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二口からの仙台市営バスを秋保・里センターで降り、タケヤ交通の仙台西部ライナーに乗り継ぐと約30分で仙台駅に抜けることができる。
タケヤ交通は仙台市の南西部と接する柴田郡川崎町に本社を置き、仙台西部ライナーのほか、空港リムジンバスや貸切バスを運行しているが、バス好きの私でも実態はよく知らず乗るのも初めて。
定義を訪ねた後に1日2本運行の二口を攻め、その帰りにタケヤ交通に乗り継いで仙台駅に戻るプランは、M君のナビゲートがあってこそ。
終着点の定義と二口では適度な時間が確保されている反面、愛子駅と秋保・里センターの乗り継ぎは20分以内に収まっており無駄がない。
すでに先客の女性2人組が待っており、われわれ4人の待つ乗り場に10分ほど遅れて仙台西部ライナー仙台駅行きが到着。

車両は最新のエルガミオで、M君に言わせると、「つまらない」部類とのこと。トップドアのリエッセやガーラミオなど、多彩な車両を運用しているタケヤ交通の中では、「普通の路線バス」仕様のエルガミオは確かに趣味的な魅力には欠けるが、バリアフリーには優れている。
2人掛けシートが主体の車内は座席が7割近く埋まっており、次の天文台入口からはシニア集団が乗り込んでくるが、全員座れて立ち客はない絶妙な乗車率。
バスは蕃山丘陵を降りていき、国道48号愛子バイパスに入る。愛子バイパスは片側2車線最高速度60㌔の高規格道路で、途中の折立からは自動車専用道の仙台西道路となり仙台市街地の目抜き通りである広瀬通りに直結する。
このバイパスによって鉄道駅のない川崎町と仙台市街地間のアクセスが飛躍的に向上し、タケヤ交通のほかにも人口が増加している錦ヶ丘地区を営業エリアに持つ愛子観光バスが愛子バイパス・仙台西道路を使って仙台市街地に直結する路線を運行している。
土曜日の夕方に大都市中心部に向かっているにも関わらず、さしたる渋滞もなく快走し、仙台駅前には午後4時過ぎに到着。
あとは新幹線で東京に帰るのみだが、そこでもM君のコーディネートにより、もうひとつ楽しみが。

東北・上越新幹線のリバイバルカラーをまとったE2系が、この日仙台発16時34分発のやまびこに入ることを事前にM君が把握していたため、これで一杯やりながら東京に帰るべく先ほどバスの中でネットから10号車の座席を確保しておいた。
ありがたいことにM君も福島まで付き合ってくれるとのことで、横並びの席で乾杯。定義山での油揚げ以外何も食べずに6時間以上バスの乗り継ぎを続けていたので、何でもない缶ビールが格別にうまい。
駅弁のおかずをつまみに、夕景に変わりつつある蔵王を眺めながら日本酒にスイッチすると、リバイバルカラー編成のみで聴くことのできる昭和の車内オルゴールが福島到着を伝える。
M君とはここでお別れだが、列車は後ろに山形方面からのつばさ号を連結するためしばらく停車する。
その間にM君は売店に走り、日本酒(右の瓶)を差し入れてくれる。

発車時刻になってドアが閉まり、M君と福島の街が遠ざかるのを見ながら、差し入れてもらった日本酒の栓を開けた。
(おわり)