【256】高岡で一杯 | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

【255】からのつづき


越ノ潟で発車を待っていたデ7073号車は、往路に高岡駅~新吉久間で乗ったデ7071号車と同じ昭和42年製で、前後扉間にロングシートが配されたシンプルな造りの車内に客の姿はない。

発車すると、吊り掛けモーターのサウンドを響かせながら鉄道線区間を時速40キロ前後で快走する。

2時間ほど前に高岡駅にデ7071号車が入ってきたのを目にしたことで、衝動的に予定を1日繰り上げてスタートした万葉線の旅だが、乗り降りしながら越ノ潟まで行く間にデ7070形を4両見かけたから、超低床型連接車両のMLRV1000形と半々程度に運用を分け合っているようだ。

先ほど歩いて移動した新吉久~吉久間をデ7073号車内で過ごしたことで無事に万葉線を完乗し、あとは独り祝杯を挙げるだけ。

飲み屋街最寄り停留所は高岡駅一つ手前の末広町だが、四つ手前の急患医療センター前で降りて高岡古城公園の堀まで歩く。
1609年の築城当時の姿を残しているという堀を橋で渡り、坂道を登って城跡の広場で雨の上がった高岡の空気を吸い込む。
トイレに寄ってから護国神社の前を通り、高岡大仏に手を合わせたのち末広町につながるアーケード街を進むが人通りは少ない。
まだ17時ながら目星をつけていた居酒屋さんは予約で満席とのことで、近くにあったこちらのお店へ。
実は今日最初に乗った万葉線のデ7071号車が、こちらのお店の広告ラッピングをまとって走るかつての姿をNHK-BS「とことこトラム」で目にしていた。

案内されたカウンター席に腰掛け、まずは生ビールをゴクリとやって万葉線完乗を祝う。

食べ物は紙片に書いて注文する方式だったので、今日のおすすめの中から「氷見産 平目刺身」「本マグロ刺身」「ハマグリ酒蒸し」を選び、紙片に「平目刺 マグロ刺 ハマグリ」と書いて頼む。

ほどなく平目刺身が黒い丸皿に盛られて現れたので、すかさず箸を伸ばすと、濃い旨みをまとった白身とエンガワにビールジョッキがすぐ空になる。
熱燗をお願いして2番手のマグロ刺と味わうと心から安らぎ、白川郷まで足を伸ばした後の城端線・万葉線完乗という濃密な旅程だった1日をゆっくりと振り返りたくなる。
奥行きある店内は座敷が数組のグループ客で埋まり、16席あるカウンターは半分ほど空いているものの、私より後に来た客は断られていて、あと10分入店が遅れたら同じ憂き目にあったに違いない。

あぶないところだったと思いながらハマグリ酒蒸しで残りの熱燗を味わい、次の紙片を大将に渡す。
昨年10月の熊本市電、今年6月の函館市電に続いて万葉線を完乗し、約10カ月の間にこれまで乗らずじまいだった路面電車3路線に全て乗ることができた。

あとは一部区間を乗り残している岡山電気軌道、とさでん交通、鹿児島市交通局を完乗する日がいつか来るのだろうかと考えながら酒蒸しの汁を啜り、飲み干した熱燗に変わって富山の地酒「勝駒」を注文すると、先ほど渡した紙片に記した具材が盛り込まれたおでんが届く。
北陸名物でもあるおでんは、金沢ではカニの甲羅に身を詰めた「カニ面」や車麩などが有名だが、こちらのお店ではジャガイモや牛スジあたりが人気のタネのようで、定番の大根とおでんでは珍しいタケノコ、フキに加えて、普段は頼まない牛スジも頼んでみた。

これらを勝駒で流すと、高岡を訪れることができた幸せが改めてこみ上げる。
最後に、客の多くが頼んでいたミョウガ田楽で勝駒を飲み干してお会計。

まだ明るさの残る電車通りに出ると、旧型車両が駅からの坂道を下っていった。
(つづく)