琉球新報の「沖縄と天皇」記事の問題点とは? | ワーカーズの直のブログ

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問題多い琉球新報の「沖縄と天皇」記事

アリの一言 2023年11月29日 | 沖縄と天皇

 

  

 

琉球新報は27日付2面トップの大型コラムで、「沖縄と天皇」と題し、ケネス・ルオフ米ポートランド州立大教授(日本近現代史)へのインタビューをもとにした記事を掲載しました。その内容はきわめて問題の多いものです。主な問題点を挙げます。

 

①天皇裕仁(昭和天皇)の戦争責任

 

ルオフ氏は沖縄には「昭和天皇に戦争責任があると言う人が特に多い」とし、「もっと早く戦争を終わらせることができたら被害を減らすことができたという考え方からだろう」と述べています。

 

裕仁が戦争を早く終わらせようとしたけれどできなかったかのように読めますが、大変な誤りです。自身の護身と天皇制(国体)護持のために戦争を長引かせ、沖縄(琉球)を「捨て石」にしたのは裕仁自身です。「近衛上奏」(1945年2月14日)の拒絶1つとっても明白です。そもそもアジア・太平洋戦争の「開戦詔書」を書いたのは裕仁であり、その責任から問わなければなりません。

 

②「天皇メッセージ」

 

裕仁がアメリカに琉球諸島の軍事占領を長期に続けるよう望んでいると表明した「天皇メッセージ」(1947年9月20日)。ルオフ氏は「恐らく昭和天皇は…日本の潜在主権を守ろうとしたのだろう」と述べています。

 

たしかに表面的にはそういう側面もあります。しかし、「メッセージ」の本質は、「昭和天皇にあっては、沖縄の主権の問題や「沖縄の安全」よりも、日本本土の防衛に主眼があったと見るべきで…沖縄を「日本の保護」の手段とみなす昭和天皇の基本的な考え方」(豊下楢彦著『昭和天皇の戦後日本』岩波書店2015年)の表明、それが「天皇メッセージ」です。

 

③「男系天皇」

 

天皇制の「男系男子の万世一系」についてルオフ氏は、「男女平等が世界標準になった今、男系天皇を守ることは世界的に日本のイメージを悪くする。もし男系天皇を守るとしたら、国際社会にどう説明するか」と指摘しています。

 

天皇制が男女平等に反している「世界標準」以下の制度であるという指摘は正当です。しかし、それは「日本のイメージを悪くする」から問題なのではなく、女性差別が基本的人権の重大な侵害だから容認できないのです。天皇制は人権侵害の制度であると指摘しなければなりません。

 

④現上皇明仁が果たし、徳仁天皇が引き継ごうとしている役割

 

最も問題なのがこの点です。ルオフ氏はこう言います。「沖縄は本土から離れていて日本の共同体の一員との意識が希薄な面もある。上皇さまは沖縄と本土の距離が離れないように国を統合する役割を努めていた。天皇陛下も上皇さまから沖縄のことをいろいろ学んでいるはずだ」

 

まさに「本土」の国家権力側からの見方です。これを沖縄・琉球民族の側から言えばこうなるでしょう。明仁は天皇時代、父親である裕仁の戦争・戦後責任を隠蔽するのに腐心した。とりわけ批判の強い沖縄で「天皇制反対、琉球民族独立」の声が高まらないように、何度も沖縄に足を運び、琉球は日本だ、琉球人は「日本国民」だという意識を植え付けるよう努めた。息子の徳仁にもそれを引き継がせた―。

 

沖縄のメディアであれば、どちらの立場に立つべきか明りょうでしょう。しかし琉球新報は、上記のように問題の多いルオフ氏のインタビューを無批判に掲載しました。そればかりか、記者の地の文で「上皇さま」など絶対敬語を多用し、「ご夫妻は沖縄戦の遺族と交流し、心を寄せ続けた」などと明仁夫妻を賛美しています。

 

こうした天皇(制)への拝跪は、もちろん琉球新報だけではありません。日本のメディア全体の宿痾です。が、とりわけ琉球新報、沖縄タイムスには、明治以降の天皇制の歴史に立脚した記事・論評を望みます。