久保田酒造さん | 酔いどれパパのブログ

酔いどれパパのブログ

「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

今年2蔵目の酒蔵訪問は神奈川県相模原市の久保田酒造さん。


「相模灘」で知られる津久井湖の近くにある酒蔵さんで、以前から訪れたいと思っていた。


橋本駅北口バス乗り場から神奈川中央交通「橋07」系統「鳥居原ふれあいの館」行きに30分ほど乗車して、酒蔵さん最寄りの無料庵バス停(ちなみに橋本駅北口からの運賃は430円)で下車。

降りると目の前に酒蔵さんの看板があり、相模川の支流である串川にかかる平井橋に続く坂道を下ると、対岸にいかにも古くからの造り酒屋、といった感じの建物や煙突が見えてくる。


母屋兼販売スペースの立派な建物に入り、酒蔵見学の予約氏名を伝えると山側に少し歩いた蔵に案内され、その前では若手蔵人のAさんが待って下さっており、ありがたいことにマンツーマンで説明を受けながら見学を楽しませていただけることになった。

1844年の創業から手を加えながら使用しているという蔵の中に入ると、米を蒸す大釜が目に入ってくる。

釜の上に置いて米を入れる器の底には、ダミーの米がネットに入れて敷き詰められており、ひとつの穴から上がってくる蒸気を均等に回すための工夫がなされている。
続いては、酒造り中には絶対に入れていただくことのできない製麹(せいぎく)室へ。訪問日が今シーズンの仕込み最終日(甑倒し)だったので、神域とも言える麹室(こうじむろ)に入る幸運に恵まれたが、私のような心の汚れた人間が足を踏み入れていいのだろうかと申し訳なくなってくる。

数年前に、秋田杉でリニューアルしたばかりとのことで、杉の香りが鼻腔を心地よくくすぐる。リニューアルに際しては、台の下部分に空いた部分をあのマシンが活躍できる高さに合わせたというのが面白い。
麹室を出て、次は醪を仕込むタンクと圧搾機の鎮座するスペースへ。

タンクは米1トン分を仕込む大きなものが8本と、750キロのものが1本。
大きいタンクでは、一升瓶で約千本(1800リットル)の酒を造ることができるそう。
圧搾機は、あちこちの酒蔵さんで見かけるもので、これまで横から押して込んで絞るものだとばかり思っていたが、それだと端と中央にかかる圧力が均一にならないので、層になっている醪の入った袋の間には空気の出し入れで伸縮するゴムが挟まれていて、徐々に加圧する仕組みになっているということを今回初めて知った。

この方式の圧搾機は、製造メーカー(薮田産業株式会社)の名前から、蔵人さん達の間では広く「ヤブタ」と呼ばれているということも、今回初めて教えていただき、自分の知識の浅さを改めて思い知る。

最後に商品で満たされたタンクの並ぶかつて仕込み場だったスペースを抜け、瓶詰め場へ。

瓶詰め機は昭和感ある年代もので、時間当たりの充填数が限られそうだが、機構が単純な分メンテナンスや修理が容易で、長く使うことができているとのこと。

「実は今回初めて酒蔵の説明をさせていただきました」とおっしゃるAさんに「分かりやすいご説明で大変勉強になりました」とお礼を述べつつ販売スペースに戻って、試飲のお時間。
奥の3本以外は協会9号系酵母を使った「相模灘」。山田錦、美山錦、雄町の米違いを精米歩合や火入れ・アルコール添加の有無などによる違いで、この日は8商品がラインナップされていた。

手前の2種類は何度かいただいたことがあるので、今日は手前から4本目の美山錦の無濾過生酒でスタート。開栓から少し時間が経っているのかフレッシュ感は弱めで、無濾過にしては落ち着いており、シチュエーションを選ばず楽しめそう(意見は個人の感想です。以下同じ)。

持参のミネラルウォーターを挟んでから右隣の雄町純米吟醸を。雄町の表情がしっかり出ているものの、「雄町感」はそこまで強くなく、オマチスト以外にも飲み飽きない感じ。

水でリセットして奥から3本目の山田錦純米大吟醸にスイッチ。精米歩合35パーセントまで磨いていることに加え、協会18号酵母を使用しているためか明らかに他の「相模灘」とは違い、晴明さと旨みにわずかに複雑なニュアンスが顔をのぞかせる面白い一品。

とりあえず目星を付けていた酒を試すことができたので、後半は1番奥の粕取り焼酎にトライしてから、水を挟んで定番の山田錦純米吟醸で相模灘らしさを味わって試飲終了。

2番目に飲んだ雄町の一升瓶と、美山錦無濾過生酒の四合瓶を各1本購って、お世話になったAさんに見送られながら、久保田酒造さんを後にした。