過日、佐賀の幸姫酒造さんで買い求めた酒を土産に届けようと、地元にある日本酒メインの飲食店を久しぶりに訪れた。
こちらのお店は、基本的に直接取引のある酒蔵さんの日本酒を置いており、九州からは佐賀の矢野酒造さんのものが定番ラインナップに入っているので、先日矢野酒造さんを訪れた時に女将のNさんに酒蔵の写真を送っていた。
事前に連絡を入れてから家を出る準備をしていると、Nさんから「来月、矢野酒造の社長さん来店されますよ」とのラインが送られてくる。
残念ながらその日は予定が入っているが、取引のある酒蔵さんの経営者やスタッフがしばしばNさんのお店を訪れており、「作り手の見える日本酒」を提供しようとするNさんの姿勢が伝わってくる。
15時の開店時間を20分ほど過ぎてから店の階段を上って4合瓶を手渡し、まだ強い西陽が差し込むカウンター席の端に腰掛ける。
ビールなどは置いていないので、まずは水をグビリと飲んで、最初はこちらの酒から。
3月に店の常連さんたちと酒蔵見学に行った東京都福生市は田村酒造場さんの「嘉泉(かせん)」の特別純米酒夏酒バージョン。

これらの料理に合わせたのは、矢野酒造さんのこちらのお酒。
佐賀県の酒造好適米「さがの華」を麹米に使い精米歩合は60%、日本酒度−1.4、酸度3.2、アミノ酸度1.2に仕上がっている。

その名の通り、仕込み水に塩を加えて醸したという「ソルティ パンチ」。
佐賀県の酒造好適米「さがの華」を麹米に使い精米歩合は60%、日本酒度−1.4、酸度3.2、アミノ酸度1.2に仕上がっている。
思ったほど塩気は感じず、酒粕をはじめとした発酵食品の使い手であるNさんの料理によく合うフレーバー。
ちなみに柔らかなタッチのラベルの絵は矢野社長さん自らの手によるものとのこと。
うまい酒と肴でまったりした心持ちに酔いながら有給休暇の夕方の時間を味わっていると、映画を見たり旅に出たり酒を吞んだりして過ごした、この3週間を少し申し訳なくも思えてくるが、来月からの新天地での仕事に備えたひとときの休息だから、遠慮せずに楽しみたい。
協会701酵母を用いた無濾過生原酒で、佐賀県産の飯米「ゆめしずく」を使い、乳酸菌由来特有の丸みある酸を引き出している。
精米歩合75パーセントで低精白特有のボタニカルなニュアンスがありながら軽快でうまい。
あとから来られた2人の常連さんとお話させていただきながら吞んでいると、窓から入っていた強い西陽は夕焼けに変化し、やがて夜の闇に変わっていった。
(おわり)