【256】からのつづき
高岡2泊目の夜が明け、朝食を済ませてチェックアウトすると、雨は降っておらず気温が高い。
今日はまず、高岡駅徒歩圏にある重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)を目指す。
昨日訪れた吉久も高岡市内の重伝建だが、高岡駅から半径1.5キロ以内には山町筋と金屋町の2地区の重伝建が500メートルほどの距離でほぼ並行している。
駅から歩いて巡ることができるエリアではあるものの、気温と湿度が上がってきているので、高岡駅から万葉線に3停留場乗って山町筋の北東端に近い坂下町で降りる。
停留場から3分ほど歩くと、同じく重伝建に指定されている埼玉県の川越を思い出させる土蔵造りの町並みが目に入る。
千保川にかかる鳳鳴橋を渡ると、そこは千本格子の町並みで知られる重伝建「金屋町」。
その名の通り鋳物で栄えたエリアで、加賀藩主前田利家が開町間もない高岡城下町の振興のため領内から鋳物師7人をこの地区に住まわせたのがその始まりという。
宿場町の旅籠のようにも見える千本格子の建物を眺めながら石畳を歩いていると、時折軒先に吊るされた風鈴が緩やかな音色を奏でてくれて、ひとときの涼を感じる。
駅を出てから1時間ほどで2つの重伝建を満喫して、昭和通りに立つ金屋バス停の時刻表に目をやると、次の便まで1時間以上空いている。
高岡駅までは1.3キロだから歩いてもわけないが、次に乗る氷見線が20分後に発車する。
当初予定していた次の列車は1時間15分後だから、ゆっくり駅に戻ってコーヒーブレイクでもいいかな、と思っていると後ろから空車のタクシーがやってきたので反射的に手を挙げた。
(つづく)