過日、今年19・20蔵目の酒蔵訪問で訪れたのは長野県上田市。
北陸新幹線「はくたか」なら、東京から約80分で着くことができる東信地域の中心だが、最寄り駅に新幹線で直接乗り付けるほど酒蔵巡りのみに魂を捧げる境地には至っていない。
そう書くと、確たる意志を帯びて他の土地に降り立ち、しかるべき使命を果たしたのちに上田を目指したかのように思われるかも知れないが、東信行きを決めたのは実は私ではない。
JR東日本が昨年12月に開始した「どこかにビューーン」を使ってみようと、ゴールデンウィーク入り数日前に何となくエントリーしてみると、「田沢湖」「米沢」「越後湯沢」「軽井沢」の4駅の行き先候補が示され、よく考えずに承認すると、2日後に軽井沢に決定したとメールで通知がきた。
「どこかにビューーン」は、JALが2016年に開始した「どこかにマイル」と同様のシステムで、JREポイントを6000ポイント差し出すと、東京や大宮などのターミナルからシステムが選別したJR東日本管内の新幹線駅までの往復チケットが与えられるというサービス。
希望日と往路・復路それぞれの出発時間帯をネットで入力すると、行き先決定前に候補が4駅示され、気に入らなければ候補の組み合わせを変えることができるらしいが、どこであれJR東日本管内に未訪問の酒蔵はたくさんあるので、再シャッフルせずに軽井沢という配牌を手中にしたのだった。
往路に指定されたのはゴールデンウィーク終盤某日に東京駅を午前8時44分に発車する「はくたか555号」。指定された7号車は東京発車時点では半分以下の着席率だったが、大宮を出る頃には席が埋まり、車内放送でも満席の予約が入っているので空いた席に荷物を置くなと、お願いを装った命令が流れる。
東京から約1時間で軽井沢到着。
完全なプライベートなら軽井沢まで新幹線を使おうと思わないし、クルマであってもゴールデンウィークに軽井沢を訪れる愚行は致しかねるが、どこかにビューーンが最繁忙期の観光地に連れ出してくれた。
軽井沢到着後はいくつかのプランを用意していたが、新幹線の改札を抜けると無意識にしなの鉄道の券売機の列に就き、「軽井沢→上田」と記された薄っぺらい切符を手に、懐かしい車両が発車を待つ地上ホームに向けて階段を下った。
