消費税コロナ安倍大恐慌の到来
12th Mar 2020植草一秀『知られざる真実』

コロナウイルス感染拡大についてWHOがパンデミックを宣言した。日本の確認感染者数は少ないが、その主因はPCR検査の少なさにある。安倍内閣が封じ込めの対象にしているのは感染拡大でなくPCR検査である。日本には11万強の医療施設があるが、PCR検査実施を決定できる医療施設は860程度しかない。しかも固有名詞が明らかにされていない。感染の疑いがある人は、まず帰国者・接触者相談センターに電話をして相談しなければならない。
相談できる要件は37.5度以上の発熱が4日以上続いていることなどである。PCR検査にたどりつくには、帰国者・接触者相談センターで、帰国者・接触者外来で受診する許可を得なければならない。全国に860という数は、1都道府県に換算すると18である。帰国者・接触者相談センターに帰国者・接触者外来での受診を許可された患者は、2月1日から3月1日までの1ヵ月間で、1機関当たり、たったの2.6人である。1ヵ月全体で受診を許可された患者が1機関当たり3人もいない。
帰国者・接触者外来がPCR検査を行う基準は「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査」2月25日「基本方針」https://bit.ly/39aZSWUである。日本でのPCR検査実施は超難関である。安倍内閣は感染拡大ではなくPCR検査を封じ込めることに全力を注いでいることが背景だ。日本でのPCR検査累計件数は1万に達しない。韓国では18万件の検査が実施され、イタリアでも4万件の検査が行われている。
検査を行うと患者を入院させねばならず、病床が不足し、医療現場が混乱するとの指摘があるが、軽症および無症状の患者には自宅での適切な療養を指導すればよい。安倍内閣の至上命題は五輪開催強行であり、すべてがこれを軸に運営されている。各種イベントの中止をほぼ強制しているなかで、東京マラソンや、名古屋、滋賀でのマラソン競技を容認し、聖火リレーまで強行しようとするのは、本末転倒を絵に描いたものだ。
五輪利権の重要な一角を占める主要メディアもこの矛盾をまったく追及しない。しかしパンデミックが宣言され、五輪開催は事実上不可能になりつつある。新型肺炎の致死率は2009年に流行した新型インフルエンザの10倍に達するとの見解も表明されている。五輪開催中止に関する検討を直ちに始動させる必要がある。
日本ではコロナ問題が表面化する前の段階で、すでに消費税大増税大不況に移行していた。昨年10-12月期の実質GDP成長率は年率換算でマイナス7.1%になった。昨年7-9月期実質GDP成長率もプラス0.1%(年率)に下方修正された。駆け込み消費がなかったのに増税後に消費が激減した。2014年の場合は一定の駆け込み消費があったが、今回は違う。日銀の黒田東彦氏が認識を完全に誤った責任は重大だ。
ここにコロナ問題の影響が加わる。日本経済の急激な悪化観測を背景に株価が暴落している。私は1月23日執筆の会員制レポートで内外株価下落予測を明記した。『金利・為替・株価特報』(TRIレポート)http://uekusa-tri.co.jp/report-guide/TRIレポートでは毎年、年次版レポートを一般公刊している。2020年度版TRIレポートが3月10日に販売開始になった。『低金利時代、低迷経済を打破する最強資産倍増術』(コスミック出版)
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株価暴落の延長線上には新しい投資チャンスが到来する。老後不安社会に打ち克つための方策を是非検討賜りたい。本書でも記述したが、私たちの老後年金資金を一括管理するGPIFの資金管理が杜撰(ずさん)である。昨年末から現在までの約3ヵ月間でGPIFが17兆円程度の損失を計上した可能性がある。GPIFの体制刷新が求められている。
GPIFの2019年末運用資産残高は169兆円である。GPIFは運用資産の詳細を公表していないから推計するしかないが、GPIFは2014年10月末に基本ポートフォリオ大幅変更を正式決定した。株式での運用比率を24%から50%に倍増させた。外貨での運用比率を23%から40%に引き上げた。株価と米ドルが底値にある時に、この変更を行ったのなら賞賛を浴びるが、安倍内閣がこの決定を行ったのは株価と米ドルが暴騰した直後だった。
最悪のタイミングでポートフォリオ変更を強行した。その結果、GPIFは2015年に10兆円を超す損失を計上した。昨年末の運用資金169兆円が基本ポートフォリオの比率で運用されていると仮定する。日本株式を日経平均株価、外国株式をNYダウ、国内債券と外国債券を日本10年国債、米国10年国債での運用と仮定し、為替レートをドル円レートで仮定計算すると、本年3月12日までに巨大な損失が計上されたとの結果が得られる。
国内債券で7800億円、外国債券で1兆1900億円の評価益が得られたが、日本株式で9兆4000億円、外国株式で9兆4000億円の評価損失を計上したことになる。合計で16兆8000億円の損失ということになる。GPIFが金融市場の動向を的確に分析して、株価下落が予想される局面で、先物取引などを活用して株価下落をヘッジしていれば巨額損失を回避できる。しかしGPIFにそのような資金運用能力があるとは推察できない。
GPIFは資産運用の詳細を開示しなくなっており、事後的に報告される数値で運用益と運用損失を把握できるだけが、ブラックボックスとなったGPIFの損失に対する懸念が拡大している。16.7兆円の損失はGPIF資金残高の約10%である。たったの3ヵ月で私たちの貴重な老後資金の1割が消滅してしまったとするなら、これは国家的な一大事だ。この資金があれば、消費税の税率を1年間5%に引き下げることができる。
拙著に記述したが、GPIFは資金運用を受託する金融機関等に年間400億円近い管理運用手数料を支払っている。受託金融機関は外資系の金融機関が多い。基本ポートフォリオを決定し、各資産をインデックス運用するなら、これほど巨額の管理運用手数料を支払う必要がない。GPIFは外資系金融機関への利益供与機関と化してしまっているのだ。
消費税が導入されたのは1989年度。消費税が導入された1989年度から2018年度までの31年間の消費税収累計額は397兆円である。これに対して、法人三税減収累計額が298兆円。所得税・住民税減収累計額は270兆円である。法人税と所得税の減税額合計は573兆円であり、消費税収累計額397兆円をはるかに上回る。生活の苦しい庶民からむしり取った400兆円の全額を大企業と富裕層にばらまいた上、さらに大企業と富裕層に175兆円の減税を実施してきたことになる。
労働者一人当たりの実質賃金は、第2次安倍内閣発足後に5%も減少した。国税庁発表の民間給与実態調査では年間を通して勤務した給与所得者の22%が年収200万円以下だ。年収400万円以下の給与所得者が55%を占める。所得の少ない人は収入金額の全額を消費に回さざるを得ない。そうなると、この人は収入金額の10%を消費税で巻き上げられることになる。
日本の消費税制度は庶民の生活を破壊する悪魔の税制だ。まずは直ちに消費税率を5%に戻すべきだ。米国では金融緩和が魔力を完全に失った。トランプの経済政策にも反応しない。安倍内閣は何もしていないが、対応が遅れれば遅れるほど日本経済の崩落は拡大する。
安倍内閣が日本経済を地獄に引きずり込むリスクが急拡大している。