<裏金>検察捜査の行方と今後の政局とは? | ワーカーズの直のブログ

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<裏金>検察捜査の行方と今後の政局

ようやく小物が2人捕まったが、まさか、これで終わりではないだろうな

 

これで終わりでは済まされない(雲隠れのまま逮捕された池田佳隆容疑者=左、揺らぐ最大派閥安倍派=右上、年の瀬に関係先〈池田容疑者事務所〉を強制捜査した=右下)/(C)日刊ゲンダイ

 

自民党派閥の政治資金パーティー収入裏金化事件は、ついにヤマ場に向けて動き出した。

東京地検特捜部は最大派閥・安倍派(清和政策研究会)に所属する衆院議員の池田佳隆容疑者(比例東海)と、政策秘書の柿沼和宏容疑者を7日に逮捕。いずれも容疑は政治資金規正法違反(虚偽記載)だ。池田の指示により、事務所ぐるみで証拠データの隠滅工作を図ったことが判明し、特捜部の事件では異例の日曜日の身柄拘束となった。自民は電光石火で党紀委員会に諮り、池田の除名処分を決定。トカゲのしっぽ切りに躍起だが、安倍派の真骨頂「数の力」の源泉だった裏金をめぐる疑獄が完全解明されなければ、弱者イジメの悪政に泣かされてきた庶民の留飲は下がらない。

販売ノルマ超過分のパーティー券収入を議員にキックバックしていた安倍派の裏金総額は、時効が未成立の2018年からの5年間で約5億円。池田は高額還流の2番手で、計4826万円の収入を政治資金収支報告書に記載せず、裏金にしたとみられている。収支報告書の作成義務は会計責任者の柿沼にあるが、証拠隠滅しかりで、虚偽記載についても池田の指示があったことは疑いようがなく、特捜部は共謀に問えると判断した。

5000万円超のキックバックを受け取ったとされる高額還流トップの大野泰正参院議員(岐阜選挙区)、3番手の谷川弥一衆院議員(長崎3区)も立件される見通しだが、司直の手はどこまで伸びるのか。

金額の多寡はあっても安倍派議員の大半がキックバックを受けている。パーティーを錬金術の道具化し、四半世紀にわたって裏金スキームをつないできたのは派閥だ。

元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士はこう言う。

「一部で報じられているように大野氏、谷川氏ともに規正法違反容疑を認めていれば、略式起訴され、罰金刑に処されるでしょう。起訴前に議員辞職すれば、原則5年間の公民権停止期間は3年に短縮される公算大。4000万円超のパーティー収入の虚偽記載などで略式命令が下された薗浦健太郎前衆院議員(自民党離党)と同じパターンです。1000万~3000万円規模の不記載をめぐる立件可否の判断は、特捜部にとっても悩ましいところ。収支報告書の不備を修正すれば済むような『形式犯』に検察権を行使するべきではないとの考え方は根強い」

検察内部では「4000万円超」を立件の目安にしたとされる。いわゆる「薗浦基準」だ。

「私が捜査に加わった日歯連事件では3000万円以下の闇献金は立件しませんでしたが、のちに検察審査会が起訴相当などの議決をした事案があった。法務検察として、そこは意識せざるを得ませんが、片端から挙げるわけにもいかない。もっとも、本を絶つために、派閥側の会計責任者だけでなく、実務を取り仕切る事務総長経験者が立件されるとみています。安倍派は還流廃止をいったん決めたものの、それを撤回した。いずれのタイミングも事務総長は西村康稔前経産相。正式起訴される可能性は高い」(若狭勝氏)

第2次安倍政権下で幹事長派閥だった二階派(志帥会)の裏金も億単位だ。

この際、一罰百戒は通用しないし、世論は納得しない。

 

容疑は政治資金規正法違反だがなぜ脱税を問わないのか

衝撃が走った安倍派事務所の家宅捜索(C)日刊ゲンダイ

 

安倍派を中心とする裏金疑獄は、規正法違反の疑いで捜査が進められている。しかし、それだけでコトは収まるのか。裏金の原資は、派閥の政治資金パーティーの収入。企業団体や個人が購入したパーティー券の代金だ。そのカネの流れが収支報告書にキッチリ記載されなければ、非課税の政治資金にはあたらない。所得として申告するのが筋だ。でなければ、脱税に問われなければおかしい。

立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)はこう言う。

「裏金事件をめぐる税法上の問題は大きく2点ある。まず法人税法違反の疑いです。パーティーを主催するのは、派閥や政治家と関連する政治団体で、おおむね『人格なき社団』として取り扱われるため、収益事業から生じた所得以外は課税されない。しかし、派閥のパーティーの収益率は9割前後に上る。実態はほぼ丸儲けで、イベント興行費と言っても過言ではありません。税率およそ3割の法人3税が課されるのは当然ですし、公益を装って私益を図る悪質性から、重加算税も課すべきでしょう。パーティー収入の半分が吸い上げられることになる」

収益率9割超の個人パーティーをやたらと開いている西村前経産相もアウトだ。収支報告書によると、2022年のパーティーの収入は総額1億1954万円に上る。

「もうひとつは、所得税法違反の疑いです。個人の懐に入った裏金は雑所得にあたる。国会議員は歳費ほか、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)など、政治活動を支えるさまざまな費用を支給されている。必要経費は十分に充当できることから、雑所得は全額課税対象とするべき。これも重加算税を課し、ネコババしたカネの半分は徴収していい」(浦野広明氏)

国税庁はいつになったら腰を上げるのか。インボイス制度に傾けるエネルギーを割けば、脱税摘発なんてアッという間だ。

 

安倍派潰しで虎視眈々、同罪なのに他派閥の勘違い

同じ穴のムジナ(岸田派のパーティーに出席し、歓談する麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長=左)/(C)日刊ゲンダイ

 

裏金問題に関して、岸田首相は他人事のような態度を取り続けている。

池田が逮捕された7日に官邸でぶら下がり取材に応じた岸田は、「大変遺憾なことであり重く受け止めております。池田議員については除名をする方針といたしました」と話した。「党として強い危機感を持って政治の信頼回復に努めなければならない」とも言っていたが、当事者意識がないように見える。

あくまで安倍派の問題だと考えているのかもしれないが、二階派も家宅捜索を食らったうえ会長の二階元幹事長や事務総長だった平沢勝栄元復興相が任意の事情聴取を受けている。他の派閥でも不記載は常習化していた。

岸田派も直近5年間で数千万円のパーティー収入が派閥の収支報告書に記載されていない疑いがあり、会長を務めていた岸田が聴取対象になってもおかしくない。なにより、不記載の問題では岸田自身も刑事告発されているのだ。

「今回、特捜部に安倍派が狙い撃ちされたことは、一種の党内抗争のように感じてしまう。総理は、最大派閥の安倍派が数の力をバックにあれこれ口出しするのが気に食わず、この機に取り潰しをもくろんでいるのではないか。不記載は他の派閥も同じなのに、岸田政権を支える麻生派、茂木派、岸田派の主流3派は不問なんておかしいですよ」(安倍派関係者)

もっとも、国民から見れば、裏金問題は派閥ではなく自民党全体の問題だ。その根底には自民党の金権体質、利権政治がある。

岸田政権では、2022年に薗浦健太郎前衆院議員がパーティー収入の過少記載で裏金をつくっていた問題で議員辞職。昨年9月には再エネをめぐる受託収賄の疑いで秋本真利衆院議員が逮捕され、昨年末は公職選挙法違反(買収)などの疑いで柿沢未途衆院議員が逮捕されるなど、「政治とカネ」の不祥事が相次いでいる。

「岸田首相は『政治とカネ』の問題でまったくリーダーシップを発揮してこなかった。裏金問題も検察任せで、党総裁として率先して真相解明し、国民に説明する姿勢がない。池田議員が逮捕されたら除名しましたが、状況の後追いでしかありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

逮捕者が出るたびにトカゲのしっぽ切りをしていても、本体が腐敗しているのだからどうしようもない。

 

何が何でも派閥パーティー維持利権政党の「政治刷新」茶番劇

岸田派もダーティー(C)日刊ゲンダイ

 

「私自身が党の先頭に立って国民の政治への信頼を回復すべく、自民党の体質を刷新する取り組みを進めてまいります」

年頭会見で岸田がこう言ってブチ上げたのが、「政治刷新本部」の設置。本部長は岸田だ。11日に初会合が開かれる見通しだが、茶番のニオイがぷんぷんする。

刷新本部のメンツは国会議員およそ30人。取りまとめを担うのは、岸田最側近の木原誠二幹事長代理。夫人の元夫の不審死事件をめぐる醜聞などで官房副長官を辞任するまで「陰の総理」と呼ばれていた。事務局長に浮上しているのが小倉将信前こども政策担当相。小泉進次郎元環境相ら複数の青年局長経験者もメンバー入りするという。若手を取り込んで“やってる感”を演出しようという意図がミエミエだ。

政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。

「刷新本部の設置そのものが、政治改革をヤル気は全くないというシグナルです。最高顧問は第2派閥領袖の麻生副総裁と派閥解消論者の菅前首相。ソリの合わない2人をトップにいただけばこじれるのは明白で、立ち上げた瞬間から機能不全です。メンバーに外部有識者の名前がちっとも挙がってこないのは、次々に断られているからでしょう。飾りだけの組織にヘタに関わり、批判の矛先を向けられたら目も当てられませんから」

岸田が裏金問題の再発防止策として挙げているのが、派閥のあり方のルールづくりとか、パーティーの現金使用の禁止や銀行振り込みの徹底。「政治とカネ」をめぐる問題の根源となっている派閥を解消するつもりはサラサラなく、その収入源のパーティーもほとぼりが冷めたら復活する気がアリアリだ。野党が規正法改正による厳罰化を求めているのに、「議員活動そのものに関わる話ですから、各党としっかり国会で議論をして結論を得ていかなければならない課題」とスットボケ。ポスト岸田を狙う高市経済安保担当相が「今でも厳しい法律だ。きっちり法律を守ることを徹底しなければいけない」と言っているあたりからも、利権政党の神髄がクッキリである。

「規正法が十分に厳しいのであれば、なぜ億単位の裏金をつくれるのか。ちゃんちゃらおかしい」(角谷浩一氏)

 

誰が見ても派閥を牛耳っていたのは森喜朗とその子飼い

事実上のボス(森元首相=左)、「共謀」に問われるのか(西村康稔前経産相)/(C)日刊ゲンダイ

 

派閥パーティーの収入を裏金化するスキームは、安倍派で少なくとも20年前から続けられ、慣例になっていた。派閥側で立件されるのが事務方の会計責任者だけでは、どう考えてもおかしい。派閥の指揮命令系統の解明と派閥幹部を共謀に問えるのかどうかが本丸だ。

そこで捜査の焦点になっているのは、いったん決まったキックバックの取りやめを、安倍元首相の死去直後の2022年夏に撤回して継続させた経緯。これを主導したのは当時、安倍派の事務総長だった西村前経産相だと6日、産経新聞が報じたが、安倍派関係者によれば、どうやら「西村主導」を裏付けるペーパーが存在するらしい。

「還流継続に至った経緯を記した議事録のようなペーパーを、安倍派の会計責任者が検察に提出しているそうなのです。西村さんは22年8月10日の内閣改造で入閣し、事務総長を交代しましたが、改造前に複数の幹部で協議した際には、すでに還流継続が前提となっていた。つまり、継続を決めたのは、西村さんが事務総長時ということになる。会計責任者はペーパー提出とともにそうした供述もしているようです」(安倍派関係者)

そして、もうひとつの焦点は、検察が安倍派議員らの事情聴取で執拗に問いただしているという、森元首相の関与である。

還流スキームは森が清和会会長だった頃には既にあったとされる。そのうえ、安倍亡き後の安倍派を実質的に牛耳っていたのは森であり、森の意を受けた子飼いの「5人衆」なのは誰の目にも明らかだ。

森は、安倍派の後継会長選びで、下村元文科相をパージし、5人衆をしきりに持ち上げた。会長代理だった塩谷座長が会長昇格を念頭に森と面談した際には、「カネはあるのか」と詰め寄ったとされる。岸田内閣の人事にも首を突っ込み、安倍派幹部の起用を促すこともあった。まさに安倍派のオーナー気取りだったのである。西村ら5人衆が、還流継続について森に相談していてもおかしくない。

共同通信記者時代から清和会を取材している政治評論家の野上忠興氏がこう言う。

「森さんは『お山の大将』じゃないと気が済まないタイプ。安倍さんがいなくなって事実上の派閥ボスですから、みな従わざるを得なかったでしょう。執念深いので敵に回したら大変ですし、逆に任せておけば人事のポストなど『よしなにしてやる』という空気だったのではないか。かつて清和会に所属していた議員から、『森さんは集金力拡大にとりわけ熱心だった』と聞きました」

池田を逮捕し、身柄を拘束したことで、「検察は、森元首相や池田が兄貴分と慕う萩生田前政調会長のことも詳しく調べられる。渡りに船」(検察事情通)だという。

 

安倍派崩壊、震災で生き延びたと言われる岸田首相の命運

自身は延命でニンマリ(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ

 

今月下旬に召集予定の通常国会は、「政治とカネ」一色になるはずだった。ところが元日に能登半島地震が発生したことで一変。震災対応で協力するため、与野党は一時的に“政治休戦”の状態にある。いまは被災地対応が最優先。野党側が求めていた「政治とカネ」がテーマの閉会中審査も開かれない見込みだ。

「岸田さんは胸をなでおろしているんじゃないか。通常国会では『政治とカネ』が徹底追及されて火だるまになるとみられていた。3月末の予算成立と引き換えに退陣という予想もあったのに、震災で延命したようなものだ。こうなると、9月の総裁選でまさかの再選もあり得るね」(自民党閣僚経験者)

岸田が何よりも優先しているのが、総裁選の再選戦略だ。そのために、最大派閥の安倍派に人事面などで配慮してきた。

だが、裏金疑獄で総崩れの安倍派は、もはや派閥の体をなしておらず、秋の総裁選に自前の候補を立てるなんて無理。自分たちのことで手いっぱいで、党内政局の主導権を握る余力もない。最大派閥が動かなければ、岸田降ろしは広がらないというのだ。

ポスト岸田の有力候補もいない以上、このままいけば岸田の再選が現実になってもおかしくないが、死角もある。安倍派がガタガタになった裏金疑獄で何人が議員辞職に追い込まれ、あるいは公民権停止になるのか。柿沢の事件もあるし、4月には複数の補選が行われる可能性が高い。

「補選で自民党が惨敗すれば、『やはり岸田ではダメだ』という声が党内で大きくなるでしょう。岸田首相は、どんなに支持率が下がっても、党内だけ見ていれば政権を維持できると考えて、派閥の力学を重視してきた。しかし、国民の声を無視し続けることはできません。4月の補選だけでなく、これから毎週のように地方議会や首長の選挙も行われる。そこで有権者から『NO』を突きつけられ続けたら、政権は持たない。岸田首相の命運は、どんなに長くても総裁選まででしょう。春から秋にかけて政局になるのではないでしょうか」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)

岸田が辞めても、自民党政権が続くかぎり「政治とカネ」の問題はなくならない。

 

前回記事

まさか小者で終わりではないだろうな<裏金議員逮捕>検察捜査の行方と今後の政局(上)(日刊ゲンダイ)

http://www.asyura2.com/23/senkyo292/msg/851.html

まさか小者で終わりではないだろうな<裏金議員逮捕>検察捜査の行方と今後の政局(中)(日刊ゲンダイ)

http://www.asyura2.com/23/senkyo292/msg/857.html

野党の腕の見せどころだ。