ただ一人でいる退屈な時間は、けっこうなものである。

社会の流れについてゆけば、心は汚されて、

欲望に迷いやすく、人と会えば、本心が言えず、

嫌われたくないとする。

人に戯れ、物事を争い、恨んだり、怒ったり、

喜んで見せたり、心は少しも安定しない。

差別や好き嫌いがむやみに起こってしまい、

利害や損得の区別が休むまもない。

まるで、迷走の中に夢をみているようである。

むやみに走りまわることに忙しく、

うかうかと大事なことを忘れているというのが

社会の有様である。

せめて、外界の様々な縁と離れて、身を安静に、

俗事に関わらないで、心を安らかにするのが、

しばらく楽しむとうべきであろう。

 

退屈はいいものだ・・・。

 

(徒然草より)