(前ページからのつづき)
歩くほどに全体像が見えてきた退色の進みつつある赤屋根の平屋建ては、間違いなく岳南電車の比奈駅で、その佇まいは北海道あたりのローカル駅を思い起こさせるが、ここは上下合わせて1時間に3~4本の列車が発着する静岡県富士市の近郊エリア。

駅前には、先日上毛電鉄を訪れた際に中央前橋駅裏で感じた雰囲気を思い出させる雑居ビルが、炎天下に揺らめくように建っている。

改札を抜けてホームに上がり、岳南電車途中駅の標準仕様ともいえる丸パイプ骨材で組まれた上屋の陰でひと息つくと、富士山からの水が町を巡っているせいか時折吹く風が涼しく、ひと駅歩いて体に張り付いた汗が少しずつひいていく。


ほどなくしてやってきたモハ7003に乗車し、終点の岳南江尾を目指した。
(つづく)