「首相に解散権」は天皇の政治利用! | ワーカーズの直のブログ

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「首相に解散権」は天皇の政治利用

アリの一言 2023年04月27日 | 天皇制と政権

 

  

 

地方選後半が終わり、「解散・総選挙」が取り沙汰されるようになりました。岸田文雄首相は24日、「今、衆院解散・総選挙は考えていない」と述べ、メディアは大きく報じました。

 

道理に合わないことも慣習化すれば批判されることなく常態化する例は珍しくありません。「解散は首相の専権事項・伝家の宝刀」という言葉とともに流布している「首相に解散権」という俗説はその典型です。ことは国政の根幹にかかわる問題だけに、見過ごすことはできません。

 

憲法が「衆議院解散」について触れているのは2個所しかありません。

 

1つは、第69条「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」。

この条項に基づく解散が、いわゆる「69条解散」です。

 

もう1つは、第7条「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行う」の第3項「衆議院を解散すること」です。

この条項に基づく解散が、いわゆる「7条解散」です。

 

「解散権は首相にある」という俗説の“根拠”はこの憲法7条第3項です。

 

しかし、条文から明らかなように、7条は「天皇の国事行為」についての規定であり、内閣は「助言と承認」をするとされているにすぎません。首相が自らの判断(党利党略の政治判断)で解散することが「助言と承認」の枠を超えていことは明白です。

 

憲法学説でも、解散は7条では不可能であり69条によってのみ可能であるとする「69条限定説」があります。ただこれは学説上少数派とされています。

 

しかし、「7条解散」を合憲とする立場でも、「内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散は不当である」(芦部信義著『憲法』)というのが通説です。

時の政権による解散・総選挙はすべて「党利党略」に基づくものであり、憲法学会の通説からみても「解散は首相の専権事項」などといって首相にフリーハンドの「解散権」があるとするのは憲法蹂躙と言わねばなりません。

 

現憲法下でこれまで25回解散が行われています。このうち「69条解散」は4回しかありません(1948年、53年、80年、93年)。直近の30年間に行われた9回の解散は全て「7条解散」です。

 

故安倍晋三元首相は、『回顧録』で、自分が行った2度の解散(2014年11月、17年9月)を「長期政権を築いた」原動力として誇示しているそうです(25日付京都新聞、私は『回顧録』を読んでいません)。

 

百歩譲って「7条解散」が合憲だとしても、それが「天皇の国事行為」を利用した政権の政治行為であることは誰も否定できないでしょう。

衆議院解散とは、立法府第1院の議員を失職させる(首を斬る)ことです。これを行政府の長にすぎない首相が自由に行えることは、三権分立の蹂躙も甚だしく、独裁政権に道を開くものと言わねばなりません。安倍晋三氏が誇示するはずです。

 

この内閣の横暴が批判も受けずまかり通っているのは、「天皇の国事行為」という隠れ蓑があるからです。ここに、時の政権による「天皇の政治利用」の実態があります。

 

「(象徴)天皇制」は、国家権力にとって支配強化のために利用する意義がある一方、市民にとっては民主主義を蹂躙する害悪以外の何ものでもありません。「7条解散」はそのことを示す代表的なものです。