「あーちゃん、わたしもしかしたら子供を作らなきゃいけないかも・・・」

「え・・・?な、何を言ってるの?」

「今、子供一人でしょ、だから・・・」

「い、いや今時一人っ子多いじゃないか、なんで!」

「あーちゃんには言わなきゃって思ってたの、それに子供を作ろうってなったら断れないし」

「そんな・・・そんなことって」
俺はそれ以上言葉を続けることは出来なかった、俺がどうこう言える問題でもない
香代子が子供を作ること自体に反対ではない、反対ではないが・・・子供を作ると言うことはってのが問題だった
俺は頭の中で何かが崩れていく音がした、そして何も考えられなくなった
そして香代子の胸で涙を流していた、なんとも言えない劣等感が襲ったからだ
そこから先は正直あまり記憶がない、ただ、ただ香代子を抱いていた獣のように・・・

俺が果てたあとは香代子の上でずっと動かなかった

「あーちゃん?」

「ん・・・」

「ごめんね・・・」

「謝られたら余計に虚しくなる・・」

「だって・・」

「もう・・いいよ」

「もし子供が出来ても会えるやろ?」

「子供が落ち着くまで3年くらいは無理かも」

「え・・・」

「あーちゃん待っててくれる?」

「待ったほうが良いんだよね?」

「待っててくれるなら嬉しい」

「・・・・・・・」

「あーちゃんなんで黙るの?」

「あ・・ああ、ごめん
 その間、一度も会えないの?」

「まだわからないけど
 もしかしたら私が会いたくなるかもだし」

「・・・・・わかった」
それ以上何も言えなかった
俺は香代子を抱きしめたまま時間が過ぎていく
とても長い時間、香代子の胸の中に顔を埋めていた

「・・・あーちゃんそろそろ」

「そだね」
子供を迎えに行く時間だ
俺と香代子は家を出る準備をしていたが、俺はなごりを惜しむように家を出た
そして香代子を車に乗せ子供のいる幼稚園の近くに停めた

「あーちゃん気をつけてね」

「うん・・」
俺はそのまま車を走らせ自宅へ戻った
家に帰ると由美子さんが声を掛けてきた

「どうしたの?何かあった?」

「なんでもない」

「ん~その言い方はなんかあったね」

「なんでもないって!」
俺は苛立ってた香代子の言葉が繰り返される
今日は寝れそうにない
その日の夜は沢山、香代子からメールが来た
気にしてくれてるのだろう
愛してる、離さない、ずっと一緒だよって言葉をいっぱいくれた
心配してくれてると思った
でも俺の頭から離れない事実
そして次の日に思い切って聞いてみた

「香代子、もし子供作るのならいつ頃?」

「まだ1年以上先の話だよ」

「え?そうなん?」
俺はすぐにでもと思っていた
だから物凄く苛立ったし落ち込んだ
でも1年以上先ならと俺の気持ちが少し落ち着いた
それでも心の中ではいつか・・・という考えが払拭できないでいるし、考えると胸が痛い
物凄く香代子に会いたい

「香代子、来週会える?」

「来週、生理・・・」

「いいよ、温泉でも行かない?」

「いいのかな?」

「いいよ、家族風呂でもいこうよ」

「うん」
エッチなしでも会いたいときは会いたい
その位、香代子が好きだし会う事で幸せな気分になる
そもそも香代子は俺と会っている時以外では、好きだとか愛してるという言葉はあまり使わない
正直、物足りない

「香代子ってあまり好きとか愛してるってメールや電話で言ってくれないよね?」

「だって・・・恥ずかしい・・」

「え?会ってる時のが恥ずかしくない?」

「ううん、会ってるときのが平気
 目の前にあーちゃんがいないから恥ずかしい」

「そうなん?」
そんなもんなんだろうか・・
俺は会っていないから言い合うのが普通だと思ってた
だからなのかたまに、香代子の気持ちが分からなくなるときがある
俺から聞いても、言わんでもわかるやろー?と返ってくる
それでも、メールでは言ってくれる時があるので、それが嬉しい

「ねぇ、あーちゃん奥さんに何か言われないの?」

「言われないと言うか応援されてる・・」

「奥さん本気なんかなー?」

「本気じゃない?俺と出会う前は女の子に興味あったみたいだしというか女の子としてたみたいだから」

「え?れ、れず?」

「そうだと聞いた事あるよ」

「びっくりした!いろんな人がいるんやねぇ」

「でも・・奥さんから迫られたらしていいからね(泣)」

「しないよ、ってか奥さんじゃ大きくならないから心配しなくて良いよ」

「わかった、心配しないどく」

「昨日ね、布団に入ったらあーちゃんの匂いがしたの、なんか嬉しかったー」

「嬉しいな、俺もなんか香代子を感じられるのほしいな~」

「うーん・・・パンツあげようか?(笑)」
胸につかえているものが完全に消えたわけではないけど、少しは楽になったかな
俺の中で香代子は必要不可欠な存在になっていた
きっと香代子がいなくなったら俺はどうなるかわからない
そんな思いもあるが、次ぎ会うまでのメールは楽しかった
翌朝、僕は朝食の準備をしていた

「勇士さん、おはようございます」

「あ、おはようメアリー」
結局メアリーはなんだかんだ言って僕の家に泊まった
おかげで僕はソファーで寝るはめになった

「そういえば親父達大丈夫かな?」

「勇士さんのご両親は海外でしたわね」

「うん、そうなんだけど」

「何かあれば連絡があるとは思うから大丈夫だと思うんだけどね」
と話をしていると突然家のチャイムが鳴った

「こんな早くに誰だよ・・・」
僕は玄関に向かい、扉を開けた

「父さん・・・」

玄関先には、顎鬚が長く、身長180cmを超える割腹のいい男と肌が白く、髪は白髪交じりの気品漂う女性が立っていた

「父さん、母さん・・・どうしたんだ
 イギリスにいるんじゃ・・」

「うむ、お前に話があってな、それで先にメアリーを向わせたんだよ」

「じゃぁメアリーに依頼したのって・・」

「その話もあってな・・・上がらせてもらうよ」

父の名は、綺羅n睦夫(キラムツオ)、仕事で母さんとイギリスにいたはず・・なのだが
母は綺羅妙子(キラタエコ)、品はあるのだが天然だ

「ゆうし~、元気だった?メアリーちゃんに手を出してないわよねぇ~?」

「な、なにを言ってるんだよ!」
父はリビングの椅子に腰を掛け、僕を見るなり話し始めた

「まず、なんでここに来たのか知りたそうだな?」

「あたりまえだ、メアリーの事も聞きたい」

「だったら話が早い、俺はこうなる事がわかっていた
 お前は知らないと思うが、家に残っている文献に今回の事が予言されているんだ」

「そんな物があったのか、んでそれには解決方法なんてものは書いてるのか?」

父は、文献に書いている内容を説明し始めた
それには、魔族は、ずっと地底にいた事、魔族が現れて人類を滅亡する事、現れる事で魔法と言うのが開放される事が書いてあったが、残念ながら魔族をこの世から無くす方法は記述されていなかった

「肝心な魔族を撃退する方法が分からないんじゃな・・・・」
勇士は説明を聞いて、納得はするが一方で落胆していた

「勇士おまえに渡すものがある。我が家に代々伝わる宝剣、光輪だ」
そう言うと父は布に包まれた長い物を差し出した
勇士はその長いものを受け取ろうとしたが想像より重く落としてしまう所だった

「おも・・・」

「ははは、勇士にはまだ使いこなせんな」
勇士は布から取り出すと全体的に黒光りする鞘で、鞘から抜くと、両刃で淡白い光を帯びている一振りの剣だった

「すごいな・・・でも重くて振れないよ」

「その剣はお前を守るがまずは使えるようにしなさい、銃では悪魔は倒せんからな」
話し込んでいる所に、メアリーと母がやってきてお茶とお菓子が出てきた
「難しい話はそこまでにして、ちょっと休憩しない?」
母は笑いながら横に座った

「ところでメアリーって何者?」

「ん?メアリー話ししていないのか?」

「はい、聞かれませんでしたので」

「勇士、彼女は魔女だ」

「ま、魔女~?」

「そうだ、それもかなり古い家系の一族のな」

「メアリーそうなのか?」

「ええ、もう私しかいないですけどね」
メアリーの一族は代々、魔女の血を受け継いでいるらしく小さい頃から魔法が使えていたようだ
その後4人は何気ない会話をしながら、これからの事や今までの思い出話をしていた。

「じゃぁ、メアリー以外の魔女・・・いや、ご両親は今どこに?」
メアリーは少し顔を下に向けて小さく言った。

「殺されました。両親は殺されると分かっていたようで、私を地下の秘密部屋に隠してくれました」
最初、メアリーはそれが誰か分からなかったと言っていたが、両親の部屋からメアリー宛の手紙を見つけそこに詳しい事が書いてあったそうだ

「しかし何で俺なんだ?親父にしろメアリーにしろ、俺以外に強いのは世界に五万といるだろうに・・・」

「いえ、魔族を滅ぼせるのは勇士だけです」

「何故、そんな事が言い切れるんだよ!」

「そのことについては俺から説明しよう」
父が横から割って入ってきた
「おはよ~
 昨日はごめんね寝てた・・・」
そう昨晩の夜いつものように香代子とメールをしていたのだが、また突然メールが来なくなりそのまま朝になった

「いいよ、少し心配したけどね」

「ごめんねぇ、布団に入ると眠くて・・・」

「俺が横で添い寝したいよ」

「そんなんされたら逆に寝れんよぉ、寝たら勿体無い」

「あはは、香代子に襲われそうだな」

「うん、襲っちゃう」
日々のメールは生活の一部になっていた
香代子のメールは何てことの無い普通の会話でも1通1通が俺にとっては幸せなのだ
この毎日のメールの幸せは誰にも分からないだろう
不倫という壁が一層メールへの幸せの糧になっているのかもしれない
そして3回、4回とデートを重ねてた
会うたびに俺が香代子に想う気持ちは高くなっていく
香代子はどうなんだろう俺の事どう思っているのだろう
そんなある日だった

「あーちゃん旦那がね1週間いないの
 うちの家に来ても良いよ~」

「本当に!嬉しいな」

「お昼作るから一緒に食べようよ」

「香代子の手作り食べれるのか!めっちゃ嬉しい」

「9時にうちの駐車場に着てくれたら待ってるから」

「わかった楽しみだよ」
初めて香代子の家に行く
嬉しい反面、香代子の家の中の状況もわかってしまう
それでも香代子が住んでいる一部に触れることが出来るのは心から嬉しい
香代子の家に行く前日は胸が高鳴ってなかなか寝ることが出来なかった
それでも何とか寝つき朝を迎える
いつもと同じように6時に目が覚め出かける準備を行うが、早く香代子に会いたい気持ちが抑えきれず少し早めに出た
車で向っていると、どうも約束の時間より30分程早く着きそうだったので香代子にメールを送る

「なんか30分くらい早く着きそう」

「まじでー分かった早く準備する~」

次の信号を曲がるとすぐに香代子の住むマンションだ

「ん?あれは・・・」
香代子が子供と一緒にあるいてる
子供を幼稚園のバスに送っているのが見えた
なんか、普段見れない香代子が見れた気がして嬉しかった
マンションの下に車を停め、俺は車から降りた
遠くから香代子が一人歩いてくるのが見え、俺は手をふる

「本当に早かったね」

「早く会いたかったからね」
香代子が微笑む

「旦那が車乗って行っているから、あそこに停めて」
俺は香代子の言われたとおりの場所に車を停める
そして香代子と一緒に家に向う

「どうぞ入って」

「お邪魔します」
結構広い、と言うより綺麗に片付けられていて綺麗だ
初めて香代子の家に来たが不思議な感覚だった
ここで香代子は生活をしていると思うと複雑な気分になる

「綺麗な家だね」

「あーちゃんが来るから片付けたんだよ」

「それでもちゃんと片付いているし綺麗だよ」
そう言いながら俺はソファーに座らせてもらった

「香代子はいつもどこで寝てるの?」

「和室だよ~、子供と一緒に寝てるの」

「へー旦那は?」

「あっちの離れた部屋」

「なるほど・・」
そんな会話をしていると香代子がソファーに座っている俺の所に来て背中を向けて上に乗ってきた
俺は香代子の体に手を回し抱き寄せる、香代子の背中に顔を押し当てその温もりを感じた

「シャワー浴びる?」

「うん」

「一緒に浴びよう」
そう言われ香代子に着いていき浴室に入る
ここで毎日、香代子はお風呂に入ってると思うと、ついいろんな所に目が行ってしまう

「あんまり見ないで」

「ん~見ちゃうよ」
二人でシャワーを浴びつつ洗い合う
そしてタオルで拭き合った

「あーちゃんこっち」
俺は香代子に誘われるまま部屋に入った
そこは和室で布団がある

「へへ、一緒に布団にはいろ♪」

「うん」
香代子の肌に触れている喜びを噛みしめながら俺はキスをする
俺は香代子の体を全て探るように手を這わせ、キスをしていた唇も頬から耳、耳から首筋へと移していく
香代子の口から甘い声が聞こえる
そんな香代子を見ているだけで俺は興奮し更に香代子を攻めていくのだ

「香代子・・愛してる」

「私も愛してる」
二人の興奮はMAXになる

俺は汗ばむ体を香代子に重なるように抱きしめキスをした

「あーちゃん、気持ちよかった?」

「うん、凄くよかった」

「へへ、嬉しいな」

「香代子だからだよ」
俺と香代子は愛を確かめる様に無言で抱き合う
そのまま眠りにつくのではないかと思う位の時間だった

「あーちゃんお昼たべよっか」
香代子が俺の耳元で囁いた

「うん、楽しみにしてたんだ」
香代子は布団から出て服を着てキッチンへと向う
俺もそれを見て服を着る
香代子がキッチンに立っている様子を俺は黙ってみていた

「あーちゃんじっと見られたら恥ずかしいよ」

「香代子が俺の奥さんだったら、こんな姿を毎日見れるんだろうなって見てた」

「やりにくいよ~」
俺は思いたったようにカバンからカメラを取り出した
そのカメラを動画に切り替え香代子の姿を撮っていく

「動画撮ってるの?恥ずかしいなぁ」

「だったらエッチしてるときは良いの?」
香代子は小さく頷く

「そっちはOKなのか!」
俺は笑いながら言った
香代子は手際よくお昼の準備を進め、テーブルに料理が並んでいく
その間も俺は動画の手は止めない

「あーちゃんどっちに座る?」
香代子はテーブルを挟んで座るか横に並んで座るかを聞いてきている

「ん~どっちが良いかな~、並んで座ろうか」
香代子は料理の皿を並べて置く
まだ俺が動画を撮っているのを見ると近づいてきてカメラのレンズを手で塞ぐ

「もう・・・食べるよ」

「あはははは、は~い」
俺は動画を止めて立ち上がりテーブルに座る
皿を見るとハンバーグと野菜が乗っていた
見た目かなり美味しそうだ
香代子も椅子に座る

「食べよ」

「うん、いただきます♪」
俺は香代子の作ったハンバーグにまず箸を持っていき口に運んだ
香代子は俺の様子をじっと見ている

「おいしい?」
俺は口の中で味を確かめていた

「ん~・・・・・・・」
少し間をとり悩んだ風にしてみた
実際には凄く美味しい、すぐにでも美味しいと言いたいのを我慢してわざと遅らせた

「めっちゃ美味しい、こんな美味しいハンバーグ初めてだよ!」
本音だった、香代子が心を込めて作ってくれたハンバーグだ美味しくないはずが無い
実際に物凄く美味しいのだ
その言葉を聞いて香代子はほっとしたらしい

「よかったぁ~、わたしも食べよ」
本当に美味しいのだ、好きな人に作ってもらったのもあるが、間違いなく今まで食べたハンバーグの中では最高だった
こんな料理が毎日食べれるのなら俺は死んでも良いと思うくらいだ
ご飯を食べ終わると香代子は珈琲を出してくれた
香代子は食器を洗っている
そんな姿を俺はじっと見つめ、もし夫婦だったらこんな幸せな生活をしてみたいと思っていた
だがこの幸せな気分が一気に転落する出来事がこのあとに待っていた
俺と香代子は布団に入りお互いを暖め合うように抱き合っていたのだが香代子の一言でパニックになったのだ

「あーちゃん、わたしもしかしたら子供を作らなきゃいけないかも・・・」
俺には心配事がひとつある
いつまで香代子とこんな幸せな時間が過ごせるのだろう

正直なところ俺は9年前、心臓の手術をしている心房細動というやつだ
WPW症候群ってのを俺は元々持っているけど、そのWPWが引き金となって心房細動が起きた
カテーテルアブレーションってやつで治療はしたけれど
結局、手術前に発作が治まって確実な幹部を見つけられなくて心房細動のみを治療した

結局WPWの根本的な完治までいたっていない
病院の先生からは、おそらくもう大丈夫、普通の生活をしても良いとのこと
走っても良いし、お酒も煙草も良いらしいが、流石に煙草は辞めろと言われた

もし次、発作が起きたらとりあえず救急車を呼ぶようにとの事だそうだ
それから9年間発作は起きていない
おそらく今は大丈夫だろう
まだ年齢的に衰えるのは早いだろうし体力アップをすれば良いことだ
だけど今から10年もすれば俺は50だ、確実に体は衰える
健全な人でも心臓発作が起きてもおかしくない年齢だ、正直言って怖い
念のため毎年、心電図の検査は受けているし結果も問題なしだ
主治医の先生からも何も問題は無いから普通の人と同じ生活でかまわないしきつい運動しても良いとの事

これからずっと香代子と恋人でいたい
香代子とも死ぬまで一緒だよとお互い約束した
どうせなら寿命で香代子に看取られながら死にたいかな
それまで俺は自分の体の管理はしっかりしている
香代子と出来る限り長く付き合っていたいから

そんな恐怖心を忘れさせてくれるのが香代子だ
今のこの香代子との幸せを手放したくは無い、だが心のどこかでいつか年を重ねたときに発作が起きるのではないかという恐怖がある
だから今、香代子との時間がとても大切なのだ
生き急ぐわけではないが、香代子との時間は俺の人生の中で一番大切なものになるだろう

香代子と会った帰りは一人車の中で考える

そしていつも頭の中で悲しげに流れる歌がある

「行きはよいよい、帰りは怖い・・・」
そう香代子との待ち合わせに向うときは今からの楽しい時間を思いながら行く
しかし、帰りはと言うと、こんなに寂しい思いをしながら帰るのかと
でも、その寂しさを振り払うように心の中で言い聞かす
(香代子だって同じ気持ちのはず、俺だけが寂しいはずがないんだ)

そんな考えが浮かんでは消えていく帰りの道で唯一の救いは香代子からのメールだった

「あーちゃん今日はありがとね、帰り気をつけて帰ってね」

この1通のメールが俺の心を満たす

そして家に帰り着くのだ、玄関を開け誰もいない家に一人椅子に座りメールを打つ

「ただいま、帰り着いたよ
 今日は本当に幸せな一日だったよ、ありがとう」

そして香代子からの返事を待つのだ

「おかえり~今から夕飯の支度だよー」
香代子とメールが出来ない時間がある、夕方から夜の22時の間この時間は香代子は子供の世話や家事もやっている
もちろん旦那もいる、普通の家族の時間だ

「もう、19時半か・・そういえば今日は由美子さん遅いんだっけ」
由美子さんはよく仕事で遅くなる、遅くなるときは帰宅するのは22時ごろ、それまで俺は一人で執筆作業をしたりテレビを見たり溜まっている食器を洗ったりして時間を過ごす
メールが来るはずも無い時間と分かっているものの、つい携帯を見てしまう自分が情けない
そんな時の時間はとてつもなく遅く感じる、香代子と一緒にいる時の時間はあんなに早いのに

「ただいまー」
由美子さんが帰ってきた

「ん~なんか寂しそうだね」

「そんなこと無いよ」

「今日は楽しかったんでしょ?」

「ん、うん」

「だったら良いじゃない、会えない時間が二人の愛を深めるのよ」
って由美子さん奥さんの言葉じゃないぞと突っ込みを入れたくなる

「何か食べた?」

「いや・・食べてない」

「なんで?」

「お腹空かないんだよね」

「それはあれじゃない?好きな人と一緒にいたから幸せで満腹」

「そんな事あるの?」

「さぁ?でもそんな事じゃないかと思ってほか弁買って来たから」
うちはほとんどと言って良いほど家庭料理とは無縁だ、だから香代子が夕飯の支度をするのを想像して羨ましく思ってしまうのだ
味気ない・・俺の夢見る事は食事が出てきて、料理一つ一つに美味しいだの、どうやって作ったのかだとか話しながら食事をするものだと思っている

そして夜のメールが来る
22時以降にメールが来るのだが、香代子が寝るまでの間メールのやり取りがまた楽しい幸せの時間だ
たまに香代子は早く寝てしまうこともあるが、それでもオヤスミのメールで一日を終われるのは幸せだ
明日はどんな幸せを感じる事が出来るのだろうと考えながら眠りにつくのだった
香代子のメイド服姿に俺はかなり欲情していた

「香代子・・・」
俺は香代子を抱き寄せベッドに押し倒した

「あーちゃん・・この格好に興奮してるの?」

「うん・・・すごく」

「恥ずかしいけど、嬉しい」
俺は香代子の胸に顔を埋めていたが香代子の手は俺の頭に回され、もっとしてほしい事を示していた
そこから俺は獣のように香代子を求め、香代子もそれに応えてくれた



「ふぅ・・熱い」

「あーちゃん頑張ったもんね」
香代子は俺の腕を枕にし横を向いていた
俺の体は仰向けだが顔は香代子に向け、息を整えながら香代子にキスをし両手で香代子を抱え込むように抱きしめた

「この二人の時間止まらないかな」

「だといいよね」

「ねぇ香代子、俺の事好き?」

「大好き・・愛してる」

「俺もだよ」
そんな会話をしながら、二人はとても熱いキスをする
香代子は人妻だし時間にも限りがある
その時間がどんな時間を過ごすよりも短く感じるのだ
だから二人は暇さえあればキスをしてお互いの気持ちを確かめ合う

「ねぇあーちゃん、奥さんには何て言って来たの?」
あ、あの件話しなきゃ・・

「香代子実はこの前ね、嫁さんに彼女いるでしょ?って言われちゃった」

「え?大丈夫なん?」

「大丈夫、なんかね浮気公認なんだって」

「えー!それって奥さんが強がってるんじゃ?」

「いや、俺もそれを確かめたんだよ、そしたら本気で良いって言ってた」

「なんて寛大な奥さん・・・」

「それにね、子供の恋愛を見守る母親の心境らしい」

「すごいね・・」

「俺もびっくりだよ」
そう言うと香代子は俺の顔をじっと見つめて動かない

「香代子?どうしたん?」

「あーちゃん今日はあと3回ね♪」

「え・・・が、頑張るよ」
と言いながら俺はバッグの中をいじりだした

「んじゃ秘密兵器を使ってみるか・・」

「なになに~」

「じゃーん」
俺はバッグからおもちゃを取り出して香代子に見せた

「わ~何これすごーい」

「ふふん♪今度はこれで攻めてあげる」
早速俺はおもちゃを使って香代子を攻めていく

「あと3回だからね、俺の体力を使わないようにして香代子を喜ばせないとね」
その後も俺はあの手この手で香代子を攻めていった


「香代子、俺我慢できない」

「いいよ」


こんな感じで結局俺は香代子の言った、あと3回に2回を残して達成できなかったのだった・・・

「うーん・・香代子、俺もっと体力つけないといけんね」

「無理しなくていいよ」

「でも、俺ももう40だしさ、弱くなってるな・・もし出来なくなったらどうしよう」

「エッチしなくてもあーちゃんがいてくれるだけでいいもん」

「本当に?」

「うん」

「でも、そうならないように私が鍛えるから」

「あはは・・・よろしく」
もしこれが普通のカップルだったら本当に仲の良い彼女と彼氏なんだろうけど
不倫という言葉が頭をよぎる

「ねぇ香代子、もしお互いに独身だったらどうなってるかな?」

「きっと一緒になってるよ」

「そう考えると落ち込むよな~、普通に外で二人で堂々とデートしたいもんだ」

「仕方ないよ不倫だもん」

「そうだよなぁ・・・」

「でも今この時だけは私はあーちゃんだけのものよ」

「365日24時間俺のものになってほしいよ」
そう言うと香代子は俺の顔を自分の胸に押し当てて抱きしめてくれた
香代子の胸はとても柔らかくそして暖かい
俺はなにか胸からこみ上げてくるのを感じていた
そして・・・泣いていた

ぐしゅ・・

「あーちゃん?どうしたん、泣いてるの?」

「あ、ごめん、なんでだろ涙出てきて止まんなくなっちゃった」

「大丈夫?」

「うん・・涙止まんないよ・・・香代子といつまでこんな幸せを感じれるのか考えてたら勝手に涙が出てきちゃって、俺・・・香代子と離れたくないよ」

「あーちゃん大丈夫だよ、私はずっとあーちゃんと一緒にいるよ」

「香代子を帰したくないんだよ、旦那と一緒のあの家に帰したくない」

「あーちゃん、何も心配要らないよ、わたし旦那とは絶対にしないし、したくないから大丈夫」

「うん・・・」
香代子は俺の涙を手でふき取り、そして両手で俺の顔を持ちキスをしてくれた
この時俺は心の中で、香代子への気持ちがどんどん大きくなっている事に気付いた
本気になってしまった・・・この想い止められん

「あーちゃん・・・もう時間だよ」

「やっぱり早いよね・・悲しくなっちゃうな」

「泣くのは私の前だけだからね」

「わかった」
俺と香代子はホテルを出て、待ち合わせの場所まで戻った
俺は車の中で香代子にキスをし、香代子と俺は車から降りた
香代子との別れ際にもう一度俺は香代子にキスをした

「じゃね、あーちゃん、帰ったらメール頂戴、心配だから」

「うん、わかった」