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お座敷列車「華」から勝田駅のホームに降り立ったわれわれ一行は、跨線橋を渡り常磐線上りホーム水戸方の一隅にある、ひたちなか海浜鉄道湊線の乗り場に向かう。
今回のツアーは「お座敷列車『華』で行く ひたちなか海浜鉄道キハ205貸切の旅」と銘打たれている通り、元国鉄キハ20である湊線キハ205への乗車が旅のメインに据えられている。
1117の発車5分前になると、軽快気動車タイプ2両の後ろにキハ205をぶら下げた3両編成の湊線列車が到着。
定期列車1両にツアー向けのキハ205を含む2両を増結した構成となっており、ツアーのメンバーは折り返し先頭車となるキハ205に集中している。
お決まりのサボのほか、団体専用であることを示す板も用意されており、スマホやカメラを向ける人も少なくない。

青年2人が窓側に向かい合っているボックスシートの通路側に相席させてもらうと、時間になり発車。
キハ205には2015年の桜の季節に乗ったことがあるが、あの頃と変わらぬ、おとなしめのエンジン音を発しながら勝田駅を後に、ゆっくりした速度で左カーブを進み常磐線と離れる。
と、カーブが終わらぬうちに最初の駅である工機前に到着。かつて日立グループだった工機メーカーの事業所最寄り駅であるため、この駅名があるが勝田駅からはわずか600メートル。
すぐに発車し、直線になって金上、中根、高田の鉄橋と停まりながら、車窓からは見えない那珂川に沿って南東に進む。
高田の鉄橋を前に、通路の向かいのボックスシートに座っていた親子連れが席を立ったので、そちらに移り、いとこのMくんと窓側に向かい合わせで座る。
勝田から約15分で湊線の中枢駅である那珂湊に到着。2分ほどの停車ののち発車すると、勾配を上りながら左カーブで針路を北東にほぼ90度変えて終点の阿字ヶ浦を目指す。
海岸線から一段入った高台を平磯、磯崎と海が近いことを思わせる名の小駅に停まりながら、のんびりと進む。
湊線の駅名標には、駅とゆかりのある名物のイラストを絡めてデザインされた漢字が示されており、駅ごとにそれらをスマホに収めている女性グループもいる。
勝田から28分で終点の阿字ヶ浦に到着。キハ205は、ここで20分停車したのち、那珂湊に向けて折り返す。
2015年に訪れた時には、阿字ヶ浦駅の近くにある堀出神社を参拝したが、令和に入って境内に「ほしいも神社」なるスポットが開かれたそうで話題になっている。
私とMくんは、駅前から発車していくスペースランナーRNのコミュニティーバスを見送りつつ、バスの話に興じながら駅の裏手に回ってキハ205をゆっくり眺めたりして時間を過ごす。
やがて発車時間が近づき、今度はキハ205ではなく、軽快気動車キハ3710に乗車。ロングシートに座って先ほど来た区間を那珂湊まで戻る。
阿字ヶ浦から12分で那珂湊に着くと、先頭車両だけが切り離されて定期列車として勝田に向けて発車していき、残ったキハ205とキハ3710の2両はツアー客を乗せたまま、構内移動を開始した。
( つづく)