軍隊タブー・自衛隊を叱咤激励するメディア
アリの一言 2024年07月15日 | 自衛隊・軍隊
12日、防衛省は一連の「不祥事」で218人の大量処分を発表しました。処分項目は①特定秘密の不適切運用②パワハラ③潜水手当の不正受給④自衛隊施設での不正飲食の4項目。処分されたのは増田和夫事務次官、吉田圭秀統合幕僚長、酒井良海上幕僚長(写真中)などで、文字通り防衛省・自衛隊のトップクラス総倒れです。
しかし、防衛省・自衛隊の「不祥事」は最近表面化しただけでも、これだけではありません。
▶五ノ井里奈さんらに対するセクハラ(22年9月)▶宮古島付近の洋上に陸自ヘリ墜落(23年4月)▶岐阜市の陸自射撃場で訓練中に3人殺傷事件(同6月)▶伊豆諸島沖に海自ヘリ2機が衝突・墜落(24年4月)▶軍事企業・川崎重工の裏金接待(同7月)
そして、陸自、海自の靖国神社集団参拝など、旧日本軍との一体化を示す数々の事例(6月24日のブログ参照)。それは今回の一連の「不祥事」と無関係ではありません。
これまでも「不祥事」が相次いだ自衛隊ですが、今回は前代未聞の事態で、まさに自衛隊の存続そのものが問われています。
折しも岸田首相はNATO首脳会議で、5年間で軍事費43兆円、NATO並みのGDP2%に膨張させることや、NATO諸国との合同軍事訓練強化を宣言したばかりです。
ところが、この事態に対するメディアの論調はきわめて不十分、というより問題の多いものと言わざるをえません。
朝日新聞は、「すべてのうみを出し切り、組織の規律を立て直さねばならない。このままでは、防衛予算の大幅額、ましてやその一部を賄うための増税に、国民の支持は到底得られまい」(13日付社説)。
毎日新聞は、「今後、防衛力強化のための増税や、南西諸島への部隊配備などを実施するには、国民の理解が欠かせない。不祥事が続くようでは、災害派遣などで積み重ねてきた実績はかすんでしまう」(13日付社説)
東京新聞は、「防衛力を適切に整備することは必要でも、予算や権限、防衛装備が急激に膨張し、組織に緩みやほころび、驕(おご)りが生じているのではないか。…自衛隊発足から70年。国民の信頼を得られたのは、災害派遣や国際貢献などの活動を地道に積み重ねてきたからだ。安倍政権以降の軍拡路線は、自衛隊組織の持続可能性をも脅かす」(13日付社説)。
これらの論調の特徴は、自衛隊が「国民の理解・信頼」を得て「防衛予算の大幅増」や「防衛力整備」を行うためには、「うみを出し切って規律を立て直」さねばならない、そうしてこそ「持続可能な組織」になれる、というものです。これは大軍拡・基地強化の必要性を前提にした自衛隊への叱咤激励にほかなりません。自衛隊が憲法違反の軍隊であることをカムフラージュする「災害出動」で「国民の信頼を得られている」というのも政府戦略への同調です。
これほど自衛隊の腐敗が噴出しているのに、なぜ「自衛隊は解散せよ」と言えないのか。少なくとも「防衛予算を大幅に削減せよ」「合同訓練は中止せよ」と主張しないのか。
メディアだけではありません。私が見た限り、このかんメディアが取り上げた「識者」のコメント・論評で、「自衛隊解散」「軍事費大幅削減」を主張した人はいません。
これは新たな軍隊タブーと言わざるをえません。国が軍事国家化してくると、軍隊は不遜・横暴になり、メディアや「学者」は正面から軍隊を批判しなくなる。日本はすでにその段階にきているのではないでしょうか。