(前ページからのつづき)
伊香保温泉バスターミナルで八王子駅からのバスを降りて、石段街を目指そうと歩きはじめたが、すぐに伊香保のロープウェイに乗った記憶がないことに思い至ったので、方向を変えて乗り場に向かうと、近くの伊香保温泉バス停から関越交通バスの八王子行きが発車していく。

先ほど乗ってきた西東京バスと同じスタイルの観光ボディだが、セレガではなくいすゞガーラで「AIRPORT LINER」のロゴが入っているところを見ると、空港路線との共通運用のようだ。
ロープウェイ乗り場の不如帰(ほととぎす)駅に着くと、展望台に向かう見晴駅行きは出たばかりで次発は25分後。15分ヘッドで運行される900~1700の営業時間で唯一、前の便と30分間隔が空く1230分発をただ待つのは癪なので、ロープウェイは次の機会にして石段街を目指す。
昭和を感じる路地を抜けて石段街に出ると、3月に訪れた時よりも観光客の姿は多いが、海外からの旅行客がいないので、まだ本来の賑わいは戻っていない。

昼下がりの「石段の湯」にゆっくり浸かってから、火照った体を冷まそうと休憩スペースの椅子に腰掛けると、流れてくる涼風が心地よい。
最初は冷房が入っているのかと思ったが、開け放たれた窓に近づくと、山の香りを含んだ風が流れ込んできており、正面の山々を眺めながら天然の涼気に癒やされる。

窓辺に立つと右下に石段街が見え、その1番下には石段街口停留所に出入りする各社のバスを眺めることができる。
と、そこに群馬バス唯一のいすゞ大型路線車である1994年製3310号車が入ってきた。元東武バスのLV324である3310号車は93年式の生え抜きUA440と並んで、群馬バスの中でいつか乗りたいと狙っている個体。
13時10分に石段街口バス停に来たということは、伊香保と水沢地区を結ぶ水沢シャトルに使用されている可能性があり、それならば6分後に発車の伊香保バスターミナルから乗ることができる。
慌てて石段の湯をあとにし、引き切らぬ汗を拭いながら、バスターミナルにつながる坂道を走り始めた。
(つづく)