家族力

家族は急速に変化していく社会の荒波に翻弄されている。

その中で個人化の時代を進み、家族の絆はしだいに弱まっている。

親を選べないことを揶揄して、何が出てくるかわからない

「親ガチャ」の言葉が流行っている。

また、夫婦は一度選択してしまえば、

解消に大きなエネルギーを必要とする。

家族とは愛情で満ち溢れているわけではなく、

嫌でも関係を断つことが難しい

不自由な関係性ということができる。

家族の絆は強いのではなく、微妙である。

 

家族が絆の象徴になったのは近代なってからである。

社会が近代化され、それまでの共同体から離脱する

自由を得たとき、人々は、安定した信頼できる関係性を家族に求めた。

そのため、家族は長期的な安定した関係になっていく必要がある。

日本は戦後の高度成長期になると

家族が生活保障と心理的よりどころを提供した。

この制度的家族を作り維持することが、

絆を保持することとイコールとみなせたのである。

そうして家族イコール「絆」の象徴になっていった。

家族の絆は、制度的であり信頼できる関係性と一致しない。

離婚や家庭内暴力の増加、愛し合って結婚したからといって、

信頼関係が続くわけではない。児童虐待や家族間の傷害、

殺人などにみられるように、親子が必ずしも信頼できる関係とは限らない。

家族だからといって自動的に絆が

形成されるわけはないことを理解しておく必要がある。