ブッタの真理のことば 感興のことば

中村 元訳 岩波書店

 

スッタニパータ(釈迦のことばを表した最も古い書物)と同じく、

釈迦の教えを集めて文字に残し始めた初期のもの。

釈迦はすなおな形で、人として歩むべき道を説いている。

釈迦自身は、みずから特殊な宗教の開祖となるという意識はなかった。

だから、数世紀後に仏教として出てきた込み入った教学的な言葉は全くない。

本書は、釈迦が語った生の言葉を釈迦に諭され、

対話するように読み進めることができる。

人間そのものへの深い反省が風格のある簡素な句に表現されている。

 

スッタニパータ全体の漢訳は存在しないため、

日本に伝来することもなかったが、

中村元先生の翻訳により、釈迦が感興をおぼえたとき、

ふと口にした言葉に出会えることは、

現代に生きる私たちの幸福体験であることに違いない。