カウンセリングの起源は、20世紀初頭のアメリカにあるといえる。
その始まりは職業指導、教育測定、精神衛生の3つにあり、
1908年、ボストン職業局の開設をもってスタートとされている。
これを始めたのはフランク・バースンズで、
その職業指導は、①個人の分析、②職業の分析、③個人と職業の結合(カウンセリング)
の3段階であり、これらの結果から、「丸い釘は丸い穴へ」のスローガンで進展された。
1930年代を最盛期として発展し、職業指導や教育指導の有力な方法として用いられるようになった。
このあと1940年代ころから、カウンセリングには新しい展開をみることができる。
診断の過程よりも治療過程が重視されるようになり、カウンセリングは心理療法に近くなっていく。
これが進展するなかで「相談心理学」という分野が独立していくことになる。
この動きの中心になったのがC・R・ロージァズである。
そして、日本においてカウンセリングが行われるようになったのは戦後になる。
最初に導入されたのは教育の場であった。
昭和22年3月、教育基本法・学校教育法が公布され、6.3.3制男女共学が規定され、
新学制による小・中学校が4月1日から発足した。
翌23年4月1日から新制高等学校が発足している。
この占領下におけるGHQ(連合国総司令部)指導による新学制を
通じてカウンセリングが導入されたのである。
学校のこれまでのカリキュラムの改造と、民主的社会生活の指導のために、
人間個人の尊重という考え方に基づくガイダンス運動を展開している。
しかし、その核心であるべきカウンセリングについては、まだ取り上げるに至っていなかったようである。
初期の段階においては、カウンセラーの養成機関もなく、
研修の場もないままに手探り状態でのカウンセリングであったに違いない。
耳なれないカウンセリングという言葉に対する周囲の
無理解のなかで進まなければならなかったのである。
このような時に、C.ロージァズの1942年の著書
(Counseling and psychotherapy・カウンセリングと精神療法)が
「臨床心理学」という書名で翻訳、刊行された。
この後、日本においてC.ロージァズの非指示的カウンセリングが土台となっていく。
しかし、カウンセリングという言葉もまだ、一部の専門用語であった。
当時は、カウンセリングの本来の意味は、
神経症や精神病の予防を早期発見に寄与する社会心理学などの
知見に基づいて行われていて、アメリカ経営学と管理手法のひとつとして
精神医学の延長線上にあると思われていたようである。
悩める人たちの相談に応じ、その悩みの解決に向けて援助するといった考え方は希薄であった。
現在、カウンセラーという言葉は、以前と違って耳慣れた言葉となっている。
養成機関や学習の場は増え、大学においても心理系の学部は増加している。
家族カウンセリング、結婚カウンセリング、職業カウンセリングなどがあり
、化粧品や商品の販売員までがカウンセリングという名称を用いている。
もちろんカウンセラーという名称は独占されているものではないので
誰でも名乗ることができるが、あまりに用途が広く、一人歩きをしすぎているように感じてしまう。
カウンセリングの分野は、発祥から様々な変化をして今日の相談者自身が
自分自身の問題を自分で解決できるように援助する姿勢を重視するようになってきている。