13時間乗りっぱなしの旅(その1) | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日、乗り鉄の旅へ。


と言っても様々な路線や列車を乗り継ぐ訳ではなく、立川から長野まで同じ車両で往復するという、なかなかにオツな企画。


お座敷列車「宴」「華」や西武鉄道での貸切列車など、これまで何度かツアーに参加させていただいている清瀬の床屋さんを中心とした実行委員会による企画で、今回の目玉は残り1編成となった国鉄時代製造の185系。

以前にも185系乗車をメインに据えた企画に参加させていただいたが、風前の灯となったこの車両に乗る機会はこれが最後になりそう。

ちなみに前回の185系ツアーのもようはこちら。 

今回は、立川から長野まで姨捨駅や桑ノ原信号場のスイッチバックを味わいながら中央本線~篠ノ井線~信越本線をたどり、長野駅での滞在約1時間で折り返すという修業に似た行程で、「185系でゆく 13時間乗りっぱなしの長野の旅」と銘打たれている。


修業希望者の集まった立川駅のコンコースには穏やかにして妙な熱気が漂っているものの、これまで同様の企画に複数回参加している人が多いせいか、6両分の客が集まっている割には整然としている。


団体客や駅店舗関係者専用の出入り口から善男善女の修業僧たちが吸い込まれると、熱気の舞台は中央線下りホームに移ったが、相変わらず皆さん落ち着いていて、最近しばしば見聞きする国鉄特急型車両運行時の騒動とは無縁の雰囲気。


8時01分の発車2分前にお目当ての185系が5番線に入線すると一行は行儀よく車内に収まり、旅立ち前の期待感に浸る間もなく列車は立川駅をあとにする。


こうした臨時列車が運行されると、いわゆる「撮り鉄」の方々が大挙して押し寄せて、ホームの端などでカメラの放列をなすのが常だが、今回は事前の情報解禁を厳しく制限したようで、立川駅にも撮影名所のひとつである多摩川の橋梁周辺にも撮り鉄さん方の群れは確認されず。


列車は最初の運転停車駅である八王子でもカメラの洗礼を浴びることなく穏やかな雰囲気のまま発車。

高尾を過ぎると、上り勾配とカーブで高度を稼ぎながら山あいに入ってゆき、かつての急行列車にでも乗っているような感じがしてきて、徐々に旅の気分が盛り上がる。

今回もこのツアーに誘ってくれたM君と同じグループの車両に混ぜていただいており、周囲には6月のお座敷列車「華」でのツアーの際にもお見かけした顔が多い。

列車は相模湖を過ぎて上野原から山梨県に入り、四方津で11分の運転停車。往路は立川8時01分発長野13時39分着と5時間38分間の乗車で、その間13の駅と1つの信号場に停まるが、客が車外に出ることができるのは12時45分着予定の姨捨のみ。

そんな無聊の慰みか、四方津の運転停車中に車内オルゴール4種類が2回ずつ流されM君とデッキで楽しむ。

四方津を後に約1時間半をかけて山梨県内を横切るが、沿線の紅葉やスタッフの方が車内放送で教えて下さる車窓から見える廃線跡などを楽しんでいると、車外に出られなくても退屈しない。
勝沼ぶどう郷を過ぎて甲府盆地を眺めながら回りこむように平地に降りていく風景は中央本線JR東日本エリアの白眉で、何度味わっても飽きないが、私が国鉄特急型車両でこの区間を辿るのは、これが最後になるだろう。

9時56分に甲府に到着してドアが開くものの、弁当の積み込みのための開閉(いわゆる「弁積」)で、客の乗り降りは許されない。

発車すると積み込まれた弁当が手許に届けられ、包みを見るとM君が予想していた小淵沢は丸政さんの「高原野菜とカツの弁当」。
中央本線名物駅弁のひとつ「高原野菜とカツの弁当」は緑の箱のイメージが強いが、今回供されたのは発売50年を記念したリバイバルパッケージ。

中身はたっぷりの野菜と冷めてもうまいチキンカツ 、アクセントに茎サツマの漬け物やスパゲッティも添えられ、ビールやワインなんかの肴にも合う。
まだ腹は減っていないし、酒の供にするなら正午を回ってからと考えていたものの、長野到着後の短いインターバルでそばを肴に一杯傾けるなら11時29分着の松本までにはいただいた方が良さそう、との判断から早々にM君とともに箸をつける。

列車は、かつて185系で運転されていた特急「はまかいじ」のダイヤをトレースするように中央本線を下っており、同特急に何度も乗務した経験を持つM君は、その頃を懐かしんでいる。

上諏訪、下諏訪、塩尻で運転停車したのち松本到着。ここで10分停まってから、篠ノ井線の単線区間に踏み出していく予定だが、他の列車の異音確認の影響でダイヤが乱れているとのことで遅れて発車。

平瀬信号場、明科、西条、坂北と小刻みに運転停車を繰り返すが、振り子車体で疾走する特急や速度の遅い貨物列車、スイッチバックを交えながら各駅に停まる普通列車が山あいの単線を譲り合うように走る篠ノ井線だけあって、なかなか遅れが縮まらないまま、今回のツアーでメインにして唯一とも言える観光スポット姨捨に到着。
列車の遅れによって発車までのインターバルは短くなったものの、必要にして十分な時間は確保され、185系と善光寺平を眺めながらしばし癒される。
松本行きの普通列車がホーム下の本線を一旦通過し、スイッチバックを経て上りホームに入ってくると、ツアー客は車内に戻るよう促される。

警備に当たるJR社員や警察官に見送られて姨捨を発車すると、引き上げ線でスイッチバックしたのち本線に戻り、善光寺平に向けた下り勾配を進むが、次駅の稲荷山までの間に設けられた桑原信号場にもスイッチバックで入って特急列車の通過を待つ。

篠ノ井線に乗るのは約15年ぶりだが、桑ノ原信号場に立ち寄る列車に乗った記憶がないなぁ、などと考えているうちに発車してさらに勾配を降りてゆき、篠ノ井から信越本線に入って長野到着。

復路の集合時間までの約50分で一杯やるべく、M君と駅前に出た。
(つづく)