、「万歳のメリー号」を投げかけているが、その交渉がどのように行われたのかは不明だ。その間、ハリス政権はアフリカ諸国の政府を、大国間競争(great-power competition)の地政学的チェス盤の駒のように扱うことなく、大陸におけるロシアや中国との競争のバランスをとる必要がある。-ロビー・グラマー筆

 

●移民(Immigration)

フロリダ州ホームステッドにある移民児童収容施設を訪れる連邦上院議員(当時)で大統領候補だったハリス(2019年6月28日)

移民は、外交政策問題の一つであり、ハリスの副大統領としてのポートフォリオの重要な部分を占めていることから、ハリスの潜在的な戦略がどのようなものになるかを評価するのがおそらく最も簡単な問題である。

共和党はハリスをバイデン政権の「国境皇帝(border czar)」と名付け、元サウスカロライナ州知事ニッキー・ヘイリー氏の言葉を借りれば、「国境を修復する(fix the border)」という一つの任務を達成できなかったとされるハリスを攻撃した。しかし移民専門家たちは、彼女の任務の範囲ははるかに限定的であり、彼女がバイデン政権の「国境皇帝」に任命されたことは一度もなかったと強調している。国土安全保障長官のアレハンドロ・マヨルカスと保健福祉長官のザビエル・ベセラが国境問題に責任を負っている。

実際には、ハリスはバイデン政権が中米3カ国(ホンジュラス、グアテマラ、エルサルヴァドル)と協力し、経済的苦難、暴力、政治的抑圧といった移民の「根本原因(root causes)」に取り組むための取り組みの陣頭指揮を任されていた。ハリスは、「根本的な原因を緩和するために、これらの国々への民間投資に関するイニシアティヴを主導する」責任を与えられた、と元米移民帰化局長官で、現在は移民政策研究所に在籍するドリス・マイスナーは述べている。

この取り組みの一環として、ハリスは、3カ国の民間セクターへの関与に対して合計52億ドル超を支出すると発表した。ホワイトハウスによれば、この公約は50以上の企業や団体から寄せられたもので、メタ、エルサルヴァドル第2位の銀行バンコ・クスカトラン、ターゲットなどが含まれる。

2021年、ハリスが副大統領就任後初の外遊でグアテマラを訪れた際、潜在的な移民に対して鋭い警告を発したことで波紋を呼んだ。「アメリカとメキシコの国境への危険な旅に出ようと考えているこの地域の人々にはっきりと言いたい。来ないように、来ないように」。この声明は、進歩主義派や移民擁護団体の一部から批判を浴びた。

南部国境に対するバイデン政権の広範なアプローチから、ハリス戦略がどのようなものになる可能性があるかが見えてくる。バイデン大統領が、移民が国境を通過する頻度が高い間は亡命を求めることを禁止するという物議を醸す大統領令に署名した後、6月の不法越境は、3年ぶりの低水準に落ち込んだ。この大統領令は「バイデン大統領によって制定された最も制限的な国境政策であり、トランプ前大統領が2018年に行った移民遮断の取り組みと呼応するものだ」とACLUは述べている。国境を越える移民は、過去最高レヴェルにまで急増していた。昨年、国土安全保障省は2000年以来、国境での月間移民数で最高を記録した。

マイスナーは、「バイデン政権は、効果的な取締り政策と同時に、私たちが移民の国であることを認識し、移民が継続できるような政策を打ち出そうと懸命になっている。そのバランスがどのようなものであるかは、まだはっきりしていない」と述べている。

カリフォルニア出身、元州司法長官、移民の子供として、ハリス自身の経歴が移民問題に対する彼女の視点を形成してきた。マイスナーは、「カリフォルニアはもちろん、現在も将来も移民によって完全に形作られている。ハリスは、個人的にも、仕事上でも、自身の経験からこれらの問題を強く把握していることは間違いない」と述べている。-クリスティーナ・リュー筆

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