【85】からのつづき
サフィール踊り子の1号車は、1人席が2つずつ並ぶ横2席配置で、シートを包み込むように高さのある背面板(バックシェル)が設えられていて、席ごとにプライベートな空間が創り出されている。

通路側に息子と縦並びで座り、暑さで消磨した体を休めつつ、ひじ掛けに付いた各種のスイッチを押してみたりして、プレミアムグリーン席の座り心地を楽しむ。
と、私の隣の席の女性がきれいな英語でシートのターン方法を尋ねてくる。
この女性は先ほど熱海駅でサフィールの入線シーンを撮っていた方なので、シートを180度ターンしたら熱海到着前から乗っていた後ろの女性とお見合いになってしまう。
はて、と思って2列前の席を見るとシートが40度ほど海側を向いており、なるほどあれをご希望かと合点がいったが、肝心の操作方法が分からない。
手元のスイッチにそれらしいものはないし、と思って背面板を見上げるとレバーがあり、引いてみるとシートが回る。
それを見ていた女性は、「サンキュー」と言って立ち上がり正面からレバーを引こうとするが、力が足りず座席の後ろに回り両手を使って何とかシートが海側を向いたものの、今度はバックシェルが私の席の側に膨らんで通路が狭まり、自席に戻ることができず戸惑っている。
リクライニングなどの操作が電気制御なのに対し、シートの回転は下部のロックを高い位置にあるレバーで機械的に解除するため力が必要となることから、こうした状況を招く訳だが、プレミアムを名乗るには相応しくないスマートさに欠ける構造ではある。
無事に海側を向くことができた女性は、時折スマホに向かって何かをレポートしており、もしかすると海外の鉄道系YouTuberなのかも知れない。
最後尾の運転席は、下り列車では前面展望を楽しむことができることから人気が高いそうだが、踊り子のルートではレールや運転操作を見るより、海側の車窓を眺める方が楽しい気がする。

中国語が飛び交う満席のプレミアムグリーン車でのイマイチ落ち着かない1時間18分を過ごして東京駅到着。