自尊意識

心理学では、自尊心の維持高揚こそ、

精神的健康をもたらすという実証が蓄積されています。

しかし、現代社会における自尊心とは、

他者との比較による優越性に基づいているのです。

その結果、自尊心にこだわりを持つと、次の問題を抱えることになります。

 

①      競争の激化。

②      ストレス過剰になり、心臓疾患や神経症などの疾患の増加。

③      対人関係の破綻。

④      美徳の崩壊などの悪弊が指摘されている。

 

つまり、自尊意識が高い=健康という実証は、

間違いではありませんが正しくもないのです。

 

 

他者との比較

前述したように自尊心は、社会生活を送る上での、

他者との比較に基づいた優越性という資源です。

優位性の少ない自尊心の低い人は、脅威を受けると影響が大きく、

自尊心を維持し高揚したいという動機にもかかわらず、

今以上の損失を恐れ、新しいことへの挑戦を躊躇するようになります。

したがって、一見、慎重に見えますが、

常に敏感にチャレンジに対し、脅威に出会わないように工夫しています。

しかし、たとえ自尊心の低い者でも安心して駆使できる

戦略(BT学)を準備することで、自尊心の高い者と同様、

いや、他者との比較では成し得ない、自尊心を高めることができます。

それは、何を持っているかではなく、

どういった存在であるかという認識への移行になります。

 

1.       自己理解を高める学習を手がかりに、

自己を直視していくと、抑圧の解除が確認されます。

ただし、何ら学ばずに、自尊心の低い者が自己を直視すると、

自己中心性が強化され、社会的不適応に向かってしまいます。

つまり、不適応に至ることなく自己を直視するためには、

高い自己受容性を獲得していなくてはなりません。

 

2.       老年期において高い自尊心を維持している人は、

死の脅威に直面した時、若者でこそ手に入る優越性(物質・TO HAVE)

に基づく対処ではなく、存在の意味(精神性・TO BE)による

対処を駆使しようとします。

自尊心の低い人は、この移行がうまくできず、

もはや獲得し難い優越性(何を持っているか)に固執し、

自己の宿命を受け入れることができなくなります。

自己受容は自尊心と合わさって、顕著に、意味による対処を志向させ、

宿命(生病老死)の脅威を緩和させていきます。

 

※ TO HAVEとは、持つこととであり消費、所有すること。

例えば、物、権威、財産、地位、知識など。

TO BEとは、愛すること、信念に生きる、知恵などの精神性。

詳しくは「TO HAVE OR TO BE」(翻訳版「生きるということ」) 

エーリッヒ・フロムを推奨します。

 

3.       比較なき自尊心と自己受容の共に高い人は、

「長生きしたいが、死ぬことは恐くない」という、

両者の統合を象徴する理想的な思考を持つことができます。