植草一秀の『知られざる真実』
2024年7月10日 (水) 大宣伝・印象操作・巨大選対
小池百合子氏にとって石丸伸二氏は文字通り救いの神。都知事選には56名が立候補したが主力候補は小池氏と蓮舫氏だった。反小池氏が蓮舫氏に集中すれば勝敗は拮抗したはず。
現に、小池氏292万票に対して石丸・蓮舫氏票が294万票だった。294万票を一人が獲得していたら小池氏は落選していた。
蓮舫票を引きはがす「第三の候補」が必要だった。「第三の候補」のなり手は石丸氏以外にもいた。AI技術者の安野たかひろ氏、医師の内海さとる氏だ。
この2名のいずれかを、石丸氏のようにメディアが大宣伝していれば、その人物が石丸氏の代役を務めただろう。
石丸氏が浮上した原動力はメディア大宣伝にある。しかし、石丸氏が「第三の候補者」である合理的な理由は存在しなかった。しかし、メディアは選別的に石丸氏に対して特別の対応を示した。
メディアにはマスメディアとネットメディアの二つがあるが、共通するのはどちらも巨大資本が支配力を有していること。石丸氏の引き立てが巨大資本の利害に合致したということ。
2008年以来、メディアが大宣伝を展開する対象は同じカテゴリーに含まれる。「対米隷属で新自由主義」がメディア大宣伝の条件である。
もう一つ、見落とせないのは石丸選対が大がかりであったこと。大がかりな選対を用意するには巨大な資金が必要になる。
巨大な資金が投下される巨大な選対が用意された。巨大な資金を用意した黒幕が存在したということ。
石丸氏の個人の力で大量得票を実現したわけではない。そのことを本人が自覚していないとすればおめでたい。「メディア大宣伝」、「印象操作」、「巨大選対」が得票激増をもたらした。
選挙戦術上、「印象操作」の賞味期限は投票日で構わない。投票日まで「好印象」を演出できれば目的を達成できる。しかし、投票日を過ぎると「印象操作」で見えなかった部分が見え始める。
元々、有権者は石丸氏をよく知って支援したわけではない。「印象操作」、「メディア大宣伝」、「巨大選対」に誘導されただけである。
投票日が過ぎて、「印象操作」で伝わらなかった部分が判明してくる。本人の力が「印象操作」を上回っていれば、投票日後も支持が増大する。しかし、石丸氏の場合は投票日が支持のピークになったのではないか。
人々との円滑なコミュニケーションを図ることが政治家として業績を積み上げる上で必要不可欠。このコミュニケーション能力の不足が露呈し始めたと見られる。
そもそも、石丸氏は安芸高田市の市長任期をまっとうしていない。市長任期を残すなかで、安芸高田市の市民から市長を辞職して都知事選に出馬することを強く求められたのなら、任期途上での市長辞職にも正当性があると言えるだろう。
しかし、そのような市民の声に押されて都知事選に出馬したわけではない。逆に、安芸高田市では石丸市政に対する批判が強まっていたと見られる。
また、市長選に出馬した際のポスター制作費用を踏み倒していたとの訴えが起こされ、最高裁で石丸氏の敗訴が確定した。議員から恫喝を受けたとの主張に対して事実でないとの訴えが起こされ、これも裁判で敗訴している。
石丸氏の市長辞職に伴う市長選では石丸路線を否定する候補者が新市長に選出された。石丸氏は都知事選を踏み台にして国会議員や県知事に就任することを目論見ていると思われるが、そうなると都知事選での訴えが何であったのかとの疑問も浮上することになる。
だが、石丸氏のおかげで小池百合子氏のマイナスイメージが極めて見えにくくなった。この面で小池氏は最大の恩恵享受者である。
この点までが石丸氏大宣伝戦略の目論見に含まれていたとすれば、小池3選アジェンダを構築したプロデューサーの腕は確かということになる。小池氏の学歴詐称疑惑はまったく消えていない。
また、神宮・築地再開発に関する官民癒着の疑惑も解消していない。小池氏に対する疑惑追及はこれから本番を迎える。この点を再確認しておく必要がある。
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