ホメオストレッチの科学的実証研究において、
睡眠時よりも代謝活動が低下している状態(覚醒における低代謝・生理学的リラクセーション)、
脳活動の活性化、あるいは、催眠時リラクセーションの脳内表像の出現について関連検証をみていく。
ホメオストレッチはα波の振幅増加によって示される
中枢神経に対する生理的リラクセーション効果を持ち、
皮膚電気伝導水準の低下によって示される交感神経に対する
生理学的リラクセーション効果が示された。
また、心拍変動解析による自律神経系の解析結果は、
副交感神経が活性化され、交感神経が抑制されるリラクセーション状態を示し、
さらに、LF/HF 比が2を超えている交感神経系過緊張状態にある方の解析では
ほとんどの人で改善が認められ、統計学的に有意な変化が確認されている。
脳神経細胞異常を脳表面に表示、定常的なニューロン機能低下部位と
その内容を脳表面に可視化する方法で、発達障害児の前頭前野の機能が
著しく低下しているケースを安静時とホメオストレッチ実施後とで比較した結果、
安静時では改善されないが、同一時間ホメオストレッチをすることで
前頭前野の機能(高次脳機能)大きく改善され、ほとんど正常状態まで改善している。
さらに、PETによる脳内の動態を検証した結果、
終脳(脳幹)、扁桃体系に影響を及ぼし、脳の副交感神経性緊張を高め、
前脳、扁桃体および楔前部の回路網のニューロン活動を調節することによって
生理学的なリラクセーションをもたらすという効果に関する科学的エビデンスが得られた。
また、初期に脳幹、特に中脳を刺激し注意中枢と言われる前帯状回が刺激され、
心拍が低下(副交感神経機能が上昇)するにつれ情動神経回路に関わる
側座核と前頭葉眼窩皮質の神経活動が高まることが確認されている。
下側頭皮質と外側後頭皮質、紡錘回の神経活動が上昇したことは、
催眠時リラクセーションの脳内表像の出現を意味している。
さらに新規スレス指標であるCgAを低下させる傾向を有することも明らかにしている。
特に精神的ストレスを自覚している被験者の場合に、その傾向が顕著であることが確認されている。
これらの科学データは人にどのような効果を及ぼすか、ホメオストレッチの心理学的な実証研究をみてみよう。
1. 疲労感の減少と爽快感の増大
2. 外向性傾向の低下、社会適応性の上昇及び妥協性の上昇
3. フラストレーション耐性の改善
4. うつ・不安、不機嫌・怒りの改善
5. 「爽快感のなさ」「抑うつ感」「疲労感」「不安感」に有意な効果が得られ、
労働者のメンタルヘルスに有益に作用する
6. 被災現場での疲労感、不安感は多くの人々で軽減が認められた
7. 長時間残業者のケアに有効性を実証
※ α波の振幅増加:α波の中でもミッドα波(9~12Hz)の状態が一番重要、脳波がミッドα波の状態の時、β-エンドルフィンが分泌され、ストレス耐性の強化、免疫の向上、脳の活性化が起きる。
※ 生理的リラクセーション:体の中の生理学的変化。
※ 皮膚電気伝導水準:交感神経の興奮が高まると立毛筋が収縮し、皮脂の分泌が促進され、電流の流れがよくなる。
※ PET:「ポジトロン・エミッション ・トモグラフィー」の略、陽電子放射断層撮影という言葉の頭文字をとった略語。
※ 副交感神経:栄養の吸収や脳神神経系の休息。アセチルコリン(神経伝達物質)が作用。
※ 眼窩前頭皮質:他人のこころ(感情)の理解、社会性、モラルなどに深く関係。この部位の機能が低下すると、共感する力が損なわれる。多くの精神疾患、あるいは人格障害、発達障害は、前頭前野や帯状回、眼窩前頭野などの機能障害に原因があるが、この眼窩前頭野の障害では、辺縁系の活動の調整、統合に支障が生じる。抑制力の低下が起き、衝動をおさえられないといった強迫性。
※ 心拍変動解析:心臓の鼓動の時間間隔である心拍間隔
※ 統計学:データから応用数学の手法を用いて数値上の性質や規則性を見いだす手法。
※ 脳神経細胞異常を脳表面に表示:脳活動画像表示技術(NAT)
※ ニューロン:脳の複雑な働きは、情報の伝達と処理を担う細胞=神経細胞(ニューロン)の働きによって行われている。
※ 高次脳機能:知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情(情動)を含めた精神(心理)機能を総称する。
※ 前脳:前脳・中脳・後脳という脳幹を中心にした発生学的名称
※ 楔前部:楔前部(けつぜんぶ)の大きさと幸福感には相関性があるという研究報告によると、幸福感が大きい人ほど楔前部も大きい。
※ 中脳:視覚・聴覚・体の平衡・姿勢反射に関する中枢。歩行や姿勢の制御
脳幹:免疫系・内分泌系・自律神経系・脊髄筋骨格系という系統全てに関与する機能
※ 下側頭皮質・大脳腹側の高次領野は色を知覚する上で極めて重要な役割を果たしていると考えられている。
※ 外側後頭皮質:オブジェクト認知(認知システムのきわめて根本的で中心的な働き)に重要な働きを果たすと考えられている。
※ CgA)(クロモグラニンA)は、主に副腎髄質クロム親和性細胞をはじめとする神経内分泌細胞に存在し、カテコールアミンの貯蔵や分泌に関与する可溶性蛋白質。ヒト唾液中に、CgAに特異的な配列を持ったペプチドに対する抗体と反応する蛋白が存在することが確認されている。唾液CgAが精神的ストレスに対して高感度かつ特異性が高い指標であることが確認されている。精神的ストレスについてはコルチゾールよりも感度が高い。