自動運転バス | 酔いどれパパのブログ

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「お風呂」と「酒」と「路線バス」に関する駄文を書き連ねております。

過日、さがみ湖プレジャーフォレストで自動運転バスを体験。

バスと言っても、ご覧の通り少し大きめのバンといったサイズで、フランスNAVYA社製のARMAというモデル。

運行に当たるのはソフトバンク系のBOLDLY社で、すでに日本各地で自動運転の実証実験を繰り返してきており、茨城県境町では定常運行を開始してから1年以上が経過して住民の大切な足になっているほか、羽田空港に隣接する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」でも日常的に目にすることができる。

相模湖プレジャーフォレストでの運行も2019年以来約2年ぶりで、今回はBOLDLYの実証実験で最大となる15パーセントの勾配を含む約3.5キロメートルのコースを走る。

さがみ湖プレジャーフォレスト(旧相模湖ピクニックランド)は、山の斜面に各種のアトラクションやバーベキュー場、温泉施設が点在しており、それらをつなぐ園内周回路は勾配や曲線、一般車・歩行者との混合交通などが私有地内に詰め込まれているので、熟度の上がってきた自動運転の実験フィールドに適している。

実験の拠点となっている「さがみ湖温泉うるり」からARMAに乗車。車内は、前後に4人がけのシートが向かい合って配され、ドアのない側の壁には跳ね上げ式シートが3席用意されており、スキー場のゴンドラをひと回り大きくしたような印象。
ドアが閉まり、オペレーターさんが壁面の液晶パネルを操作すると、わずかなヒューっという音とともに発車。事前に読み込ませた3Dマップに基づいてGPSで位置情報を把握しながら 、必要に応じて加速、減速、停止を行う。

車体の前後上部には360度3DLiDARが設置され、6台の2DLiDARとともに車両周囲の歩行者や障害物を全方位で捕捉。動力は電気モーターで、負荷に応じて15キロワットと25キロワットを2輪と4輪を選択して出力している。

温泉施設周囲の歩行者なども問題なくクリアして、周回路に入ると時速20キロメートル近くまでスピードを上げるが、不安定な挙動もなく勾配をグングン登っていく。

車両の前後は同じデザインで4輪操舵であることから、どちらの方向にも進むことができるが、手動運転時にはオペレーターの着席位置が決められているので、バックミラーの背面方向に進む。
次第に高度を上げ、いよいよ最大勾配区間に入るが、モーターによるトルクフルな走りでストレスはない。

路傍の標識には12パーセントの勾配表示があるが、カーブの内側では勾配がきつくなり16パーセントに迫るという。同乗して説明に当たって下さったお2人のBOLDLY社員のうち、お一人は技術担当で、この勾配上でのカーブ通過に関するデータ入力にはご苦労されたとのこと。

そのご苦労の成果か、コース最高地点までスムーズに走破。
ここでしばしお話をうかがった後、今度は下り勾配を走行。こちらも問題なく進んだが、スタート地点の「 うるり」に数百メートルの地点まで戻ったところで急停車。

ご案内のお2人は機器の画面を確認したりスマホでどちらかに連絡を取られたりで慌ただしい。どうやら情報処理系に不具合が出たようで、急停車地点からは手動運転で移動する。

手動運転では、ゲーム機用のものを流用したコントローラによる操作が行われ、お2人には申し訳ないが貴重なシーンを目にすることができた。

先ほどの急停車時の衝撃は、通常のバス運行では発生してはならないレベルではあったが、異常時に「まず止まる」のは基本であり、フェールセーフが直ちに働いたことを示す。

実証実験は、そうした不具合や異常事象を洗い出すことも大きな目的であることから、今回の急停車に関する真因究明や解決方策の検討は本格運行に向けた重要なデータのひとつになるに違いない。

今国会(第208回通常国会)には、限られたエリアにおける自動運転バスのレベル4での運行を可能とする改正道路交通法案が提出され、4月13日に参議院本会議を通過、同日衆議院に送られ(同法案は参院先議)総務委員会で可決、19日に衆議院本会議で可決・成立している。

まだ課題は残されているが、安全の確保を大前提に技術面でさらなるブラッシュアップを図りつつ、いわゆる社会受容性などを高めながら自動運転バスが今後の社会課題解決につながることを期待したい。