13時間乗りっぱなしの旅(その2) | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

(前ページからのつづき)


広々とした長野駅のコンコースを抜けて善光寺口の駅前ロータリーに出ると、先ほどまでの賑わいが嘘のように閑散としており、横断歩道を渡って飲食店が並ぶブロックに入ると、さらに人の気配が薄くなる。


以前入ったことのある千石食堂に向かうが、ランチタイムは終了したようで営業しておらず、古い映画館が残るブロックをひと回りしてから、M君が長野への乗務時に訪れていたという小木曽製粉所で、中ざると山菜、ちくわ天を肴にそば焼酎の蕎麦湯割りで一杯。


小木曽製粉所は、長野、松本、諏訪、上田をはじめとして長野県内を中心に多店舗展開しており、群馬、埼玉、京都、神戸などにも出店しているそう。


駅前ロータリーに出入りするバスを見ながら一杯やれるカウンター席に並んで座り、蕎麦湯割りで腹を温めながらそばを手繰る。


冷蔵ケースには、黒澤をはじめとする長野の酒が数種類並んでおり、蕎麦湯割りから日本酒へのスイッチも考えなくはなかったが、すでに復路の列車の集合時間まで20分を切っており、そうした余裕はなさそう。


満腹になって駅に戻り、酒と食料を確保してから一行と合流後にホームに降りると、列車は据え付けられており、カメラを向ける人多数。


見ると、「踊り子」のヘッドマークが掲出されており、いわゆる幕回しのサービスが行われているようだ。往路と同じ座席に就くと、長野で離脱したメンバーが少なからずいるようで、所々に空席がある。

ちなみに今回のツアーでは、座席を回転して向かい合わせでの使用が認められており、われわれが指定された6号車ではボックス4席の2人使用が標準となっている。
発車時刻となり長野をあとに、185系は来た道を戻ってふたたびスイッチバックで姨捨駅に入線。

復路の姨捨は運転停車の予定だったが、往路の停車時間がダイヤ乱れの影響で短くなったことを考慮して乗降OKに変更されたので、ふたたびホームに降りると、下りホームに211系の普通列車が入ってきて国鉄型が並ぶ。
発車後、空いたボックスに独り座って足を投げ出し、長野駅で購った酒をなめながら善光寺平を眺めていると、かつて何度も青春18きっぷや信州ワイド周遊券を使い165系などに揺られて長野県を旅した頃を思い出す。
篠ノ井線の山あいを進んでいくと沿線にはカメラを構える方々がチラホラいて、SNSなどにシークレットだったこの列車の話題が上がり始めている。

姨捨から約20分で聖高原到着。
復路では、このほか下諏訪でも乗降ができてありがたいが、いずれも駅構内や周辺で買い出しが可能な店はなく酒や食料の補充はできない。

参加者は、ホーム上の仏像(聖観世音菩薩)に手を合わせたり、窓口で入場券を求めたり、駅舎を撮影したりとそれぞれに時間を過ごす。
20分停車ののち、ふたたび篠ノ井線を上り、塩尻から中央本線に入って17時28分に下諏訪到着。

すでに外は暗く風も冷たい。発車まで27分あるので、駅前のバス営業所を覗いたのち、淋しい商店街を歩いて甲州街道まで往復。

下諏訪を発車すると、立川到着までの3時間36分間は外に出ることはできないものの、向かい合せたシートを独占できるので疲れを覚えることはない。

回りはM君との仲が悪くなったのかと心配しているかも知れないが、彼も私も一杯やっているので声が大きくなりかねず、通路を挟んだ向かいの女性2人組に気遣って別のボックスに分かれているという面もある。

進むほどに夜が深くなり、前のシートに足を投げ出してジャンパーを体にかけると夜汽車の雰囲気。

10~20代の頃は、上諏訪夜行や急行アルプス、快速ムーンライト信州などの夜行列車でしばしば中央本線を行き来した。

したたか酔った頭でそんな時代を思い出しながら闇を縁取る窓を見ると、あの頃とは別人のように老いぼれた男の顔が映っていた。
(おわり)