シェークスピアに「人は泣きながら生まれてくる」という言葉がある。

人生で味わうそれぞれの人の、それぞれの悲しみは、

実は私たちの人生を豊穣なものにしているということを

考えさせられる言葉である。

もし、悲しみや憂い、挫折、失意、喪失体験などが一切ないとすれば、

人の幸福をつくるどころか、心を砂漠化してしまうのではないかと思う。

 

カウンセリングは単なる苦痛の緩和剤ではない。

カウンセリングは相談者の成長を進めていくものであるが、

人間が成長するのは常に苦悩の時である。

カウンセリングが単なる苦痛の緩和剤であるはずがない。

自己成長の過程において、自分の心の悩みが一時的に深まることもあるが、

その心の葛藤の中で、新しい気付きを見出して人間的に成長をしていく。

そして、そのプロセスにおいて苦痛が増すこともある。

 

ここで最も大切なことは、苦悩する時期は誰にでもあるが、

それは意味のある体験であって、そのボトムの過ごし方によって、

その後の人生における成長が大きく変わってくるということである。

このことを感受して、その時期の過ごし方に価値を見出しておく必要がある。

精神的な苦痛を伴っている時期というのは、

心の陣痛のようなもので、新しい精神性の誕生であることを忘れてはいけない。