【33】からのつづき
気仙沼線は、前述の通り前谷地~柳津間が鉄道として残されているが、同区間はBRTも運行されており、12・13時台に気仙沼を発車するBRTは、途中の本吉までの便と前谷地行きが各1時間ヘッドで交互に運転されている(つまり気仙沼~本吉間は30分ヘッド)。
乗り込んだ前谷地行きは、列車からの接続がないせいか、客は私を含めて5人ほど。
発車するとすぐに赤灯の点いた2現示式の信号機が現れ、バスが近づくと灯火の下に「感知中」の文字が示された後、数秒で青に変わる。
単線だった軌道跡を道路にしたため、バスのすれ違いができない幅員であることから、「お見合い」にならないよう見通しの悪い区間などに設置されているようで、この先も何度か見かけた。
交差点に設けられている信号機は、普通の道路に設置されているものと同じ3灯タイプだが、BRTの接近を感知するとすぐに一般車側を赤にするシステムになっており、待ち時間はほとんどない。
バスは高台にある気仙沼の駅から坂道を降りていき、左にカーブを切りながら国道45号に寄り添っていくが、独立した空間を走るので、交差点以外では一般車などとの交通流混在は発生しない。
気仙沼では約190メートルだった標高が、2つ目の南気仙沼駅(実際は停留所)では、ほぼゼロメートルとなる。
このあたりは、河口の迫る大川と気仙沼湾に囲まれた中州のようなエリアで、1度全てが流された土地の気配が、整備・復旧されたインフラの表情からも伝わってきて胸がつまる。
南気仙沼を出ると橋梁で大川を渡り、気仙沼湾を左に見て走るものの、高規格な防波堤が続いていて、海はチラりとしか見えない。
トンネルを抜けて平地に入ると、運転席の機器から何やらアラーム音が聞こえてきて、すぐ近くの待避スペースに入ると、前方から気仙沼行きが向かってくる。

2現示式信号機のない区間でも、位置情報通信を使った「お見合い回避」が行われているようで、鉄道の信号装置に比べ安価で柔軟な運用が可能な機器を活用することができるのも、BRTの利点の一つと言える。
しかし、路線バスタイプのハイブリッドバスで運行されるBRTに2時間20分乗り続けるのは、さすがの私でもキツいし、気仙沼の海風を味わうことなく仙台に抜けるのはしのびない。
そこで、気仙沼線BRTを大谷海岸で下車して、ひと息つくことにした。
(つづく)