情報の海におぼれず、情報の森から離れず、批判的知性のネットワ ークを !
スポーツウォッシングに負けず、戦争と平和を考える8月に!
●Welcome to KATO Tetsuro's Global Netizen College! English is here!
2024年8月1日 ●猛暑が続きます。地震が多く、地域によっては集中豪雨などの災害も。8月は、日本のメディアでは、集中的に「戦争と平和」が扱われる季節です。テレビでは、NHKをはじめ各局が特集番組で歴史ドキュメンタリーやドラマを放映してきました。
ところが今年は、ETV特集やBSスペシャル番組はあっても、全体としては少ないようです。8月6日の広島や9日長崎原爆投下日が、パリ・オリンピックと重なって、パリからの実況中継が、各局の夏の放映のメインとなっています。
巨大スポンサーであるアメリカ・テレビ局の スポーツ番組編成に合わせ、世界的な気候変動のもとでも、アスリートたちの心身を酷使しています。2021年の東京オリンピックも、無観客でしたが、メディアの上では、各国別のメダル獲得競争、特に日本選手の金メダル獲得に焦点を合わせた番組編成になりました。
戦争の悲惨さ、核兵器の脅威も、日本の東アジアへの侵略責任も、「メダル・ラッシュ」「ガンバレ、ニッポン」の歓声の陰に隠されました。オリンピック開催は、本来都市が招致するものですが、商業化し肥大化する中で、世界の映像ネットワーク収入と開催国の財政援助がなければ運営できず、政治経済ばかりか外交的・軍事的性格をも併せ持つものとなってきました。
● しかも今回は、ウクライナとパレスチナと、二つの大きな戦争が続いているさなかのオリンピックです。
世界は「選挙の年」ですから、 為政者に都合の悪い政治や社会の歪みをスポーツを利用して覆い隠す「スポーツウオッシング」が、金メダル競争の裏側で進んでいるようです。足元のフランス政治が安定せず、アメリカでは大統領選挙で共和党大会から民主党大会への重要な局面です。テレビ討論とトランプ暗殺未遂で「確トラ」と言われていたのに、老人バイデンが副大統領カマラ・ハリスに民主党候補を「禅譲」し、激戦州でも拮抗して、混沌としてきました。
共和党大会ではプロレスラーがトランプを神格化し、イーロン・マスクが公然とトランプを支持しましたが、ハリウッドの芸能人ばかりでなく、やがて金メダリストの応援ツイートが話題になるでしょう。
労働党に政権が移ったイギリスの他、メキシコ、インドの選挙は終わりましたが、改革派が勝利したイランの大統領選の結果は、テヘランでのイスラエルによるハマス最高幹部暗殺で、和平に結びつくどころか、中東危機の拡大となりそうです。
事前の世論調査結果などから、現大統領が不正選挙で権力の座にすがりついているかに見える、ベネズエラの行方はなお不透明です。
● 日本の政界も、9月の自民党総裁選・立憲民主党代表選に向けて夏休みに入ったのか、アメリカ大リーグの大谷翔平の活躍とオリンピック協奏曲の陰で、2割を切るにいたった岸田内閣の支持率が、わずかに盛り返す珍現象。もっとも、さすがに岸田自民党総裁の再選はないと見通してのことでしょうが。
食料品など日常生活必需品の物価は、異常気象も重なって、値上げが止まりません。国民生活破壊が続きます。国会での政治資金規正法改正を中途半端にしてお茶を濁した、自民党の政治腐敗は留まるところをしりません。
● 裏金議員の多くが、次期参院選挙で公認されることになり、そこには1000万円のキックバックを受けた、東京オリンピック担当大臣橋本聖子も入っています。その冬季オリンピックのメダルの流れで議員になった堀井学は、選挙区内への香典配りで公選法違反、その原資が裏金だったようです。
能登半島地震のさいも東京で、初動対応が遅れた石川県の責任者馳浩知事は、東京で開かれた震災関係職員の会合で「低所得者が避難所に滞留している」と無責任な本音の吐露、さすがに金権自民党とスポーツ汚染の元兇、森喜朗の秘蔵っ子です。
統一教会癒着の元凶だった旧安倍派荻生田光一は、横綱照ノ富士の優勝パレードでオープンカーの真ん中にいます。こうした懲りない面々の典型が、参院岩手選挙区の広瀬めぐみ議員、立憲民主党・小沢一郎の足下で、小沢切り崩しのために登用され、同県選出初の女性参院議員となったのですが、自民党海外研修ではエッフェル塔など観光三昧、選挙区を離れた東京では赤いベンツで不倫発覚、ついには公設第二秘書への公的給与私消の詐欺疑惑で強制捜査です。
弁護士ですから、当然違法を知っての確信犯です。自民党を離党しても議員を続ける破廉恥犯ですが、恥ずかしながら、私の出身高校の後輩でした。日本の立法府の憲法に沿った浄化は、徹底的に進めるべきです。
● それでなくとも衰退著しい日本のジャーナリズムは、スポーツウォッシングで出番が少なくなっていますが、情報を受け止める私たちの方は、それに流されてはいられません。SNSまで広がった膨大な情報の海のなかから、自分にとって重要と思われるニュースやドキュメンタリー、論文や書籍を批判的に抽出して、日常的に知性を磨くのが、21世紀における市民の主体性のあり方です。
広島・長崎の原爆、空襲・敗戦と玉音放送ばかりでなく、引揚やシベリア抑留、焼け跡・闇市やGHQの占領政策、日ソ戦争・朝鮮戦争やビキニ水爆実験、優生保護法やハンセン氏病の戦後など、トピックとしては記憶に残っている歴史の一コマを、より深く掘り下げ、最新の知見でヴァージョンアップするのが、夏の学びの喜びです。
その素材は、インターネット上にあふれるほどに存在し、書物でより深く学びにも、格好の季節です。戦争の悲惨さを、自分の家族・親族や国民的体験から学ぶのも大切ですが、19世紀からの台湾・朝鮮・満州国と植民地支配まで広げ、大陸から南方まででかけて他国の人々を傷つけ虐殺してきた歴史も、正面から見据えるべきです。
● この間、本サイトでは、一昨年の加藤哲郎・小河孝共著『731部隊と100部隊ーー知られざる人獣共通感染症研究部隊』の延長上で、その100部隊にかつて所属し人体実験にも関わったという「旧隊員の遺志」による「匿名読者」からの資料・情報提供の手紙を、第4信まで紹介し、私たちとの対話継続と本格的資料の公開を求めてきました。
その後、予告された第5信はまだ届いていませんが、「100部隊=関東軍軍馬防疫廠」の人体実験・細菌戦について、私たちの歴史学・獣医学・政治学からの研究に「匿名読者」からの第4信までの情報も批判的に取り入れて、小河孝・加藤哲郎・松野誠也共著『検証・100部隊ーー関東軍軍馬防疫廠の細菌戦研究』(花伝社)という新著を、8月末に刊行します。
「満州事変」から敗戦に至る南京虐殺、三光作戦、毒ガス・細菌戦、従軍慰安婦など、日本軍の加害体験も、この夏の「戦争と平和」の思索の一部に、とりわけ「戦争を知らない世代」の知性が、採り入れてくれることを願います。