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古村治彦の政治情報情報・分析ブログ 2024/5/9

アメリカの無前提・無条件の支援がイスラエルを増長させ、中東の不安定化をもたらした:日本には「贔屓の引き倒し」という言葉がある

古村治彦です。

2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

昨年10月に始まった、パレスティナ紛争、イスラエルによるパレスティナ側への報復攻撃は半年を超えて継続している。その間にパレスティナ側の民間人の死傷者が増加し、その様子が連日世界中で報道される中で、イスラエルによる過剰な報復、この機会を使用して、二国共存による解決(two-state solution)を無効化しようとする動きに対して、批判が高まっている。これまで、イスラエルを無前提、無条件で支援してきたアメリカでも、国内世論はイスラエルに批判的になっていることはこのブログでも既に紹介した。アメリカ全土の大学での抗議活動で逮捕者が出ていることは日本でも報道されている。

 

アメリカのジョー・バイデン政権は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、自制を求めているが、イスラエル側は、アメリカが支援を止めることはないし、アメリカ国内にイスラエル・ロビーと呼ばれる、親イスラエルの強力な組織が複数あるといいうことから、バイデン政権の要請を無視してきた。バイデン大統領はネタニヤフ首相の姿勢に不満を表明してきた。そして、以下のような状況になっている。アメリカはイスラエルへの弾薬の輸送を停止した。そして、ハマスが戦闘停止の提案に賛意を示し、イスラエル側は提案内容に不満を示しながらも、交渉の継続を発表した。

 

(貼り付けはじめ)

米、イスラエルへの弾薬輸送停止 ハマスとの戦闘開始後初と報道 5/6(月) 0:33配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/d63cc6d470f4bd6fb499b4dc7b6ed03d097ba3cf

 

【ワシントン共同】米ニュースサイト、アクシオスは5日、米国がイスラエルへの弾薬輸送を先週停止したと報じた。複数のイスラエル当局者が明らかにした。昨年10月7日にパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以降、兵器の輸送を停止したのは初めて。

イスラエル政府は輸送停止に懸念を強めているという。全米の大学ではイスラエルの自衛権を支援するバイデン政権の対応に抗議するデモが続いている。

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●「ハマス、ガザ停戦案の受け入れ表明 イスラエルは「要求からかけ離れた内容」」BBC JAPAN  2024年5月7日

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1rv23v8j13o

 

パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘の一時停止とイスラエル人人質の解放にむけた交渉で、イスラム組織ハマスは6日、カタールとエジプトの仲介役に対し停戦案を受け入れると伝えたことを明らかにした。

 

ハマス関係者は「(交渉の)ボールは今、イスラエル側のコートにある」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの提案は「イスラエルの基本的な要求からかけ離れたもの」だとしつつ、交渉担当者による話し合いは継続されると述べた。

 

イスラエル国防軍(IDF)がガザ地区南部ラファの東側から避難するよう現地のパレスチナ人に指示をした数時間後に、ハマスは停戦案を受け入れると発表した。

ラファでの作戦では、数万人のガザ市民が影響を受けると考えられている。6日には多くの人がぎゅうぎゅう詰めの車やロバが引く荷車で移動した。

IDFは避難命令を出した後に空爆を実施した。ハマス関係者は「危険なエスカレーション」だとしている。

 

■停戦案を「承認する」と

ハマスは6日夜に声明を出し、同組織の政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がカタールの首相とエジプト情報局の長官に「停戦合意に関する提案を承認する」と伝えたことを明らかにした。

この提案に詳しいパレスチナ側の高官は、条件が満たされれば「敵対的な活動を永久に」終わらせることにハマスが同意したと、BBCに語った。

これは、ハマスが武装闘争の終結を熟考している可能性をうかがわせるものだが、それ以上の詳細は明らかにされなかった。

 

提案では、停戦は段階的に行われる。第1段階では、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人囚人50人(終身刑の囚人数人が含まれる)の釈放と引き換えに、ハマスの人質となっているイスラエル人女性兵士らを解放することが含まれる。

第1段階は42日間かけて実施される。この期間中、IDFはガザ内にとどまる。しかし、戦闘の一時停止が始まってから11日以内に、ガザ中部にあるIDF施設の解体を開始し、ガザを南北に走る主要ルート、サラ・アル・ディン通りや、海岸沿いの道路からIDFは撤退する。

停戦開始から11日後には、家を追われたパレスチナ人のガザ北部への帰還が認められる。

第2段階も42日間で、前出のパレスチナ側の高官は、「持続可能な長期的な平穏」とガザ封鎖の完全解除で締めくくられるとしている。

「イスラエルが停戦合意に応じるのか、それともそれを妨害するのか。ボールは今、(イスラエル側の)コートにある」とハマス高官はAFP通信に語った。

 

■イスラエルの反応

ハマスの声明を受け、ガザではお祝いムードが広がった。

しかし、イスラエル政府関係者の1人はロイター通信に対し、ハマスが受け入れるとした提案は、エジプトが提案した内容が「弱められた」もので、イスラエルが受け入れることのできない「広範囲におよぶ」決定が含まれていると述べた。

そして、「イスラエルが合意を拒否する側であるように見せかけるための策略のようだ」と指摘した。

イスラエルの首相官邸はその後、「ハマスの提案がイスラエル側の基本的な要求からかけ離れていても、イスラエルは交渉の代表団を派遣し、イスラエルが受け入れられる条件のもとで合意に達する可能性を追及する」と声明で述べた。

イスラエルの戦時内閣は同じころ、ラファでの作戦継続を決定した。「人質の解放、ハマスの軍事・統治能力の破壊、そしてガザが将来、イスラエルにとって脅威とならないようにするという、我々の戦争目標を達成するため、ハマスに軍事的圧力をかけるため」だとしている。

 

■アメリカ、合意実現への努力継続と

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、アメリカはハマスの反応を検討し、「我々のパートナー国と話し合っている」と記者団に述べた。アメリカはカタールやエジプトとともに、停戦交渉の仲介を試みている。

「我々は人質解放の合意がイスラエル国民の最善の利益になると信じ続けている」

「(人質解放は)即時停戦をもたらすだろう。人道的支援の動きも拡大できるようになるだろう。だからこそ、我々は合意に到達するための努力を続けていく」

昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに3万4700人以上が殺されたとしている。

同11月には、1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えにハマスの人質105人が解放された。

イスラエルによると、ガザでは依然、128人の人質の行方がわかっていない。

そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。

(貼り付け終わり)

 

アメリカのジョー・バイデン政権としては、ウクライナ問題よりも、パレスティナ問題について優先的に目途をつけたいと考えている。今年11月の大統領選挙を控え、各種世論調査で共和党のドナルド・トランプ前大統領に負けているジョー・バイデンは、まずは民主党支持者を固めたい。民主党支持者はイスラエルへの支援に反対が多い。民主党支持者を固めるには、パレスティナ問題が優先課題だ。また、全米各地の大学での学生たちによる抗議運動もバイデンにとっては脅威だ。彼らが今年夏の民主党大会において、激しい抗議活動を行えば、バイデン陣営と民主党にとっては大きな痛手だ。1968年の民主党大会の例を引くまでもなく、2016年の民主党大会で、ヒラリー・クリントンに反対する若者たちの抗議活動の激しさは記憶に新しい。バイデンとしては党大会までに、パレスティナ問題を何とかしたいところだ。そのために、イスラエル・ロビーの圧力を避けながら、イスラエルに対して、停戦に向けて圧力をかけるだろうと私は書いたが、そのような動きになっている。

 

更に言えば、そもそも論として、イスラエルをここまで傲慢にし、増長させて、結果として中東の不安定化を進めたのはアメリカである。アメリカが無条件にイスラエルを支援し続けたことが、イスラエルの傲岸不遜、選民思想丸出しの戦争国家にしてしまった。また、イスラエルの極右派は、アメリカが主導した二国間共存解決を反故にしようとしている。アメリカの面子など、イスラエルは全く気にしない。アメリカはイスラエルに利用され、虚仮にされてきた。

 

アメリカの世論も大きく変わろうとしている。無条件のイスラエル支援に対しては疑問の声、反対の声が大きくなっている。そうした声はこれまで「反ユダヤ主義的」として封じ込められてきたが、そのようなレイべリング(ラベリング、labeling)の有効性が小さくなっている。それほどにイスラエルの行動は酷いもので、国際的な孤立を招いている。そして、アメリカに対する反感も募っている。アメリカの対イスラエル政策を見直す時期が来ていると言ってよいだろう。

 

(貼り付けはじめ)

アメリカが中東の燃え盛る炎に油を注いだ(America Fueled the Fire in the Middle East)-イスラエルは、ますます大きくなる危険の中にあるが、その責任はテヘランよりもワシントンにある。 スティーヴン・M・ウォルト筆 2024年4月15日 『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/15/middle-east-war-crisis-biden-america-iran-israel/

 

2024年4月1日、テヘランにて、イスラエルによるシリアのイラン領事館への空爆を非難する抗議デモで、アメリカ国旗を燃やすイランの抗議者たち

シリアのダマスカスにあるイランの領事館に対するイスラエルの攻撃に対し、イランが無人機とミサイル攻撃で報復するという決定を下したことは、バイデン政権が中東をいかにひどく誤って扱ってきたかを明らかにしている。ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃する前夜に、この地域は「ここ数十年来で最も静か(quieter than it has been for decades)」だと自らを納得させてきた、アメリカ政府高官たちは、それ以来、悪い状況を、更に悪化させるような対応をしてきた。ドナルド・トランプ、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの各政権も多くの場合失敗している。

 

2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃に対するジョー・バイデン政権の対応には、3つの主な目的があった。第一に、イスラエルへの揺るぎない支持を伝えようとした。レトリック的に支持し、イスラエル政府高官たちと定期的に協議し、ジェノサイドの非難からイスラエルを擁護し、国連安全保障理事会での停戦決議に対して拒否権を行使し、イスラエルに殺傷能力の高い兵器を安定的に供給した。第二に、ワシントンはガザ紛争がエスカレートするのを防ごうとしてきた。最後に、パレスティナの市民への被害を抑え、アメリカのイメージと評判へのダメージを最小限に抑えるため、イスラエルに自制的な行動をとるよう説得してきた。

 

この政策は、その目的が本質的に矛盾していたために失敗した。イスラエルに無条件の支援を与えることは、イスラエルの指導者たちへのアメリカからの自制の呼びかけに耳を傾ける動機をほとんど与えなかったため、彼らがそれらを無視したのは驚くべきことではない。ガザは破壊され、少なくとも3万3000人のパレスティナ人(1万2000人以上の子供を含む)が死亡し、アメリカ政府当局者たちは、ガザの民間人が飢餓状態に直面していることを認めている。イエメンのフーシ派民兵組織は停戦を要求していると主張し、紅海の船舶を標的にし続けている。イスラエルとヒズボラの間の低レヴェルの紛争は依然としてくすぶっている。そして占領下のヨルダン川西岸では暴力が急増した。そして今、イランは4月1日の総領事館爆破に対して報復としてイスラエルに無人機とミサイル攻撃を開始しており、更に広範な戦争の可能性が高まっている。

 

アメリカ人はイランが悪の体現者であるということを聞き慣れているため、読者の中には、この問題全てをテヘランのせいにしたくなる人もいるかもしれない。たとえば先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙のトップ記事は、イランがヨルダン川西岸地区の不安をあおるために武器を「洪水のように大量に(flooding)」持ち込んでいると報じた。

この見方では、イランは既に炎上している地域にガソリンを注いでいることになる。しかし、この話にはさらに多くの要素があり、そのほとんどはアメリカの実情をあまり良く反映していない。

 

はっきりさせておきたい。イランは残忍な神権的政権(brutal theocratic regime)によって統治されており、私は同情することはない。しかし、その支配下で暮らし、アメリカの制裁による懲罰に耐えなければならない何百万人ものイラン人には同情する。イランの政権の行動の中には、例えばロシアのウクライナ侵略への支持など、非常に不快なものもある。しかし、ヨルダン川西岸(あるいはガザ地区)に小火器やその他の武器を密輸しようとするその努力は、特に凶悪なことだろうか? また、最近イスラエルが領事館を攻撃し、その過程で2人のイラン人将軍を殺害したことに対して、報復の決定は驚くようなものだろうか?

 

ジュネーブ条約によれば、「交戦的占領(belligerent occupation)」下にある住民には占領軍に抵抗する権利がある。イスラエルが1967年以降、ヨルダン川西岸と東エルサレムを支配し、70万人以上の不法入植者によってこれらの土地を植民地化し、その過程で何千人ものパレスティナ人を殺害してきたことを考えれば、これが「交戦的占領」であることに疑いようがない。もちろん、抵抗行為には戦争法が適用される。ハマスや他のパレスティナ人グループは、イスラエルの民間人を攻撃する際に戦争法に違反している。しかし、占領に抵抗することは正当であり、苦境にある住民を助けることは必ずしも間違っている訳ではない。たとえイランがパレスティナの大義に対する深い関与からではなく、独自の理由から支援を行ったとしても、それは間違っていない。

 

同様に、イスラエルが自国の領事館を爆撃し、イランの将軍2人を殺害した後に報復するというイランの決定も、特にイランが戦争を拡大する意図がないと繰り返し表明していることを考えると、生来の攻撃性(innate aggressiveness)の証拠とは言えない。実際、その報復はイスラエルにかなりの警告を与える方法で行われ、イラン政府がこれ以上エスカレーションするつもりはないことを示すように設計されていたようだ。アメリカとイスラエルの政府当局者たちが武力行使の際によく言うように、イランは単に「抑止力を回復(restore deterrence)」しようとしているだけだ。

 

忘れてはならないのは、アメリカは何十年もの間、中東に兵器を「氾濫(flooding)」させてきたということだ。イスラエルには毎年何十億ドルもの高度な軍備を提供し、アメリカの支援は無条件であると繰り返し保証している。

 

イスラエルがガザ地区の民間人を爆撃し飢餓に陥れても、アメリカからの支持は揺らいでいない。イスラエルが最近、アントニー・ブリンケン米国務長官の訪問を歓迎し、ヨルダン川西岸地区における、1993年以来最大規模のパレスティナ人所有の土地の没収を発表したときも、その支持は揺るがなかった。エクアドルが最近キトのメキシコ大使館を襲撃したことを非難しているときでさえ、イスラエルがイランの領事館を爆撃したとき、ワシントンは何の動きも起こさなかった。それどころか、国防総省の高官たちは支持を示すためにエルサレムに向かい、ジョー・バイデン大統領はイスラエルへの関与が「鉄壁(ironclad)」であることを強調した。イスラエルの高官たちが、アメリカからの忠告を無視できると考えるのは不思議だろうか?

 

権力が抑制されていない国家はそれを濫用する傾向があり、イスラエルも例外ではない。イスラエルはパレスティナ人よりもはるかに強力であり、更に言えばイランよりも有能であるため、パレスティナに対して罰を受けずに行動することができ、実際にそうしている。数十年にわたるアメリカの寛大かつ無条件の支援により、イスラエルはやりたいことを何でもできるようになり、それがイスラエルの政治とパレスティナ人に対する行動が時間の経過とともにますます過激になる1つの要因となった。

 

第一次インティファーダ[First Intifada](1987-1993年)のように、パレスティナ人が効果的な抵抗を動員できるようになったのは珍しい機会であった。イツハク・ラビン元首相のようなイスラエルの指導者たちは、妥協の必要性を認め、和平を試みることを余儀なくされた。残念ながら、イスラエルは非常に強く、パレスティナ人は非常に弱く、アメリカの調停者はイスラエルに一方的に有利だったため、ラビンの後継者は誰もパレスティナ人が受け入れられるような取引を提示しようとしなかった。

 

イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸していることにまだ憤慨しているのなら、もし状況が逆だったらどう思うかを自問してほしい。エジプト、ヨルダン、シリアが1967年の第三次中東戦争に勝利し、何百万人ものイスラエル人を脱出させたとしよう。勝利したアラブ諸国がその後、パレスティナ人が「帰還権(right of return)」を行使し、イスラエル・パレスチナの一部または全部に独自の国家を樹立することを許可することを決定したとする。加えて、100万人ほどのイスラエル系ユダヤ人が、ガザ地区のような狭い飛び地に閉じこもる無国籍難民(stateless refugees)になってしまったとする。そして、元イルグン(Irgun)の戦士や他のユダヤ人強硬派が抵抗運動を組織し、その飛び地を支配下に置き、新しいパレスティナ国家の承認を拒否したとする。更に、彼らは世界中の同調支持者から支援を得て、飛び地への武器の密輸を開始し、その

武器を使って近隣の入植地や最近建国されたパレスティナ国家の町を攻撃した。そして、そのパレスティナ国家が、飛び地を封鎖し爆撃することで応戦し、何千人もの民間人の死者を出したとする。

 

こうした状況を踏まえると、アメリカ政府はどちらの側を支持すると考えるか? 実際、アメリカはこのような状況の出現を許すだろうか? 答えは明白であり、アメリカがこの紛争に一方的に取り組んでいることを雄弁に物語っている。

 

このような悲劇的な皮肉は、イスラエルを批判から守り、次から次へとアメリカの歴代政権に、たとえ何をするとしてもイスラエルを支持するよう圧力をかけることに最も熱心だったアメリカ国内の個人や組織が、せっかく熱心に支援しても、実際にはイスラエルに多大な損害を与えてきた。

 

過去50年間、「特別な関係(special relationship)」がどこにつながってきたかを考えてみよう。二国家間解決(two-state solution)は失敗し、パレスティナ人の抱える問題は将来も未解決のままである。その理由の大部分は、ロビー活動によって、歴代の米大統領がイスラエルに意味のある圧力をかけることができなくなったからである。1982年にイスラエルが行った無策のままのレバノン侵攻(ヨルダン川西岸地区をイスラエルの支配下に置くという愚かな計画の一環)は、ヒズボラの出現につながり、ヒズボラは現在イスラエルを北から脅かしている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官たちは、パレスティナ自治政府を弱体化させ、ハマスへの密かな支援によって二国家解決への進展を阻止しようとし、2023年10月7日の悲劇を招いた。イスラエルの国内政治はアメリカ以上に偏向しており(これはある意味当然だが)、ロビーの大半のグループがことあるごとに擁護しているガザでの行動は、イスラエルの孤立国家(pariah state)への道を助長している。多くのユダヤ人を含む若いアメリカ人のイスラエルへの支持率は低下している。

 

この不幸な状況のおかげで、イランはパレスティナの大義を擁護し、核兵器保有に近づき、イランを孤立させようとするアメリカの努力を妨害することができた。もしアメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs Committee、AIPAC)とその盟友たちが自らを省みることができるのなら、自分たちがイスラエルに支援してきたことに愕然とするだろう。

 

対照的に、イスラエルの行動の一部を批判してきた私たち(反ユダヤ主義者、ユダヤ人嫌い、あるいはそれ以上の汚名を着せられるだけだった)は、実際には、アメリカにとってもイスラエルにとっても同様に良かったであろう政策を推奨してきた。私たちの助言に従っていれば、イスラエルは今日より安全になり、何万人ものパレスティナ人がまだ生きていて、イランは核開発から遠ざかり、中東はほぼ確実にもっと平穏になり、アメリカの人権と規則に基づく秩序の擁護者(principled defender of human rights and a rules-based order)としての評判も回復しただろう。最後に、もしこれらの土地が実行可能なパレスティナ国家の一部であれば、イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸する理由はほとんどないだろうし、イランの指導者たちが独自の核抑止力を持っていればより安全になるのではないかと熟考する理由も少なくなるだろう。

しかし、中東に対するアメリカの政策にもっと根本的な変化が起こらない限り、こうした希望に満ちた可能性は依然として手の届かないものであり、私たちをここに導いた過ちは繰り返される可能性が高い。 スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

 

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