今と違って薬学部は4年間。私は一人暮らし。部活は応援団に所属した。
同級生80人のうち半分は医学部を目指していた人で1年が終わるころには5人ほどいなくなっていた。私は、郷に入っては郷に従え、過去は振り返らない、現在を楽しむということで医学部に入りたいという気持ちはすっかり消えていた。
毎日が楽しかったが、応援団で一緒のゆきちゃんは毎日私に問いかけた。
「はるちゃん、これどう思う?」
わたしは当たり障りのないことを答える。生粋の八方美人なのでね。すると、会って数分でも、今まで仲良く話していても
「はいっ。今日はおしまい。じゃあね」となる。これが365日毎日続いた。
なんなの?馬鹿にしてるの?何が言いたいの?ちょっと苦手。
でもあるとき事件が起こった。ゆきちゃんとあっくんが応援団で弾劾されることになったのだ。理由は学問を優先させることは許されないという内容。彼女たちは理学部で忙しい。わたしも同類ではあるがふわふわしてるので特に責められることはなかったのだ。話し合いと称するいじめが始まった。その他大勢の人は次々とこころない言葉を彼女たちに浴びせる。ひどすぎる。
私の番が来た。いつもの私は空気を読んでそれらしいことをなんとなくいう。それでいい、それがいい。
頭が真っ白になった。
そして口から出てきたのは
『さっきから聞いてればよくもひどいことを仲間に言えたもんだ。意見をいうのはいい、でも飛べなくなるまで翼をもぎ取るようなそんなやり方は卑怯だ。私もこの部活をやめます。ゆきちゃん、あっくん、ごめんね。意見をいうのが遅くなって。』だった。
みんなはポカンと口を開けていた。
はじめて自分の意見を人まえで話したのだった。
ゆきちゃんが教えてくれてたこと、それは本音を言えよってことだった。
ふたりに言われた。『ありがとう。はるちゃんにわかってもらえて、はるちゃんにああやって言ってもらえただけで十分だよ』
今も人前で意見を言うのは緊張する。でも、大事なことは伝えるということは、ここから始まった。
☆後日談☆
20年ぶりに応援団の仲間と飲んだ。元・応援団の私は入れてもらった。
緊張した、だってあのあと私を辞めさせないための攻防が繰り広げられ、私はがりがりに痩せちゃったんだよね。
会ってすぐ『あのときはごめん』って口々に言われた。びっくりした。
でも私は応援団であったことに感謝してる。
こんな風でなければ、八方美人は卒業できなかったから。すべては必然なのだな。